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第13話
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初めての夜から1週間。
香の休みの日に、必要なものを持って来ようということになった。
洋服類や化粧品、お気に入りのグッズなどを二人でダンボールに
詰めているとチャイムを鳴らす音がした。
香が出ると宅配便だった。送り主は上田裕子、別れた妻からである。
「何かしら?」
香は不思議そうに袋を開けた。中には小さな箱が入っていた。
開けてみると中には誕生日のメッセージと、ネックレスが入っていた。
(香ちゃん、お誕生日おめでとう。来月からパリにピアノのレッスンを
受けに行くので、少し早いけどプレゼントを贈ります。)
メッセージにはそう書いてあった。
ネックレスは小さな宝石がついた可愛らしいデザインのものであった。
香は少しし困惑したような表情をしていた。
「あまり気に入らないのかい?」
たずねると首を横に振りながら言った。
「違うの。裕子さんが貴方の奥さんだったって考えると・・・
嫉妬しちゃうの私、嫌な女でしょ?」
そう言いながら涙ぐんでしまった。
この時ばかりはどう声をかけていいのかわからなかった。
裕子と愛し合っていたのは事実だし、今も嫌いなわけじゃない。
しかし、だからといって今、香と比べるなどまったくあり得ない。
そんな事は香もわかっているはずだ。
「香のことが誰よりも好きなんだよ。分かってるだろ?」
その時はそう言って抱きしめる事しかできなっかた。
「ごめんなさい。私こんなに嫉妬深いなんて思わなかった、貴方の
事を本当に愛しているの・・・嫌いにならないでね」
そう言いながら私の胸に顔を埋めた。
「明日も休みだろ?今夜あの店へ行こう。香のことを皆に紹介するよ」
香を安心させてやりたい、そんな気持ちから出た言葉だった。
その日、ジャズクラブ「クオーター」は二人が主役だった。
かわるがわるに仲間達がテーブルにやってきて経緯を聞いた。
その都度出会いから現在までを説明し、まるで結婚式の
会場のような雰囲気だった。
ふと香を見ると幸せそうな顔をしていた。
その後数週間が過ぎても、香りとの生活は満ち足りたものだった。
朝、香を送ると一日が始まり、夜は私の手料理でゆっくりとした時間を過ごす。
以前ほどではないが、ライヴにも何度か行った。
生活で変わった事といえば朝食を摂るようになった事と、夜寝るのが
早くなった事ぐらいだが、充実感はまったく違うものであった。
ネットの注文は一時に比べれば下がったものの、それ以外のアフィリエイト等の
広告収入が伸びていおり収入の面でも香と二人で生活する分にはなんら
不自由は無かった。
その日も二人で「クオーター」の入り口に近いテーブルで、funky-dogの
演奏を聴きながらワインを傾けていた。
いつに無くジェイの軽やかなギターの音色が心地よい。
二人を祝福するかのような優しい演奏だった。
「神田さん、お久しぶり」
その声に振り向くと、画家の高木がそこに居た。
隣には一瞬息を呑むほどの美しさを持つ女性が立っている。
彼女があの大作のモデルだろうか?
高木があれ以来、絵を描かなくなった理由が分かるような気がした。
「神田さん、お邪魔で無ければご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」
二人を同席させ香を紹介した。
高木は目を細めながら可愛らしい女性だと褒めていた。
最初、香は彼が先日話した画家という事に気づいてはいなかったが、
話をしているうちに分かったようである。
「高木さん、今も絵は描いて無いんですか?」
「いやいや、最近またどうしてももう一枚描きたくなってきまして・・・
やはり絵が好きなんでしょうな。あの作品を超えるものを描いてみたい。
そんな事ばかり考えるようになってしまいました」
意味ありげに隣に居る美女の横顔を見ていた。
この女性も高木の前で、誰か他の男に抱かれるのだろうか?
