吸血鬼は唇に紅を差す

駄犬

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死なば諸共

双子の吸血鬼

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 美食倶楽部「あめりあ」は、攫ってきた人間を舞台の上で解体し、食すという猟奇的な趣向を楽しむために立ち上げられた。会員数は二十名に及び、会員費は毎月一万五千円を徴収している。会員は素性を隠すことを義務付けられており、余計なトラブルを避けるべく規定した会員同士の接触の禁止は、予め氏名と連絡先の記入を求める用紙に条項として盛り込まれている。会員の氏名と連絡先を全てを管理し、事が起こった際に対処するのが鈴木の立場であった。

「鈴木さんも、大変だよなぁ。男女のもつれにも首を突っ込んで」

「あぁ、相川さんが引っ叩かれた話?」

 瓜二つの顔を雁首揃えて喫茶店の一角を埋める彼らは、双子の兄弟であり吸血鬼としての自覚もある、まことに稀有な存在であった。「あるすとあいかい」などといった挨拶が陳腐に思えるほど、二人の意思は通い合っている。この短い間にも、コーヒーを寸分違わぬタイミングで飲み干して、生クリームがこんもりと積まれた厚切りの食パンに二人とも目がない。

「女に手を挙げるのはおれも同意できないが、鈴木さんがわざわざ出張ってくる問題なのかね?」

「相原さんが鈴木さんに進言したんじゃないの?」

「……叩いた男を追い出すために禁止とされている会員同士の交流をあけすけにするなんて、本末転倒だろう。まっ、こうやっておれたちが「あめりあ」の情報をやりとりしている時点で、仮初のルールだけどね」

「会員同士の接触禁止を馬鹿正直に守る人なんていないよ」

「そうだな」

 双子の兄のスマートフォンが鳴った。「噂をすれば影がさす」ことわざ通りに、スマートフォンの液晶の画面には鈴木の名前が表示されている。

「はい、高井です」

「あるすとあいかい」

 声の調子から挨拶まで、鈴木本人ではないことは明白である。双子の兄は、直ちに訝しみ、耳からスマートフォンを幾ばくか離した。

「あるすとあいかい」

 話を前進させるべく、双子の兄は渋々挨拶を返した。すると、電話口の相手はとびきりに声を弾ませる。

「いやぁ、良かった。安心した」

「どういう意味ですか?」

「いや、実はね。鈴木さんは今、トラブルに巻き込まれて手が離せない状況でして」

 「あめりあ」の規律を保つための事に当たる鈴木自身に、なんらかの危険が迫ったとしても不思議ではない。双子の兄はそう納得しつつ、何故わざわざ電話を寄越したのか疑念が湧いた。

「それで、要件はなんですか?」

「実は、鈴木はある一人の女性に襲われまして、どうやら相手は吸血鬼のようなんですよ」

 瞬く間に相川の顔が浮かんだ。双子の弟は、漏れ聞こえて来ていた会話の流れを汲み取って、兄へスマートフォンを自分に渡すように指図した。

「つまり、会員の中に犯人が紛れ込んでいると?」
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