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第四話 ー完結ー
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ライブ当日はかなりの人が会場に集まっていた。
全部で4組のバンドが演奏するようで、プログラムでは彼のバンドがトリである。
「節子ちゃん!来てくれたんだね。よかったー」
「凄いお客さんですね! ビックリしました。ジュンヤさんのバンドが
トリなんですね。楽しみです」
「食事はまだでしょ? 簡単な料理が出てるので持ってくるよ。飲み物はビールでいい?」
そう言って彼は奥のカウンターの方に歩いていった。
彼女来てないのかな?
私は彼の後姿を追いながら周りを気にしていた。
「はい。お待ちどーさま」そう言いながら紙コップに入ったビールを手渡してくれた。
左手には器用に自分のビールと唐揚やサンドイッチをのせた紙皿を持っている。
「テーブルが無いから・・・ここから取ってね。ほら、もうすぐ1組目のバンドの演奏が始るよ」
彼は当たり前のように私の右側に並んでステージの方を見ている。
ずっとここに居てくれるのかなぁ? 彼女来てないのかも?
少し嬉しくなってビールを口に運んだ。
3組目のバンドがステージに立つと「そろそろ行かなきゃ・・・」そう言って楽屋に入っていった。
結局、2時間近く彼と一緒にバンドの演奏を聴いていた。
曲が終わると彼のバンドの話や、好きな音楽の事を話してくれた。
予習したおかげで知ってる名前も結構出てきたりして、私が曲名を言ったりするとスゴク喜んでくれる。
束の間かもしれないけど幸せな時間だった。
彼のバンドがステージに出てきて演奏を始めた頃には、私は感無量のあまり泣いてしまっていた。
彼のギターから奏でられる音は、時に優しく、あるいは力強く私を包み込んでくれているようだった。
そんな時間が一瞬にして消えてしまったのは、演奏が終わって楽屋を覗いた時だった。
彼の左腕に抱きつくように、かわいらしい女の子が笑っているのを見てしまったのだ。
その時の自分の顔を想像すると、今でも悲しくなるほど引きつっていたのだと思う。
私は何も考えられなくなってそのまま会場を飛び出し、泣きながら駅に向かって歩いていた。
分っていた事なのに悔しかった。
少し期待していた自分のバカさ加減にうんざりしていた。
駅に着く頃にはほんの少し気分が落ち着いてきたが、瞼は多分腫れていたと思う。
自動販売機で切符を買っていると、後ろで声がした。
「ねえ・・・はぁ はぁ・・・なんで帰っちゃうの?」
驚いて振り返ると、そこには彼が立っていた。
「だって・・・・」
そこまで言うと私はまた泣いてしまっていた。
「何か嫌な事があったの?」
俯いたままの私を、彼の優しい言葉が包み込む・・・・
「彼女が居るんなら・・・優しくしないで下さい!」
これが精一杯の言葉だった・・・
私はその場から逃げ出したい気持ちで一杯だった。
「彼女って・・・ひょっとして楽屋に居た子?」
私は黙って頷いた。
「あれ・・・妹なんだけど・・・」
「えっ?・・・」
「1組目のバンドのボーカルのヤツと付き合ってて・・・遊びに来てたんだ」
私は恥ずかしさと嬉しさで、気が遠くなるような感覚を覚えていた。
「でも・・・彼女・・・居るんでしょ? この前待ち合わせしてたって・・・」
「ああ・・・アレは同僚だよ。もちろん男だよ。でなきゃ席を譲ったりしないって」
私は凄い勘違いをしてたんだ・・・真っ赤になりながら、恐る恐る彼の顔を見上げた。
「あのさ・・・来週の土曜日空いてないかな? 一緒に食事とか・・・しない?」
「それって・・・デートって事?・・・」
「うん。 明日から出張で25日のお昼頃帰ってくるから・・・ダメかなぁ?」
「ダメじゃない・・・私も・・・会いたい・・・」
「ホント! 良かった・・・約束だよ! 今日はこれから会場の片付けがあるから・・・
これ・・・ボクの名刺。 携帯の番号書いてあるから・・・後で電話してよ」
彼はそう言って 慌てて会場の方へ走って行った・・・
12月24日のコンビニはカップルの来店ばかりだった。
