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サナエの仮入部
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軽音部部室に戻ると佐伯さんもついてきた。「他の部員もいんだろ? 見たい!」とのことだ。
部室に入るとマリと西川がコタツから、おかえり、と言って視線を向けてくる。
そして佐伯さんを見て「どちら様?」という雰囲気を出すと、佐伯さんが一歩前に出た。
「仮入部の被服部員、佐伯佐奈栄だ! よろしくな!」
「わーい! よろしくお願いしまーす!」
大歓迎のマリ。流石のコミュ力。いや、あっさり受け入れすぎではないか。
一方西川は警戒しているようだった。私やマリには向けたことのない視線を佐伯さんに向けている。
そんな西川に佐伯さんはずかずかと近づき、西川の頭を撫でようと右手を出しながら言った。
「お前も可愛いなぁ! 小さいし! 私の着せ替え人形にならないか?」
「なに言ってるんですか、触らないで下さい。もしかしてこの人がドラムの人ですか?」
西川は撫でようとする佐伯さんの右手を両手で掴んで阻止し、完全に敵視防衛モードに入って私達に説明を求めた。
「はいはい、佐伯さん、嫌がってるんで離れて下さい」
佐伯さんの制服の首のあたりをつまんで西川から引き剥がした。
西川の両手と佐伯さんの右手の勝負はひとまず引き分けに終わったが、西川は力が無いのかゼーゼー言っていた。
一方佐伯さんは悪びれる様子もなく上機嫌で余裕だった。
引き剥がすと佐伯さんはコタツのお誕生日席にドッカリと座った。立花と私も座る。
一年は昨日と変わらず長い辺の下座、二年も変わらず長い辺の上座。
全員座ると立花が経緯を二人に話した。
話し終えるとマリがワクワクした様子で佐伯さんをキッと睨んだ。敵意というよりも仲の良いライバルに向けたような目で。
「つまり佐伯さんを倒せばドラマーと衣装が手に入るんですね!?」
「そうだ!」
お互い楽しそうだ。
「いいね! 燃えて来た! 頑張るぞー! おぉー!!」
マリは拳を突き挙げた。
反応して立花と佐伯さんも拳を突き挙げた。
「「おぉー!!」」
ツッコミどころ満載だが、一つだけ。
その輪の中に佐伯さんが入るのはおかしい。アナタは倒される側だ。
西川はその様子を冷ややかに見ていた。完全に歓迎していない感じが伝わってきて、申し訳ないが面白い。
一段落ついた後。立花が話を進める。
「じゃあ中村さんと西川さんも自己紹介してもらえます?」
「はーい! ボーカルの中村真梨子でーす! よろしくお願いします!」
「……ベースの西川です」
「おう! よろしくな!」
西川の怪訝な表情を全く気にせず佐伯さんはニコニコしていた。私に視線を向けて続ける。
「ユカリは? ギター?」
「作曲担当です。バンドには参加しません」
「マジかよ! じゃあ私が衣装作ることになったとしても、お前の採寸は出来ないってこと?」
佐伯さん少し慌てていた。
「まぁ私の衣装は必要無いのでそうなりますね」
「ちくしょー!! じゃあ採寸の代わりに自由に着せ替え出来る権利をくれ」
某芸人さんのように悔しがったあと意味不明な要求をされた。
かなり気持ち悪かったので眉をひそめてしまう。
「代わりになってません。嫌です」
「あぁ……いい……軽音部に来てよかった……」
私の嫌そうな表情と言葉がお気に召したようだ。
「「「えぇ……」」」
皆引いていた。この人はマジもんの変態だ。仮入部でもまずかったんじゃないの……
気を取り直すように一つ小さな咳ばらいをした立花が話を進める。
「佐伯さん、さっき『軽音部のドラム』って言ってましたよね? 軽音部の楽器ってどこかにあるんですか?」
「あるよ。軽音部とジャズ研の楽器が楽器室に保管されてる」
「もしかしてドラム以外もあります!?」
