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マリコのお願い
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それから解散し、各々帰路についていた。
今日は晴天だったので夕日が綺麗。
マリと一緒の下校中も話題はDTM部と軽音部の合併のことだった。
マリは少し唇を尖らせているようにも見える。
「いいと思うけどなぁ、合併。ユカ的には機材と部室が守れればいいんでしょ? DTM部の名前にも拘りないでしょ?」
「それはそうだけど」
マリは本当に私のことをよく分かってる。全くその通り。
機材と部室がこれまで通り使えるのであれば、他のことはどうでもいい。
「ならいいじゃん。しちゃおうぜ、合併!」
親指を立ててテヘペロと聞こえそうな表情をされた。
気になることがあったので聞いてみる。
「あのさ」
「なに?」
「なんで『バンドやりたい』なんて言ったの? バンドに興味あるなんて聞いたこと無いけど」
小学校一年生からの付き合いでマリがそんな話題を出したことは多分一度も無い。
可愛いし明るい性格で頼まれたら張り切るタイプではある気がするけど、自分から進んで前に出るタイプではない。
人前で私の曲を他人に聞かせるように言われたのも初めてだった。
これまでは私に気を使ってくれて「皆に聞いてもらおう!」と言うときは必ず二人きりの時だった。
「だってユカの曲を歌うんでしょ?」
「いや軽音部に曲作るって言ってないけど」
嬉しそうに返されたが、そうは言ってないのですかさず訂正した。
「私はね、ユカの曲の再生数が伸びないのが気に入らないの」
「聞いてる? っていうかそれは曲が良くないからだって」
予想外の話が出てきたが、この主張を変えるつもりはなかった。
「いーや違うね。そんなの納得しない。絶対ネットがおかしい。だから私が歌って皆に知ってもらう。『こんなにいい曲見逃すなんて、お前らの目は節穴だバーカ』って言ってやる。いや言わないけどそういう想いでやる」
まくし立てるマリに少し不安になってまた念を押す。今度はハッキリと。
「約束したよね。ネットに投稿してることは内緒にするって。純粋に曲だけを評価されたいって言ったよね」
「分かってるって。これからも内緒にする。でも違う方法試そうよ。いい曲が評価されないなんておかしいって」
「だからお友達補正だってソレ。そういうのが嫌なの」
お互い感情的になっている訳では無い。お互いが本心であることは分かってる。
これに近いやり取りは何回かしているし、マリは困ったような笑顔で、私は平静のまま言い合った。
ただ前からしている「お友達補正」という主張は変えるつもりはなかった。
マリは私に甘いし、伸びないネットの再生数が客観的な評価として正しいと思うから。
もしかしたらマリは私がヘコんでいることを分かっていたのかもしれない。
それなら今日マリから感じた違和感が納得できる。
私の曲の再生数が伸びないこと、私がヘコんでいることを何とかするキッカケにしようとしていたんだ。
そんなことを考えていると、マリが話を続けた。
「初対面の立花ちゃんも西川ちゃんも『いい曲だー!』って言ってたじゃん」
「曲作ってもらうお願いしに来て『ダメだこりゃ』とは言えないでしょ」
「ひねくれ過ぎだって。二人とも本心で言ってたよ」
分かってる。自分の曲に自信が無いから少し卑屈になっている。
「今日初めて他の人の評価を聞けて嬉しかった。私の大好きな曲はやっぱりいい曲だったんだ」
マリはそう言いながら前に出て振り返り、私の正面に立った。
夕日が逆光になり少し顔は見えづらかったけど、しっかりと焼き付いていた。
いつもの優しい笑顔ではない、今まで見たことの無い真剣な顔。吸い込まれそうな目だった。
その目で私の目をまっすぐ見て言葉を続けた。
「だからお願い。ユカの曲を歌わせて」
ハッキリと分かった。
