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逆恨み④
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学徒に於ける一年間とは、単位を稼ぐ為の代わり映えのない決まり切ったスケジュールをこなし、成績を決定付けるテストへ奉仕することである。錆び付いて当然の学校生活に於いて、今回の出来事は未来に語り継ぐのに値した。生理現象に気を取られ、日々の営みに回帰することは実に勿体ないことのように感じるが、神尾はそのような俗気に囚われず、超然とした振る舞いを貫徹する。
小言の一つや二つ、と軽んじて神尾を論じてみろ。皮肉屋の看板を忽ち背負うことになり、素直に口が利けない可哀想な人間として、学校生活を過ごすはめになるだろう。それほど神尾は高潔で、非の打ち所がないのだ。
「神尾、今度の全校集会できっと壇上に上がることになるな」
恐らく、ここ数週間のうちに絶えず反芻してきたであろう、褒め称える言葉の数々を神尾は嫌な顔一つせずに笑顔で対応する。
「なに言ってんだよ。あんなの俺がいなくても、他の奴が代わりにやってた」
そう謙遜を訴え、同級生の肩をポンと叩く。軽妙で重苦しさがない身のこなしには脱帽する。いつ如何なる時でさえ、崩れることがなく、看破しようと目敏くいればいるほど、それが虚飾ではないことを証明した。霊格の時点で神尾は高位にあり、年嵩を重ねて培われるはずの老獪さを既に持ち合わせているかのように、欠点らしい欠点が凡そ見つからない。恐らく四六時中、監視の目に晒されようが、浅はかな行動や仕草、言葉遣いに至っても、わざわざ苦言を呈するような不備を見せないだろう。そんな雰囲気がそこはかとなく漂っていて、鼻についた。
自分を引き合いに出して神尾との差異を語ろうとするならば、身体を構成する細胞から始めた方が早い。それほどまでに、似通った部分が見当たらず、水と油のような関係である。つまり、学び舎で出会っていなければ、生涯に於いて交わることがなかったであろう人種なのだ。だからこそ、憎たらしく、目の敵にするように注視がやめられない。
積極的に人間関係を広めようとしたことがない。学年が変わるたびに、未知なる遭遇を意味し、既知のクラスメイトに対して新顔のように振る舞われた。器量を問われるような機会があるとすれば、それは恥辱に紐付けられた負の側面が表に顔を出した瞬間だろう。間違っても、万雷の拍手を貰うことはない。先刻の火事の予兆にすら、神尾が飄々と現れて鎮火させてしまたのだから、自分が出る幕などなかった。いつだって他人の振る舞いを値踏みし、それを鏡のように扱ってきた。卑屈な性格だと自認しているし、髪を一枚めくると夥しい量の白髪が顔を出す。不健康か? 貴方がそう思うなら、きっとそうだろう。
小言の一つや二つ、と軽んじて神尾を論じてみろ。皮肉屋の看板を忽ち背負うことになり、素直に口が利けない可哀想な人間として、学校生活を過ごすはめになるだろう。それほど神尾は高潔で、非の打ち所がないのだ。
「神尾、今度の全校集会できっと壇上に上がることになるな」
恐らく、ここ数週間のうちに絶えず反芻してきたであろう、褒め称える言葉の数々を神尾は嫌な顔一つせずに笑顔で対応する。
「なに言ってんだよ。あんなの俺がいなくても、他の奴が代わりにやってた」
そう謙遜を訴え、同級生の肩をポンと叩く。軽妙で重苦しさがない身のこなしには脱帽する。いつ如何なる時でさえ、崩れることがなく、看破しようと目敏くいればいるほど、それが虚飾ではないことを証明した。霊格の時点で神尾は高位にあり、年嵩を重ねて培われるはずの老獪さを既に持ち合わせているかのように、欠点らしい欠点が凡そ見つからない。恐らく四六時中、監視の目に晒されようが、浅はかな行動や仕草、言葉遣いに至っても、わざわざ苦言を呈するような不備を見せないだろう。そんな雰囲気がそこはかとなく漂っていて、鼻についた。
自分を引き合いに出して神尾との差異を語ろうとするならば、身体を構成する細胞から始めた方が早い。それほどまでに、似通った部分が見当たらず、水と油のような関係である。つまり、学び舎で出会っていなければ、生涯に於いて交わることがなかったであろう人種なのだ。だからこそ、憎たらしく、目の敵にするように注視がやめられない。
積極的に人間関係を広めようとしたことがない。学年が変わるたびに、未知なる遭遇を意味し、既知のクラスメイトに対して新顔のように振る舞われた。器量を問われるような機会があるとすれば、それは恥辱に紐付けられた負の側面が表に顔を出した瞬間だろう。間違っても、万雷の拍手を貰うことはない。先刻の火事の予兆にすら、神尾が飄々と現れて鎮火させてしまたのだから、自分が出る幕などなかった。いつだって他人の振る舞いを値踏みし、それを鏡のように扱ってきた。卑屈な性格だと自認しているし、髪を一枚めくると夥しい量の白髪が顔を出す。不健康か? 貴方がそう思うなら、きっとそうだろう。
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