立花はまた身を乗り出して佐伯さんに迫った。
「あるな。ギターとベースと、あとなんかあったはず」
「やった!! じゃあ早速皆で行きましょう!!」
ガッツポーズを決めながら立ち上がった立花は興奮気味で既に上履きに足を入れていた。
そして扉に向かおうとするのを止める。
「いやちょっと待った、もう下校時刻だよ」
「あ」
口を半開きにしたまま時計を見る。時間を忘れていたのだろう。
丁度下校時刻を告げるチャイムが鳴った。
チャイムが鳴り終わるのを待ってから、立花は満面の笑顔で言った。
「じゃあ今日は解散にしましょう。明日は一番に楽器室に行きましょう!」
解散になったので全員部室から出る。部室の扉の鍵を閉めると、西川が立花に視線を向けた。
「チラシ配り手伝います」
立花が朝一人で配っているチラシ配りのことを気にしていたみたい。
積極的ではない印象を受けていたから意外。
よく考えたら軽音部に入部する子が消極的な訳ないよね。
でもあまり喋らないし無言でチラシを配りそう。
「本当!? ありがとう!」
「私もー」
「わー! ありがとうございます!」
西川にマリも乗った。それぞれにお礼をする立花。
うわやりたくないー。けど、皆がやるのに私もやらないのは罪悪感があるので……
「私も……」
「無理しなくてもいいですよ!」
しまった。立花に気を使わせてしまった。やりたくないことが表情に出てしまった。
校門前での勧誘は三日間だったはず。つまり明日で最後。最後くらい力になろう。
「いや、やる」
「私はめんどくせーから、あっ! 仮入部だからやらね!」
サナエさんは前半に清々しいほどの本音を交えてニカっと笑った。
この流れでコレを言えるのは凄い。
「はい! 大丈夫ですよ! もともと一人でやるつもりだったので!」
立花は全く咎めるつもりはなかった。もちろん私も。
入部するか分からないのにチラシ配りをさせるのはなにか違う気がするし。
ただ西川は怒りのオーラを放っていらっしゃった。
「規律を乱すとは、万死に値する」とオーラで言っていた。
そして今日の活動は終わり、それぞれ帰路についた。
部室に入るとマリと西川がコタツから、おかえり、と言って視線を向けてくる。
そして佐伯さんを見て「どちら様?」という雰囲気を出すと、佐伯さんが一歩前に出た。
「仮入部の被服部員、佐伯佐奈栄だ! よろしくな!」
「わーい! よろしくお願いしまーす!」
大歓迎のマリ。流石のコミュ力。いや、あっさり受け入れすぎではないか。
一方西川は警戒しているようだった。私やマリには向けたことのない視線を佐伯さんに向けている。
そんな西川に佐伯さんはずかずかと近づき、西川の頭を撫でようと右手を出しながら言った。
「お前も可愛いなぁ! 小さいし! 私の着せ替え人形にならないか?」
「なに言ってるんですか、触らないで下さい。もしかしてこの人がドラムの人ですか?」
西川は撫でようとする佐伯さんの右手を両手で掴んで阻止し、完全に敵視防衛モードに入って私達に説明を求めた。
「はいはい、佐伯さん、嫌がってるんで離れて下さい」
佐伯さんの制服の首のあたりをつまんで西川から引き剥がした。
西川の両手と佐伯さんの右手の勝負はひとまず引き分けに終わったが、西川は力が無いのかゼーゼー言っていた。
一方佐伯さんは悪びれる様子もなく上機嫌で余裕だった。
引き剥がすと佐伯さんはコタツのお誕生日席にドッカリと座った。立花と私も座る。
一年は昨日と変わらず長い辺の下座、二年も変わらず長い辺の上座。
全員座ると立花が経緯を二人に話した。
話し終えるとマリがワクワクした様子で佐伯さんをキッと睨んだ。敵意というよりも仲の良いライバルに向けたような目で。
「つまり佐伯さんを倒せばドラマーと衣装が手に入るんですね!?」
「そうだ!」
お互い楽しそうだ。
「いいね! 燃えて来た! 頑張るぞー! おぉー!!」