ビールやつまみを一緒に選ぶ姿は、見ているほうもドキドキするほどだ。
去年ならシラーっとした顔で無視するのだけれど、今年は全然違う。
心がスゴク暖かかった。
翌日夕方、彼とイタリアンレストランで食事をし、食後のデザートを食べていると
彼が小さな水色の袋を上着のポケットから取り出した。
「あの・・・これ・・・アメリカで買ってきたんだ・・・」
「ありがとう! クリスマスプレゼントだね? 開けていい?」
「うん・・・気に入ってもらえるか・・・」
袋を破らないように開けると、中には水色の小さなな箱が入っていた。
その箱を開けると、小さなダイヤが散りばめられた指輪が・・・
「サイズは調整してくれるって・・・」
「こんな高そうなもの・・・貰ってもいいのかなぁ・・・」
「ボクと・・・その・・・付き合って欲しいんだ・・・」
多分私は何か言ったのだと思う。嬉しくて泣いてしまい全然覚えてないけど・・・
レストランからの帰り道、彼と一緒に私のipodに入ってるお気に入りの曲を
仲よくイヤホンで聴きながら歩いていた。
先日まで予習のために何百回も聴いた曲だ。
Deep Purpleディープ・パープル の Burn(バーン)。
笑っちゃうほどクリスマスに似合わない曲だけど、どのクリスマスソングより
街のイルミネーションにピッタリだと思った。
翌年、二人でお気に入りのライブに行った帰り、酔っぱらった彼が私のマンションに泊まった。
朝トーストを焼いていると、寝ぼけ眼の彼がベッドで不思議そうな顔をして星占いの雑誌を見ている。
「どうしたの? 変な事書いてある?」
「そうじゃないけど・・・せっちゃん占いの本とか読むの?」
「あまり読まないけど・・・その本、凄く当たってたんだぁ・・・だから大事にとってあるの」
「へー・・・そうなんだ・・・」
「ほら・・・ここ。今年のラッキーカラーがパープルだって・・・
クリスマスに素敵なプレゼントを・・・ねっ! スゴイでしょ?」
「あっ・・・うん・・・そうだね。 だけどこの本2007年って書いてあるよ・・・」
「えっ?・・・・うそっ!・・・ホントだ・・・・・・」
「せっちゃん・・・笑ってもいい?・・・・・ククッ・・・」
「もう! 信じられないっ! おっかしい・・・あー 涙出てきたょ・・・」
「お腹痛い・・・死にそう!・・・・そういうとこ・・・大好き・・・」
彼はそう言うと、私を引き寄せ顔中にキスしてきた。
携帯電話が毎朝の目覚ましの音楽を奏でている。
彼の鼓動を聴きながら小さな声で歌ってみた。
The sky is red, i don't understand,
Past midnight i still see the land.
People are sayin' the woman is damned,
She makes you burn with a wave of her hand.
The city's a blaze, the town's on fire.
The woman's flames are reaching higher.
We were fools, we called her liar.
All i hear
---- is ”Burn!”-----
全部で4組のバンドが演奏するようで、プログラムでは彼のバンドがトリである。
「節子ちゃん!来てくれたんだね。よかったー」
「凄いお客さんですね! ビックリしました。ジュンヤさんのバンドが
トリなんですね。楽しみです」
「食事はまだでしょ? 簡単な料理が出てるので持ってくるよ。飲み物はビールでいい?」
そう言って彼は奥のカウンターの方に歩いていった。
彼女来てないのかな?
私は彼の後姿を追いながら周りを気にしていた。
「はい。お待ちどーさま」そう言いながら紙コップに入ったビールを手渡してくれた。
左手には器用に自分のビールと唐揚やサンドイッチをのせた紙皿を持っている。
「テーブルが無いから・・・ここから取ってね。ほら、もうすぐ1組目のバンドの演奏が始るよ」
彼は当たり前のように私の右側に並んでステージの方を見ている。
ずっとここに居てくれるのかなぁ? 彼女来てないのかも?
