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シオリの独白
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栞は校舎裏に来ていた。
文化祭中でも人気は無い。校舎裏にしては綺麗だけど、やっぱり校舎裏だった。
壁に背を預けて俯き、これまでの自分を振り返っていた。
小学校の卒業アルバム、クラスの面白い人ランキング女子の部で一位だったことは私のささやかな自慢だ。
皆の思う私と、本当の私は違う。私はもっと面白い奴のはず。
皆のお喋りはいつも面白い。
でも「こう言えばもっと面白いのに!」「私ならこう言うのに!」と思うことが沢山ある。
私はただ声に出ないだけ。
喋ることが苦手になったのは中学入学のあたりから。
私が喋ると大きく盛り下がることが何度か続いた。たったそれだけ? と自分でも思うけど、進級、転校、進学と、環境が大きく変わる度、喋れる相手が減っていく度、それが重くのしかかって段々喋れなくなってしまった。
特に致命的だったのは中三の春の転校。なぜこんな大事な時期に? と思ったけど、自分ではどうしようもなかった。転校してからは喋ることが余計に苦手になってしまったので、変わり者と思われていたと思う。いじめられていた訳ではないけど、転校先で友達は一人も出来なかった。
しばらくは「別に必要なことだけ喋ることが出来ればいいじゃないか」と思っていた。でも中三の冬には流石にこのままではいけないと考えるようになった。
変わりたい。そう思って、高校の入学式の翌日に図書室へ行くというささやかな抵抗をした。少しでも違うことをしようと思ったから。
けど読みたい本があったわけでは無いので無駄に時間が潰れただけだった。
バカな自分に呆れながら廊下を歩いていると落ちているプリントを見つけた。
落とし物かもしれないと思って名前を確認しようとしたら、それは軽音部勧誘のチラシだった。
部活に入る気なんて全く無かった。喋ることが苦手な私にはストレスにしかならなそうだから。
ゴミなら捨てなきゃ。
そう思った瞬間、すぐ側の扉が開き、チハルに声をかけられた。
そして私は軽音部に入った。
ささやかな抵抗が生み出した偶然の出会いが、私を変えてくれることを信じて。
軽音部の皆は私を邪魔者扱いもしなければ気を遣ったりもしない。
私が喋らなくても勝手に楽しそうで、それがとても助かった。
喋れば喋ったで会話の一部にしてくれる。
私は皆のお陰で少しずつ喋れるようになっていると思っていた。
でも甘かった。
文化祭、あんなに大勢の前でいきなり話をするんて想像もしていなかった。
あんなの誰だって緊張する。でもあそこまで喋れなくなってしまうのは異常。体が震えるなんて更に異常。
このままではいけない。解決しなければいけない。
こんなことで皆に迷惑をかけてはいけない。
大丈夫、頑張れる。
私なんかより遥かに重い重圧を跳ね除けた友達を、この目で見たじゃないか。
決意して部室に戻った。
部室の扉を開けると、チハルがすぐに駆け寄ってきてくれた。
「シオリ、大丈夫?」
「うん」
チハルの心配そうな顔はホッとした様子に変わった。
部室に入ると、皆はコタツの指定席から迎えてくれる。
「おかえり」
「丁度、文化祭の打ち上げ行こー! って話してたの」
ユカリとマリコはいつも通りの調子だった。
「もちろん行くよな?」
サナエがニヤリとする。これもいつもと変わらない。
とても助かる。変な気を使われる方がつらい。
もしかしたら皆はそれを分かっているのかもしれない。
「うん」
頷きながら返すとサナエはやたらと張り切って立ち上がった。
「おっしゃどこ行くー!?」
「ハメ外し過ぎないでね」
ユカリがジロリとサナエに視線を向けて釘を刺した。
確かにサナエは何をするか分からない危うさがある。
少し頬が緩んだ。
