自殺したガール

駄犬

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 きっと、俺と似たような人間は有象無象いるはずだ。問題の解決にあたらず、知らぬ存ぜぬを貫く姿勢により、俺は幼馴染み相手にその心情を図りかねている。朴念仁として芽吹く前に引き返せ。度し難い。

「違うさ。千枝の目がいいんだ。だから、人の変化に気付ける」」

 俺は自虐的に幼馴染みを肯定した。すると、年嵩を重ねて動作に年季の入った近所のオバ様が褒められたことを面映く思い、手の平を扇のように煽いで滅相もないと謙遜する形を、そっくりそのまま幼馴染みが演じる。

「ババ臭いな」

 思わず失言してしまい、即座に口を抑えれば、対話の醍醐味である茶目っ気が渦を巻く。

「ひどいなぁ。正真正銘のじぇーけーにそういうこと言っちゃ駄目だから」

 幼馴染みの声は弾力があり、張り詰めたような怒気とは似ても似つかず、あくまでも軽口の範囲に収まる会話の遊びとして成立していた。その瞬間、彼女に対して行った無機質な問答が蘇り、あまりの不甲斐なさに頭は垂れ落ちる。

「ごめんごめん」

 もはや誰に謝罪しているのかも曖昧だ。

「まぁいいけど」

 朝礼が始まる前の教室の一角で、何気なく交わされた会話の軽やかさから、如何にして言葉による人間関係の形成が大事かを今更ながら学んだ。これは彼女と対話をする上で確実に役立ち、きっとより良い関係を築くのに寄与するはずだ。仄かな手応えを感じていると、起き抜けにはなかなかに辛い授業となる数学教師が満面の笑みを浮かべて教室へ入ってくる。

「はい! おはよう」

 あけすけに爽やかさを演出する数学教師の振る舞いに、胸焼けを起こしたクラスメイトらの眉間に溝が深く刻まれた。この授業の並びを考えた人物は教職者の鑑である。生徒の心情を一切顧みず、忌避されることをまるで気にしない。学校の運営ばかりを念頭に置き、学び舎としての機能を疎かにする無能な働き者に感謝しよう。

「〇〇ページを開いてー」

 促されるまま渋々、本を開くと皆一様に息を吐き捨て、如何に頭を軽くしておきたいかを物語る。俺にとって勉強という行為は、あくまでも社会から課せられた謂わば、労働と相違なく、死んだ魚の目を体現するのに全くもって苦労しなかった。勿論、これは俺の感覚が複雑怪奇である為に引き起こされたものではない。世間一般が「青春」と呼称する期間を過ごしていれば、否が応でも付き纏い、決して逃れられない頸木である。

「はぁ、終わった」

 学校での習学時間を終えた解放感は、恐らく社会人が仕事終わりにビールを呷るのと似た、気持ち良さのように思える。まだ飲酒を行うには早い年齢である為、想像の域を出ないが、きっと的外れな感覚ではないはずだ。そんな気風に託けて、俺はスマートフォンをポケットから取り出し、徐に操作を始める。俺は本日付けに交換した彼女の連絡先と対峙した。
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