少し嬉しくなってビールを口に運んだ。
3組目のバンドがステージに立つと「そろそろ行かなきゃ・・・」そう言って楽屋に入っていった。
結局、2時間近く彼と一緒にバンドの演奏を聴いていた。
曲が終わると彼のバンドの話や、好きな音楽の事を話してくれた。
予習したおかげで知ってる名前も結構出てきたりして、私が曲名を言ったりするとスゴク喜んでくれる。
束の間かもしれないけど幸せな時間だった。
彼のバンドがステージに出てきて演奏を始めた頃には、私は感無量のあまり泣いてしまっていた。
彼のギターから奏でられる音は、時に優しく、あるいは力強く私を包み込んでくれているようだった。
そんな時間が一瞬にして消えてしまったのは、演奏が終わって楽屋を覗いた時だった。
彼の左腕に抱きつくように、かわいらしい女の子が笑っているのを見てしまったのだ。
その時の自分の顔を想像すると、今でも悲しくなるほど引きつっていたのだと思う。
私は何も考えられなくなってそのまま会場を飛び出し、泣きながら駅に向かって歩いていた。
分っていた事なのに悔しかった。
少し期待していた自分のバカさ加減にうんざりしていた。
駅に着く頃にはほんの少し気分が落ち着いてきたが、瞼は多分腫れていたと思う。
自動販売機で切符を買っていると、後ろで声がした。
「ねえ・・・はぁ はぁ・・・なんで帰っちゃうの?」
驚いて振り返ると、そこには彼が立っていた。
「だって・・・・」
そこまで言うと私はまた泣いてしまっていた。
「何か嫌な事があったの?」
俯いたままの私を、彼の優しい言葉が包み込む・・・・
「彼女が居るんなら・・・優しくしないで下さい!」
これが精一杯の言葉だった・・・
私はその場から逃げ出したい気持ちで一杯だった。
「彼女って・・・ひょっとして楽屋に居た子?」
私は黙って頷いた。
「あれ・・・妹なんだけど・・・」
「えっ?・・・」
「1組目のバンドのボーカルのヤツと付き合ってて・・・遊びに来てたんだ」
私は恥ずかしさと嬉しさで、気が遠くなるような感覚を覚えていた。
「でも・・・彼女・・・居るんでしょ? この前待ち合わせしてたって・・・」
「ああ・・・アレは同僚だよ。もちろん男だよ。でなきゃ席を譲ったりしないって」
私は凄い勘違いをしてたんだ・・・真っ赤になりながら、恐る恐る彼の顔を見上げた。
「あのさ・・・来週の土曜日空いてないかな? 一緒に食事とか・・・しない?」
「それって・・・デートって事?・・・」
「うん。 明日から出張で25日のお昼頃帰ってくるから・・・ダメかなぁ?」
「ダメじゃない・・・私も・・・会いたい・・・」
「ホント! 良かった・・・約束だよ! 今日はこれから会場の片付けがあるから・・・
これ・・・ボクの名刺。 携帯の番号書いてあるから・・・後で電話してよ」
彼はそう言って 慌てて会場の方へ走って行った・・・
12月24日のコンビニはカップルの来店ばかりだった。
ビールやつまみを一緒に選ぶ姿は、見ているほうもドキドキするほどだ。
去年ならシラーっとした顔で無視するのだけれど、今年は全然違う。
心がスゴク暖かかった。
翌日夕方、彼とイタリアンレストランで食事をし、食後のデザートを食べていると
彼が小さな水色の袋を上着のポケットから取り出した。
「あの・・・これ・・・アメリカで買ってきたんだ・・・」
「ありがとう! クリスマスプレゼントだね? 開けていい?」
「うん・・・気に入ってもらえるか・・・」
袋を破らないように開けると、中には水色の小さなな箱が入っていた。
その箱を開けると、小さなダイヤが散りばめられた指輪が・・・
「サイズは調整してくれるって・・・」
「こんな高そうなもの・・・貰ってもいいのかなぁ・・・」
「ボクと・・・その・・・付き合って欲しいんだ・・・」
多分私は何か言ったのだと思う。嬉しくて泣いてしまい全然覚えてないけど・・・
レストランからの帰り道、彼と一緒に私のipodに入ってるお気に入りの曲を
仲よくイヤホンで聴きながら歩いていた。
先日まで予習のために何百回も聴いた曲だ。
Deep Purpleディープ・パープル の Burn(バーン)。
笑っちゃうほどクリスマスに似合わない曲だけど、どのクリスマスソングより
街のイルミネーションにピッタリだと思った。
翌年、二人でお気に入りのライブに行った帰り、酔っぱらった彼が私のマンションに泊まった。
朝トーストを焼いていると、寝ぼけ眼の彼がベッドで不思議そうな顔をして星占いの雑誌を見ている。
「どうしたの? 変な事書いてある?」
「そうじゃないけど・・・せっちゃん占いの本とか読むの?」
「あまり読まないけど・・・その本、凄く当たってたんだぁ・・・だから大事にとってあるの」
「へー・・・そうなんだ・・・」
「ほら・・・ここ。今年のラッキーカラーがパープルだって・・・
クリスマスに素敵なプレゼントを・・・ねっ! スゴイでしょ?」
「あっ・・・うん・・・そうだね。 だけどこの本2007年って書いてあるよ・・・」
「えっ?・・・・うそっ!・・・ホントだ・・・・・・」
「せっちゃん・・・笑ってもいい?・・・・・ククッ・・・」
「もう! 信じられないっ! おっかしい・・・あー 涙出てきたょ・・・」
「お腹痛い・・・死にそう!・・・・そういうとこ・・・大好き・・・」
彼はそう言うと、私を引き寄せ顔中にキスしてきた。
携帯電話が毎朝の目覚ましの音楽を奏でている。
彼の鼓動を聴きながら小さな声で歌ってみた。
The sky is red, i don't understand,
Past midnight i still see the land.
People are sayin' the woman is damned,
She makes you burn with a wave of her hand.
The city's a blaze, the town's on fire.
The woman's flames are reaching higher.
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---- is ”Burn!”-----
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