演奏が終わり帰り際、高木が私たち二人に今度一緒に食事でもしないかと
提案してきた。
是非自分のアトリエでパーティをやりたいと言うのだ。
香と相談し水曜日なら大丈夫だと伝え、その日はクオーターを後にした。
「晋一郎さんが言ってた絵が見れるのね。凄く興味があるわ」
タクシーを拾うために大通りまで歩く途中香が言った。
「見た感じは普通の抽象画だからどんな風に見えるか・・・そういえば
来月は香の誕生日だったね。6月16日はどこか食事に行こうか?」
「そんなのより二人だけで過ごしたいなぁ。混んでるお店とかじゃなくて・・・」
「何曜日だっけ?木曜なら休めるんじゃない? どこか旅行に行こうか」
「ホント?!うれしい」
香が抱きついてきた。
じゃれあう二人の影を、セントラルパークの照明が演出しているようだった。
香の休みの日に、必要なものを持って来ようということになった。
洋服類や化粧品、お気に入りのグッズなどを二人でダンボールに
詰めているとチャイムを鳴らす音がした。
香が出ると宅配便だった。送り主は上田裕子、別れた妻からである。
「何かしら?」
香は不思議そうに袋を開けた。中には小さな箱が入っていた。
開けてみると中には誕生日のメッセージと、ネックレスが入っていた。
(香ちゃん、お誕生日おめでとう。来月からパリにピアノのレッスンを
受けに行くので、少し早いけどプレゼントを贈ります。)
メッセージにはそう書いてあった。
ネックレスは小さな宝石がついた可愛らしいデザインのものであった。
香は少しし困惑したような表情をしていた。
「あまり気に入らないのかい?」
たずねると首を横に振りながら言った。
「違うの。裕子さんが貴方の奥さんだったって考えると・・・
嫉妬しちゃうの私、嫌な女でしょ?」
そう言いながら涙ぐんでしまった。
この時ばかりはどう声をかけていいのかわからなかった。
裕子と愛し合っていたのは事実だし、今も嫌いなわけじゃない。
しかし、だからといって今、香と比べるなどまったくあり得ない。
そんな事は香もわかっているはずだ。
「香のことが誰よりも好きなんだよ。分かってるだろ?」
その時はそう言って抱きしめる事しかできなっかた。
「ごめんなさい。私こんなに嫉妬深いなんて思わなかった、貴方の
事を本当に愛しているの・・・嫌いにならないでね」
そう言いながら私の胸に顔を埋めた。
「明日も休みだろ?今夜あの店へ行こう。香のことを皆に紹介するよ」
香を安心させてやりたい、そんな気持ちから出た言葉だった。
その日、ジャズクラブ「クオーター」は二人が主役だった。
かわるがわるに仲間達がテーブルにやってきて経緯を聞いた。
その都度出会いから現在までを説明し、まるで結婚式の
会場のような雰囲気だった。
ふと香を見ると幸せそうな顔をしていた。
その後数週間が過ぎても、香りとの生活は満ち足りたものだった。
朝、香を送ると一日が始まり、夜は私の手料理でゆっくりとした時間を過ごす。
以前ほどではないが、ライヴにも何度か行った。
生活で変わった事といえば朝食を摂るようになった事と、夜寝るのが
早くなった事ぐらいだが、充実感はまったく違うものであった。
ネットの注文は一時に比べれば下がったものの、それ以外のアフィリエイト等の
広告収入が伸びていおり収入の面でも香と二人で生活する分にはなんら
不自由は無かった。
その日も二人で「クオーター」の入り口に近いテーブルで、funky-dogの
演奏を聴きながらワインを傾けていた。
いつに無くジェイの軽やかなギターの音色が心地よい。
二人を祝福するかのような優しい演奏だった。
「神田さん、お久しぶり」
その声に振り向くと、画家の高木がそこに居た。
隣には一瞬息を呑むほどの美しさを持つ女性が立っている。
彼女があの大作のモデルだろうか?
高木があれ以来、絵を描かなくなった理由が分かるような気がした。
「神田さん、お邪魔で無ければご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」
二人を同席させ香を紹介した。
高木は目を細めながら可愛らしい女性だと褒めていた。
最初、香は彼が先日話した画家という事に気づいてはいなかったが、
話をしているうちに分かったようである。
「高木さん、今も絵は描いて無いんですか?」
「いやいや、最近またどうしてももう一枚描きたくなってきまして・・・
やはり絵が好きなんでしょうな。あの作品を超えるものを描いてみたい。
そんな事ばかり考えるようになってしまいました」
意味ありげに隣に居る美女の横顔を見ていた。
この女性も高木の前で、誰か他の男に抱かれるのだろうか?
演奏が終わり帰り際、高木が私たち二人に今度一緒に食事でもしないかと
提案してきた。
是非自分のアトリエでパーティをやりたいと言うのだ。
香と相談し水曜日なら大丈夫だと伝え、その日はクオーターを後にした。
「晋一郎さんが言ってた絵が見れるのね。凄く興味があるわ」
タクシーを拾うために大通りまで歩く途中香が言った。
「見た感じは普通の抽象画だからどんな風に見えるか・・・そういえば
来月は香の誕生日だったね。6月16日はどこか食事に行こうか?」
「そんなのより二人だけで過ごしたいなぁ。混んでるお店とかじゃなくて・・・」
「何曜日だっけ?木曜なら休めるんじゃない? どこか旅行に行こうか」
「ホント?!うれしい」
香が抱きついてきた。
じゃれあう二人の影を、セントラルパークの照明が演出しているようだった。
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