マリは拳を突き挙げた。
反応して立花と佐伯さんも拳を突き挙げた。
「「おぉー!!」」
ツッコミどころ満載だが、一つだけ。
その輪の中に佐伯さんが入るのはおかしい。アナタは倒される側だ。
西川はその様子を冷ややかに見ていた。完全に歓迎していない感じが伝わってきて、申し訳ないが面白い。
一段落ついた後。立花が話を進める。
「じゃあ中村さんと西川さんも自己紹介してもらえます?」
「はーい! ボーカルの中村真梨子でーす! よろしくお願いします!」
「……ベースの西川です」
「おう! よろしくな!」
西川の怪訝な表情を全く気にせず佐伯さんはニコニコしていた。私に視線を向けて続ける。
「ユカリは? ギター?」
「作曲担当です。バンドには参加しません」
「マジかよ! じゃあ私が衣装作ることになったとしても、お前の採寸は出来ないってこと?」
佐伯さん少し慌てていた。
「まぁ私の衣装は必要無いのでそうなりますね」
「ちくしょー!! じゃあ採寸の代わりに自由に着せ替え出来る権利をくれ」
某芸人さんのように悔しがったあと意味不明な要求をされた。
かなり気持ち悪かったので眉をひそめてしまう。
「代わりになってません。嫌です」
「あぁ……いい……軽音部に来てよかった……」
私の嫌そうな表情と言葉がお気に召したようだ。
「「「えぇ……」」」
皆引いていた。この人はマジもんの変態だ。仮入部でもまずかったんじゃないの……
気を取り直すように一つ小さな咳ばらいをした立花が話を進める。
「佐伯さん、さっき『軽音部のドラム』って言ってましたよね? 軽音部の楽器ってどこかにあるんですか?」
「あるよ。軽音部とジャズ研の楽器が楽器室に保管されてる」
「もしかしてドラム以外もあります!?」
立花はまた身を乗り出して佐伯さんに迫った。
「あるな。ギターとベースと、あとなんかあったはず」
「やった!! じゃあ早速皆で行きましょう!!」
ガッツポーズを決めながら立ち上がった立花は興奮気味で既に上履きに足を入れていた。
そして扉に向かおうとするのを止める。
「いやちょっと待った、もう下校時刻だよ」
「あ」
口を半開きにしたまま時計を見る。時間を忘れていたのだろう。
丁度下校時刻を告げるチャイムが鳴った。
チャイムが鳴り終わるのを待ってから、立花は満面の笑顔で言った。
「じゃあ今日は解散にしましょう。明日は一番に楽器室に行きましょう!」
解散になったので全員部室から出る。部室の扉の鍵を閉めると、西川が立花に視線を向けた。
「チラシ配り手伝います」
立花が朝一人で配っているチラシ配りのことを気にしていたみたい。
積極的ではない印象を受けていたから意外。
よく考えたら軽音部に入部する子が消極的な訳ないよね。
でもあまり喋らないし無言でチラシを配りそう。
「本当!? ありがとう!」
「私もー」
「わー! ありがとうございます!」
西川にマリも乗った。それぞれにお礼をする立花。
うわやりたくないー。けど、皆がやるのに私もやらないのは罪悪感があるので……
「私も……」
「無理しなくてもいいですよ!」
しまった。立花に気を使わせてしまった。やりたくないことが表情に出てしまった。
校門前での勧誘は三日間だったはず。つまり明日で最後。最後くらい力になろう。
「いや、やる」
「私はめんどくせーから、あっ! 仮入部だからやらね!」
サナエさんは前半に清々しいほどの本音を交えてニカっと笑った。
この流れでコレを言えるのは凄い。
「はい! 大丈夫ですよ! もともと一人でやるつもりだったので!」
立花は全く咎めるつもりはなかった。もちろん私も。
入部するか分からないのにチラシ配りをさせるのはなにか違う気がするし。
ただ西川は怒りのオーラを放っていらっしゃった。
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