ガルテナ ~私の一番の音楽~

茂庭

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参加とこれからの予定

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 楽器室からキーボードとアンプをマリと二人で部室に持ち込む。
二つともなかなか大きいので往復した。
二往復目、ドラムが響く部室に入ると持ち込み終わったのを察してかドラムを止めて出迎えてくれた。

 皆キーボードがどんな物か気になるようで、キーボードを囲んで輪になる。
ケースを開けて黒いキーボードを取り出す。
楽器室で中身がキーボードであることを確認するために少しだけ開けて確認したけど、意外と綺麗でほっとした。
ギターが結構使い込まれているような感じの物ばかりだったので、ボロボロなことも覚悟していた。
そして訳の分からないボタンが沢山ついている。
 マリは興奮気味に言った。

「わー! なにこのボタン! カッコいいね!」
「分かる」

 ボタンはカッコいい。多分そんなに使わないだろうけど。
キーボード本体に書かれているメーカー名は聞いたことのある有名なメーカーなので、後で機種名で調べよう。

 スタンドの組み立ても配線もシンプルで分かりやすく、すぐにセッティングは出来た。
電源を入れる前に軽く弾いてみる。
ピアノより鍵盤が少ないし軽いしペダルは無いし立って弾くことに違和感がある。
まぁいいやと、キーボードとアンプの電源を入れ、音を出してみる。
デフォルトはピアノの音だった。ありがたい。
適当に弾いてみる。機材は特に問題無さそう。

 次は皆が練習している私の曲の間奏のピアノソロを弾いてみる。
やっぱり違和感はあるけど指は案外動かせた。

 ふと西川の目が輝いていることに気付いた。
初めて立花のギターを聞いた時もこんな表情をしていた。
今更恥ずかしくなった。視線を鍵盤に落とす。キーボードに夢中で人目を忘れていた。
 佐伯さんが挑発するようにニヤリとした。

「よし、じゃあユカリ入れてやってみよーぜ」
「いいですね!!」

 立花が即乗ったので尻込みしてしまう。

「え、いきなり?」
「ユカリの曲なんだから楽勝だろ?」
「だろ?」

 マリまで乗って佐伯さんと同じようにニヤリとした。
西川はいつの間にかベースを掛けて準備万端。「早くやりましょう」と目で言っていた。
 急に緊張して来てしまったけど、言う通り私の曲だし、コソコソ練習しといたし。多分大丈夫。

「じゃ、やってみる」

 皆が配置につくと、佐伯さんがカウントをする。

 鍵盤を叩くといつもより軽い鍵盤に慌ててしまう。
でも前奏が終わる頃には大分動くようになっていた。

 マリが歌い出すと一層一つの音楽になったことを感じる。

 楽しい。気持ちいい。一緒に演奏することの気持ちよさは想像以上だった。
さっき感じた新しい世界。今度はその中から私も一緒に世界を作った。

 それから何度も何度も合わせた。何度でもやりたくなってしまった。
誰かしらが「もう一回!」 と言うのが止まらなくて笑った。

 楽しい時間はあっという間で下校時刻が近づき、今日の練習は終了となった。




 練習が終わると解散するのがいつもの定番らしいけど、今日は佐伯さんが話があるとのことで皆コタツの定位置について軽音部会議をすることになった。
佐伯さんが立花に視線を向ける。

「衣装なんだけどさ、いつまでに出来ればいい?」
「ガルテナの本選は八月一日なので、それまでに」
「分かった。あと三ヵ月くらいあるし出来ると思う」

 九十組近い先輩バンドがひしめく中、本選出場は簡単ではない。
バンドに参加した直後で悪いけど、思ったままを言う。

「本選出られる可能性はかなり低いと思うけど」

 佐伯さんにジロリと睨まれる。

「オイこらヘタレなこと言ってんじゃねーよ」
「そうですよ。本選出ますよ」

 立花の目には自信が漲っていた。

「どっから出てくるの、その自信」

 さっきから水を差してばかりで申し訳ないが、純粋に興味があった。

「まずは信じることなのです」
「そっすか」

 想像以上にふんわりした回答だった。
次はマリが立花に視線を向ける。

「っていうか細かいスケジュール聞いてなかったよね?」
「あれ? そうでしたっけ、すみません。予選登録が六月一日から、結果発表が七月一日、本選が八月一日です。予選は動画投稿が必須で、ネット投票で上位十六組が本選に出場できます。なので五月末に予選用の動画撮影したいと思ってます」

 予選登録が六月一日ならその日に動画投稿した方がネット投票に有利ということだろう。
かなり厳しい気がしたけど、西川も凄く上手くなってるし行ける気がしてきた。

「五月末には衣装間に合わねーけど」
「いいですよ。衣装は嬉しいですけど、元から私服か制服で動画撮るつもりでしたから」
「メンバーってこれで確定なの?」

 またマリが立花に問いかけた。入部希望者が来るかもしれないことを忘れていた。チラシ配ったのに。

「そうですね。もう四月末で時間もありませんし、これで確定にしましょう」

 危なかった。もう少し言うのが遅かったら入れてもらえなかったかも……

「そういえば皆飯どこで食ってんの?」

 佐伯さんが唐突に違う話題を出してずっこけそうになった。自由人だ。
佐伯さんの中では軽音部会議は終わったのだろう。

「私は教室ですけど」
「私もー」

 立花とマリが答える。

「じゃあここで皆で食おうよ。親交深めよーぜ」
「えぇ~……」
「なんで? いいじゃん。親交深めよーぜ」

 マリが佐伯さんの真似をする。教室から部室は近くは無いので移動が面倒臭い。

「鍵持ってるの私じゃん」
「そういえば鍵って他にあります?」
「職員室に予備があるよ」

 立花も知らなかったんだ。そう言えば伝えてなかったな。これで伝えられてよかった。

「つか部長が持つべきもんなんじゃないのソレ。それか最高学年の私か」
「いやぁ……二人ともイマイチ信用できないです」

 立花はうっかりがありそうな印象があるし、佐伯さんはとにかく信用できなかった。

「あぁ……いい……」

 私の嫌そうな言葉と視線がお気に召したようだ。やはり変態だ。全員「うわぁ……」眉をひそめた。
そんなリアクションは気にせず佐伯さんは続けた。

「ユカリが移動すんのメンドイって言うならユカリの教室集合にするか」

 佐伯さんの笑顔から本気を感じたので観念することにした。

「分かりました。来ますよココに」
「よし! これで好感度を稼げるな!」

 意味不明なことを言いガッツポーズをした佐伯さんに立花が問いかける。

「好感度を稼ぐとどうなるんですか?」
「好感度一万で着せ替え人形になる」
「そんな仕組みありません」

 私が言うと西川も強く頷いて佐伯さんに軽蔑の視線を送っていた。
その視線を受け、佐伯さんはご満悦だった。

「まずは信じることなのです」
「真似しないで下さい」

 さっきのを真似をされた立花の頬は引きつっていた。
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