彼岸よ、ララバイ!

駄犬

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秘密の遊び⑦

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 町の風景は尽く目が滑り、傾き始めた太陽の赤みに生徒は紅潮した。それぞれの親達は事件事故の間に揺れ動き、腹を痛めて産んだ子どもの帰りを懇願する。硬い板の間をベッドに丸まった生徒は、忙しなく働く心臓の動きに眠気を掴み損ね、登校の時間まで狸寝入りを貫徹する。水を含んだ布のように身体は重みを湛え、教室へ向かう道中に何人ものクラスメイトに先をいかれ、一番乗りを標榜する生徒は五番目に席に座った。

 始業の時間が近付くにつれ、教室は鈴なりの人気を形成し出し、花盛る談笑はチャイムが鳴る直前まで続いた。慣例なら、担任教師が颯爽と時間の折り目に教室へ顔を出し、出席を取り出すところだが、石の扉を開くかのようにやおら教室の扉が開いていく。蜘蛛の子を散らすように机へ座っていく中、担任教師は愚鈍に教卓まで足を動かす。脇に抱えた出席簿を教卓に置いて一通り名前を呼び出すはずが、神妙に顔を曇らせたまま話し出すのだ。

「三日前から、」

 吉報をまるで期待できない生徒は、間接的に関わってしまった件の出来事から、顔を俯かせ知らぬ存ぜぬを装う。生徒の反応は正しく、三人ものクラスメイトが姿を消したことが担任教師の口から語られた。警察も動き出したことを述べると情報の提供をひとえに望んだ。

「いつ、どこで、何時に三人を見たかを教えて欲しいんだ」

 証言の収集を試みる担任教師を横目に、生徒はそぞろに「遊び」の発起人へ視線を飛ばす。すると、何食わぬ顔で席に座ったままでいて、欠伸をする始末であった。生徒は血の気が引いた。姿を消した三人のクラスメイトの関連性を蔑ろにし、全く口を開くつもりがない様子の発起人へ、生徒は唖然とする他なかった。その日の放課後、帰り支度を終えた頃に予期しない相手から話しかけられる。

「どう思う?」

 察してくれと言わんばかりに掻い摘んだ問いかけは、他のクラスメイトに聞き耳を立てられることを恐れた発起人の浅知恵である。その上で、生徒は正々堂々と答える。

「なんのことだ?」

 小賢しい発起人の口車を小馬鹿にしたかのような言葉を返し、生徒はうつけた。

「いや、わかるだろう」

 勘の悪さに苛立ちを覚えた発起人がやや怒気を込めて睨み付ける。それでも生徒は、素知らぬ顔をし続け、阿呆のように返すのである。

「ちゃんと言ってよ。それじゃあ分からないよ」

 まるで部外者であることを念押しするかのように、生徒は能無しを演じた。時に化粧すら扱って、平常を装う生徒の徹底した面の厚さに発起人は踵を返すしかなかった。
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