十年近い付き合いで、いや、今までの人生の中でされた、一番切実なお願い。
今日は晴天だったので夕日が綺麗。
マリと一緒の下校中も話題はDTM部と軽音部の合併のことだった。
マリは少し唇を尖らせているようにも見える。
「いいと思うけどなぁ、合併。ユカ的には機材と部室が守れればいいんでしょ? DTM部の名前にも拘りないでしょ?」
「それはそうだけど」
マリは本当に私のことをよく分かってる。全くその通り。
機材と部室がこれまで通り使えるのであれば、他のことはどうでもいい。
「ならいいじゃん。しちゃおうぜ、合併!」
親指を立ててテヘペロと聞こえそうな表情をされた。
気になることがあったので聞いてみる。
「あのさ」
「なに?」
「なんで『バンドやりたい』なんて言ったの? バンドに興味あるなんて聞いたこと無いけど」
小学校一年生からの付き合いでマリがそんな話題を出したことは多分一度も無い。
可愛いし明るい性格で頼まれたら張り切るタイプではある気がするけど、自分から進んで前に出るタイプではない。
人前で私の曲を他人に聞かせるように言われたのも初めてだった。
これまでは私に気を使ってくれて「皆に聞いてもらおう!」と言うときは必ず二人きりの時だった。
「だってユカの曲を歌うんでしょ?」
「いや軽音部に曲作るって言ってないけど」
嬉しそうに返されたが、そうは言ってないのですかさず訂正した。
「私はね、ユカの曲の再生数が伸びないのが気に入らないの」
「聞いてる? っていうかそれは曲が良くないからだって」
予想外の話が出てきたが、この主張を変えるつもりはなかった。
「いーや違うね。そんなの納得しない。絶対ネットがおかしい。だから私が歌って皆に知ってもらう。『こんなにいい曲見逃すなんて、お前らの目は節穴だバーカ』って言ってやる。いや言わないけどそういう想いでやる」
まくし立てるマリに少し不安になってまた念を押す。今度はハッキリと。
「約束したよね。ネットに投稿してることは内緒にするって。純粋に曲だけを評価されたいって言ったよね」
「分かってるって。これからも内緒にする。でも違う方法試そうよ。いい曲が評価されないなんておかしいって」
「だからお友達補正だってソレ。そういうのが嫌なの」
お互い感情的になっている訳では無い。お互いが本心であることは分かってる。
これに近いやり取りは何回かしているし、マリは困ったような笑顔で、私は平静のまま言い合った。
ただ前からしている「お友達補正」という主張は変えるつもりはなかった。
マリは私に甘いし、伸びないネットの再生数が客観的な評価として正しいと思うから。
もしかしたらマリは私がヘコんでいることを分かっていたのかもしれない。
それなら今日マリから感じた違和感が納得できる。
私の曲の再生数が伸びないこと、私がヘコんでいることを何とかするキッカケにしようとしていたんだ。
そんなことを考えていると、マリが話を続けた。
「初対面の立花ちゃんも西川ちゃんも『いい曲だー!』って言ってたじゃん」
「曲作ってもらうお願いしに来て『ダメだこりゃ』とは言えないでしょ」
「ひねくれ過ぎだって。二人とも本心で言ってたよ」
分かってる。自分の曲に自信が無いから少し卑屈になっている。
「今日初めて他の人の評価を聞けて嬉しかった。私の大好きな曲はやっぱりいい曲だったんだ」
マリはそう言いながら前に出て振り返り、私の正面に立った。
夕日が逆光になり少し顔は見えづらかったけど、しっかりと焼き付いていた。
いつもの優しい笑顔ではない、今まで見たことの無い真剣な顔。吸い込まれそうな目だった。
その目で私の目をまっすぐ見て言葉を続けた。
「だからお願い。ユカの曲を歌わせて」
ハッキリと分かった。
十年近い付き合いで、いや、今までの人生の中でされた、一番切実なお願い。
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