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部室へ
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それからあっという間に二週間が経った。
私は帰宅部さながら即帰宅するようになっていた。
マリとは毎朝一緒に通学しているので軽音部の様子もよく聞いている。
立花が鬼軍曹のようになったーとか、
西川がメトロノームにカチ丸と名前を付けて愛でてるーとか、
佐伯さんがドラム叩きながら寝てるーとか、
本当かどうか疑わしい情報も共有されたけど、とにかく楽しく活動が出来ていることは分かって微笑ましかった。
そんな話を聞いているからではないけど、私の心境は少しづつ変わっていた。
バンドに参加したい。
そんな気持ちが膨らんでいた。
パソコンを持ち帰る際に佐伯さんに誘われたことで気持ちが植えられてしまい、
部室でマリが歌ったときのことを思い出す度にその気持ちが膨らみ、芽を出していた。
部室が私の曲で満ちる感覚。あの感覚は二週間たった今もハッキリと残っていた。
その気持ちは作曲にも影響していた。
最初はウキウキで作曲していたけど、どうにも皆の顔がチラつく。
気が付くと軽音部に合いそうなフレーズばかりを掴んでしまう。その軽音部に私のピアノも含んでいた。
でも何度も誘ってくれたのに今更「私も―」なんてばつが悪くて言い出せなかった。
いや、皆絶対そんなこと気にせず歓迎してくれることは分かっているんだけども。
またつまらない感情で停滞してしまっていることを誤魔化すように、ピアノの練習時間は伸びていった。
そして現在、五時間目の数学の授業中。
少し温かくなってきたし、食後ということもあって目蓋の重みと格闘しているとスマホが震えた。
マリからのメッセージ。
『今日部室来てくれない?』
『どしたの?』
『DTM部のパソコンってまだあったよね?』
『うん、ノーパソが引き出しに三台あるよ』
去年までDTM部は五人だった。
デスクトップPCには一番いいDAWや音源を詰め込んであるので、使う順番を決めていた。
順番でない部員はしょぼいノートパソコンに無料のDAWを入れて使っていたのだ。
一つの部にそこまで部費があるのかは謎だったが、そこに切り込むと部長の怪しい笑みを見る羽目になるので深く追求しなかった。
『パスワードかかってなかったっけ』
『かかってる。全部1066。トロロって覚えて。つか知ってるよね?』
『忘れちゃった。久々に立ち上げるし来てくれない?』
『いいけど』
『ありがと。じゃ放課後』
マリも何回かノートパソコンを使っていたはずだけど、忘れるようなことだろうか。
まぁいい、部室に行く口実は出来た。それとなく言ってみよう。シュミレーションする。
私も参加したい。
目蓋は軽くなったけど、授業は分からなくなった。
放課後、ホームルームが終わるとマリが教室の入り口の辺りからヒラヒラ手を振っている。
同じ階の端から端の別のクラスなのに迎えに来た。
「ユカ―、行こー」
「うん」
いつも部室にはバラバラに行くけど、たまにこうして迎えに来る。
カバンを持って教室を出た。
階段に近づくとマリが言った。
「ちょっと購買寄っていい?」
「うん」
購買は一階。部室は四階。今は二階なので遠回りになるけど、別に急いでいないので構わない。
購買にはあまり行ったことが無いので少しワクワクした。
購買に着くと二人で見て回った。
と言っても回る程広くはない。品揃えも思ったよりしょぼくてちょっと残念。
マリはピンクの消しゴムを一つ持ち上げた。
「ねぇねぇ見てこれ。桃の香りだって」
唯一ともいえるネタグッズを見つけて笑顔になったマリはそう言って私の顔に消しゴムを近づけてくる。
匂いを嗅いでみた。
「全然しないけど」
「ホントだ。詐欺じゃん」
マリも嗅いでみて苦笑しながら消しゴムを元の場所に返した。そんな風にマリは楽しそうだった。