こんなに優しくて明るくしてくれる皆に、報いたい。
さっきした決意を強めた。
文化祭中でも人気は無い。校舎裏にしては綺麗だけど、やっぱり校舎裏だった。
壁に背を預けて俯き、これまでの自分を振り返っていた。
小学校の卒業アルバム、クラスの面白い人ランキング女子の部で一位だったことは私のささやかな自慢だ。
皆の思う私と、本当の私は違う。私はもっと面白い奴のはず。
皆のお喋りはいつも面白い。
でも「こう言えばもっと面白いのに!」「私ならこう言うのに!」と思うことが沢山ある。
私はただ声に出ないだけ。
喋ることが苦手になったのは中学入学のあたりから。
私が喋ると大きく盛り下がることが何度か続いた。たったそれだけ? と自分でも思うけど、進級、転校、進学と、環境が大きく変わる度、喋れる相手が減っていく度、それが重くのしかかって段々喋れなくなってしまった。
特に致命的だったのは中三の春の転校。なぜこんな大事な時期に? と思ったけど、自分ではどうしようもなかった。転校してからは喋ることが余計に苦手になってしまったので、変わり者と思われていたと思う。いじめられていた訳ではないけど、転校先で友達は一人も出来なかった。
しばらくは「別に必要なことだけ喋ることが出来ればいいじゃないか」と思っていた。でも中三の冬には流石にこのままではいけないと考えるようになった。
変わりたい。そう思って、高校の入学式の翌日に図書室へ行くというささやかな抵抗をした。少しでも違うことをしようと思ったから。
けど読みたい本があったわけでは無いので無駄に時間が潰れただけだった。
バカな自分に呆れながら廊下を歩いていると落ちているプリントを見つけた。
落とし物かもしれないと思って名前を確認しようとしたら、それは軽音部勧誘のチラシだった。
部活に入る気なんて全く無かった。喋ることが苦手な私にはストレスにしかならなそうだから。
ゴミなら捨てなきゃ。
そう思った瞬間、すぐ側の扉が開き、チハルに声をかけられた。
そして私は軽音部に入った。
ささやかな抵抗が生み出した偶然の出会いが、私を変えてくれることを信じて。
軽音部の皆は私を邪魔者扱いもしなければ気を遣ったりもしない。
私が喋らなくても勝手に楽しそうで、それがとても助かった。
喋れば喋ったで会話の一部にしてくれる。
私は皆のお陰で少しずつ喋れるようになっていると思っていた。
でも甘かった。
文化祭、あんなに大勢の前でいきなり話をするんて想像もしていなかった。
あんなの誰だって緊張する。でもあそこまで喋れなくなってしまうのは異常。体が震えるなんて更に異常。
このままではいけない。解決しなければいけない。
こんなことで皆に迷惑をかけてはいけない。
大丈夫、頑張れる。
私なんかより遥かに重い重圧を跳ね除けた友達を、この目で見たじゃないか。
決意して部室に戻った。
部室の扉を開けると、チハルがすぐに駆け寄ってきてくれた。
「シオリ、大丈夫?」
「うん」
チハルの心配そうな顔はホッとした様子に変わった。
部室に入ると、皆はコタツの指定席から迎えてくれる。
「おかえり」
「丁度、文化祭の打ち上げ行こー! って話してたの」
ユカリとマリコはいつも通りの調子だった。
「もちろん行くよな?」
サナエがニヤリとする。これもいつもと変わらない。
とても助かる。変な気を使われる方がつらい。
もしかしたら皆はそれを分かっているのかもしれない。
「うん」
頷きながら返すとサナエはやたらと張り切って立ち上がった。
「おっしゃどこ行くー!?」
「ハメ外し過ぎないでね」
ユカリがジロリとサナエに視線を向けて釘を刺した。
確かにサナエは何をするか分からない危うさがある。
少し頬が緩んだ。
こんなに優しくて明るくしてくれる皆に、報いたい。
さっきした決意を強めた。
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