ガルテナ ~私の一番の音楽~

茂庭

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チラシ配り

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 翌日、チラシ配りの為に朝七時半下駄箱集合になっていた。
昨日の帰り際に立花に言われたのだ。

 マリと二人で登校すると、下駄箱には既に立花と西川が待っていた。
おはよう、と声を掛け合ったあと、立花に興奮気味に言われた。

「成瀬さん! 昨日は曲ありがとうございました! すっごく良かったです!!」

 西川も強く頷きながら視線を向けてくる。
面と向かって言われると物凄く恥ずかしい。私の歌の話になる前に速やかに話題を逸らさねば。

「昨日も言われたし、お礼はもういいよ。それよりスコア出来たよ」
「マジですか!?」

 目を見開いて喜ばれた。
昨日調べながらやってみるとアッサリできたので四人分印刷してきた。

「うん、後で渡すね」
「はい! ありがとうございます!!」

 こんなにキラキラの笑顔でお礼を言われることはそうそうないので居心地が悪くなってしまう。
また話題を逸らそうと立花が持っているチラシに視線を落とす。

「それでチラシはそれ?」
「はい! 皆さんお願いします!」

 もうあまり多くは無いので安心した。
 四人で四等分になるくらいで分け合った。
思ったより薄くて軽い。これならすぐに終われそう。

「眠そうですね」

 西川が唐突に言った。
一瞬私に言われたのかと思ったが、視線は立花に向いていた。
立花が苦笑いを浮かべながら返事をする。

「あ、分かる?」

 全く分からなかった。西川は案外鋭いのかもしれない。
立花は言葉を続ける。

「昨日曲貰ったら興奮しちゃってさ、ギター弾いてたら止まらなくなっちゃって、もうなんか夢の中でも弾いてたよ」
「分かる気がする。寝てんのか起きてんのか分かんないけど考えてるやつでしょ」

 作曲でも覚えのある感覚。いいメロディが浮かぶと夢の境目のような意識で考えている時がある。
マリが眉尻を下げて心配そうにした。

「えぇ~、なにそれ君達大丈夫? 夜はちゃんと寝なきゃだめだよ」
「いやたまにだよ。毎日だったらヤベー奴じゃん」
「いやヤベー奴じゃん」

 心配の中にボケモードが混じった。

「マリには言われたくないよ」
「なんだと! お前明日上履きに気を付けるんだな!」
「姑息すぎる」

 などと下らない会話をしていると登校している生徒が増えてきた。
既に他のいくつかの部活は勧誘をしていた。

「では頑張りましょう!」

 立花が睡眠不足を感じさせないやる気に満ち溢れた顔でチラシ配り開始を宣言した。




 マリと立花はにこやかに元気よくチラシを配っていた。
今更立花の凄さが分かった。チラシ配りは思ったより恥ずかしいし難しい……
私は小声で「お願いしまーす」っと苦笑いで差し出すのが精一杯でなかなか受けとってもらえない。
西川も無言無表情で配っているせいか、なかなか受け取ってもらえないようだ。

 途中友達が何人か受け取ってくれた。
「軽音部?」「そんなキャラだったけ?」「頑張ってねー」など、激励もあれば誤解もあった。
あんまり話し込むのもなんなので、「違う! 私は作曲担当だから!」と心の中で思いながら苦笑いを振りまいておいた。後で弁明しよう。
マリも何度か友達に絡まれていたが、あちらは終始にこやかで楽しそうだった。

 マリと立花は配り終えたようで、私と西川からまた分けて全て配り終えた。
配り終えたことは嬉しいけど、配り方でハッキリ差が出るんだなぁ。と感心半分、情けないのが半分だった。
四人で配れば四倍の効率。と単純には行かないと思うけど、二倍も疑わしい気がした。

 それでも立花は嬉しさ百パーセントの様子だった。

「ありがとうございました! 一人で配るよりずっと早かったです!」

 西川は首を横に振った。「いえいえ」という意味だろう。
マリはにこやかにキッチリ口に出していた。

「いえいえ~。配り終わって良かったね」
「はい!」

 立花が元気に返事をしてチラシ配りは終わった。
恥ずかしかったけど、問題無くて良かった。
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