狭い購買をのんびりと見た後、シャーペンの芯を一つ買って、部室に向かった。
私は帰宅部さながら即帰宅するようになっていた。
マリとは毎朝一緒に通学しているので軽音部の様子もよく聞いている。
立花が鬼軍曹のようになったーとか、
西川がメトロノームにカチ丸と名前を付けて愛でてるーとか、
佐伯さんがドラム叩きながら寝てるーとか、
本当かどうか疑わしい情報も共有されたけど、とにかく楽しく活動が出来ていることは分かって微笑ましかった。
そんな話を聞いているからではないけど、私の心境は少しづつ変わっていた。
バンドに参加したい。
そんな気持ちが膨らんでいた。
パソコンを持ち帰る際に佐伯さんに誘われたことで気持ちが植えられてしまい、
部室でマリが歌ったときのことを思い出す度にその気持ちが膨らみ、芽を出していた。
部室が私の曲で満ちる感覚。あの感覚は二週間たった今もハッキリと残っていた。
その気持ちは作曲にも影響していた。
最初はウキウキで作曲していたけど、どうにも皆の顔がチラつく。
気が付くと軽音部に合いそうなフレーズばかりを掴んでしまう。その軽音部に私のピアノも含んでいた。
でも何度も誘ってくれたのに今更「私も―」なんてばつが悪くて言い出せなかった。
いや、皆絶対そんなこと気にせず歓迎してくれることは分かっているんだけども。
またつまらない感情で停滞してしまっていることを誤魔化すように、ピアノの練習時間は伸びていった。
そして現在、五時間目の数学の授業中。
少し温かくなってきたし、食後ということもあって目蓋の重みと格闘しているとスマホが震えた。
マリからのメッセージ。
『今日部室来てくれない?』
『どしたの?』
『DTM部のパソコンってまだあったよね?』
『うん、ノーパソが引き出しに三台あるよ』
去年までDTM部は五人だった。
デスクトップPCには一番いいDAWや音源を詰め込んであるので、使う順番を決めていた。
順番でない部員はしょぼいノートパソコンに無料のDAWを入れて使っていたのだ。
一つの部にそこまで部費があるのかは謎だったが、そこに切り込むと部長の怪しい笑みを見る羽目になるので深く追求しなかった。
『パスワードかかってなかったっけ』
『かかってる。全部1066。トロロって覚えて。つか知ってるよね?』
『忘れちゃった。久々に立ち上げるし来てくれない?』
『いいけど』
『ありがと。じゃ放課後』
マリも何回かノートパソコンを使っていたはずだけど、忘れるようなことだろうか。
まぁいい、部室に行く口実は出来た。それとなく言ってみよう。シュミレーションする。
私も参加したい。
目蓋は軽くなったけど、授業は分からなくなった。
放課後、ホームルームが終わるとマリが教室の入り口の辺りからヒラヒラ手を振っている。
同じ階の端から端の別のクラスなのに迎えに来た。
「ユカ―、行こー」
「うん」
いつも部室にはバラバラに行くけど、たまにこうして迎えに来る。
カバンを持って教室を出た。
階段に近づくとマリが言った。
「ちょっと購買寄っていい?」
「うん」
購買は一階。部室は四階。今は二階なので遠回りになるけど、別に急いでいないので構わない。
購買にはあまり行ったことが無いので少しワクワクした。
購買に着くと二人で見て回った。
と言っても回る程広くはない。品揃えも思ったよりしょぼくてちょっと残念。
マリはピンクの消しゴムを一つ持ち上げた。
「ねぇねぇ見てこれ。桃の香りだって」
唯一ともいえるネタグッズを見つけて笑顔になったマリはそう言って私の顔に消しゴムを近づけてくる。
匂いを嗅いでみた。
「全然しないけど」
「ホントだ。詐欺じゃん」
マリも嗅いでみて苦笑しながら消しゴムを元の場所に返した。そんな風にマリは楽しそうだった。
狭い購買をのんびりと見た後、シャーペンの芯を一つ買って、部室に向かった。
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