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愛だ恋だの語りたい
自己紹介
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「……あんなことがあったのに、人を襲うなんて馬鹿げてる」
僕が独り言のように呟けば、女性は頷きそれを肯定した。
「貴方は、これから常に狙われる」
綱要はそこなのだ。今、匿って貰っている理由は瀬戸海斗の急襲から身を守るためだ。僕たちが取るべき対処に関して話し合い、紛糾の種を潰しておいて損はない。
「どうするべきですか」
「一つの手段として、ある方法がある」
女性は、ばつが悪いのか決して僕と目を合わせようとしない。その進言が如何に口に出しづらく、僕を困らせるものなのか。汲み取るには些か、情報が足りない。
「なんですか?」
女性の背中を押すと、一気呵成に吐き出される。
「私に血を吸われること。そうすれば、自衛はできる。でも、判断は貴方に任せる。暫くの間は此処にいていいから、考えといて」
問題の所在を僕に預けて女性は、洗面所と思しき場所へ姿を消す。
「そうなるか」
三人掛けのソファーをベッド代りに寝息を立てれば、聞き慣れない目覚ましの音色が僕を叩き起こす。妙に軽い目蓋は、快然たる眠りから如何に距離があるかを知るのに役立った。間欠的に繰り返されるスマートフォンの目覚ましの音は、朝を苦手とする女性の性質に起因する。
「あの、鳴ってますよ」
恥も外聞もなく女性の身体に触れて起こそうとするのは余程の軽薄な男しかいないだろう。僕はなるべく声を掛けることに終始した。
「?!」
この部屋で最も聞き馴染みがない僕の声は目覚ましの音より効果的だったようだ。飛び跳ねるようにして女性は起き上がり、目を丸くする。
「朝ですよ」
僕は少し気の毒に思い、出来るだけ小さな声で伝えた。一応の習慣になっている歯を磨く行為を口述にその場を離れる。洗面所が避難所じみた場所になることは今まで一度もなかった。埃のように身体を小さくしていた頃を思い出すと、逃げた先が日常と地続きにあり、堂々と直立できる違和感に感謝したい。
「おはよう」
同じ棚から選んだであろう色違いの寝間着は、共同生活を送る上で欠かせない帰属意識を生む。
「おはようございます」
しかしながら、あらゆる動作がぎこちない。当然である。一事保護の観念から僕を家に匿ったとはいえ、本来、顔を覚えるまでもない通りすがりと同じ屋根の下にいるのだから、親近感を小脇に抱えて接するような間柄には決してなく、尊重して然るべきなのだ。
僕は手早く登校の準備を済ませ、女性の出勤時間に合わせて家を出た。成人女性を横に連れて学校へ登校する特異な光景は、瀬戸海斗を遠ざける意味合いがあったが、傍から見るとやはり、可笑しな風合いをしていた。
「……」
空笑に興じる間隙すら生まれない黙々とした雰囲気を気まずく思えば、対人関係に於ける最も基礎的なことを失念していたと気付く。
「あの、僕たちお互い、名前も知りませんよね」
目の前で風船が割られたかのようにあけすけに驚いて見せる女性は、間もなく砕けた笑みを浮かべる。
「そうだったね」
僕は改めて女性と向き合って、自名を明かす。
「藍原幸太です」
「華澄由子です」
僕が独り言のように呟けば、女性は頷きそれを肯定した。
「貴方は、これから常に狙われる」
綱要はそこなのだ。今、匿って貰っている理由は瀬戸海斗の急襲から身を守るためだ。僕たちが取るべき対処に関して話し合い、紛糾の種を潰しておいて損はない。
「どうするべきですか」
「一つの手段として、ある方法がある」
女性は、ばつが悪いのか決して僕と目を合わせようとしない。その進言が如何に口に出しづらく、僕を困らせるものなのか。汲み取るには些か、情報が足りない。
「なんですか?」
女性の背中を押すと、一気呵成に吐き出される。
「私に血を吸われること。そうすれば、自衛はできる。でも、判断は貴方に任せる。暫くの間は此処にいていいから、考えといて」
問題の所在を僕に預けて女性は、洗面所と思しき場所へ姿を消す。
「そうなるか」
三人掛けのソファーをベッド代りに寝息を立てれば、聞き慣れない目覚ましの音色が僕を叩き起こす。妙に軽い目蓋は、快然たる眠りから如何に距離があるかを知るのに役立った。間欠的に繰り返されるスマートフォンの目覚ましの音は、朝を苦手とする女性の性質に起因する。
「あの、鳴ってますよ」
恥も外聞もなく女性の身体に触れて起こそうとするのは余程の軽薄な男しかいないだろう。僕はなるべく声を掛けることに終始した。
「?!」
この部屋で最も聞き馴染みがない僕の声は目覚ましの音より効果的だったようだ。飛び跳ねるようにして女性は起き上がり、目を丸くする。
「朝ですよ」
僕は少し気の毒に思い、出来るだけ小さな声で伝えた。一応の習慣になっている歯を磨く行為を口述にその場を離れる。洗面所が避難所じみた場所になることは今まで一度もなかった。埃のように身体を小さくしていた頃を思い出すと、逃げた先が日常と地続きにあり、堂々と直立できる違和感に感謝したい。
「おはよう」
同じ棚から選んだであろう色違いの寝間着は、共同生活を送る上で欠かせない帰属意識を生む。
「おはようございます」
しかしながら、あらゆる動作がぎこちない。当然である。一事保護の観念から僕を家に匿ったとはいえ、本来、顔を覚えるまでもない通りすがりと同じ屋根の下にいるのだから、親近感を小脇に抱えて接するような間柄には決してなく、尊重して然るべきなのだ。
僕は手早く登校の準備を済ませ、女性の出勤時間に合わせて家を出た。成人女性を横に連れて学校へ登校する特異な光景は、瀬戸海斗を遠ざける意味合いがあったが、傍から見るとやはり、可笑しな風合いをしていた。
「……」
空笑に興じる間隙すら生まれない黙々とした雰囲気を気まずく思えば、対人関係に於ける最も基礎的なことを失念していたと気付く。
「あの、僕たちお互い、名前も知りませんよね」
目の前で風船が割られたかのようにあけすけに驚いて見せる女性は、間もなく砕けた笑みを浮かべる。
「そうだったね」
僕は改めて女性と向き合って、自名を明かす。
「藍原幸太です」
「華澄由子です」
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