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イヴ、覚醒
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意図せず戦闘に参加する事になった私は、パンドラを展開して敵の動きを観察しているところだ。
この個体は見たところ普通の人間だが、幸いその普通の人間のサンプルが欲しかったところだったので、これは僥倖というべきだろう。
「お前やる気あんのかよ?」
「何に対しての意欲を問われているのか理解しかねるが、攻撃を仕掛けるのなら対処するまでだよ」
「はかせ、イヴはどうしたら」
「君の出番はもっと後だ。大人しくしていてくれたまえ」
イヴを退らせると、痺れを切らせた相手が魔装具を出現させて迫ってきた。
十字の刃がついた槍だが、それを持って俊敏さを維持できる事には素直に驚いている。
「喰らえッ!」
──ガキィィン!
パンドラの内一枚を槍の穂先に合わせて配置すると続けて十枚程、彼女の周囲に展開した。
「【攻勢指令・旋__つむじ__#】」
直後、周囲を旋回しながら相手の武器をいなしつつカードが敵を斬り付ける。殺すつもりはなく、さっさと投降してくれればいいのだが。
「鬱陶しいっ!なんなのこれ!」
「君が大人しく投降するのならこれ以上危害は加えない。まぁ抵抗するのならそれはそれで、別の目的を果たさせてもらうよ」
「っざけんな!」
瞬間、彼女の退路は塞いでいたにも関わらず、突風を引き連れて私の眼前に槍が迫ってきていた。
カード一枚でそれを止めると、続けて命令を下す。
「【守勢指令・堅盾】」
6枚のカードが変形して組み合わさり、菱形の盾の形を取って私の前に浮遊すると、二撃目も難なく防いだ。
「なんて堅さしてんだ……っ」
「その程度の装備で私に挑むとは油断が過ぎるね。スペックはだいたい把握出来た、イヴの試運転には丁度いい性能だ」
「はかせ?」
私が視線を向けると、イヴは首を傾げた。彼女のレムレス細胞は最近になって活性化が顕著である事からカルラくんのような戦闘も可能であると判断した私は、一粒の錠剤を彼女へ手渡した。
「これを服用して、あの人間と戦いたまえ。君の性能をみせてくれ」
「わかった」
イヴに飲ませた物は、この世界で採取した様々な生物の魔核の細胞とタンパク質と、私が開発したレムレス細胞を更に活性化させる化学物質を人工血液に溶かして固めたものだ。
これを摂取することにより、彼女の性能は一時的ではあるが戦闘兵器として運用が可能になる。
今回はその実戦形式の実験といったところだ。
「ガキに戦わせてテメェは見物かよ、とんでもねぇクズだな」
「はははっ、普通の子供な筈がないだろう。彼女はきっとカルラくんとは違った進化をしてくれるはずだ期待しているよ」
「はかせ、なんか、身体……あつい」
「大丈夫だ。あの人間を倒す頃には治まるよさぁ、実験開始だ」
私がイヴをけしかけると、彼女の目が赤く輝き、全身からは視認出来る程の魔力が滲み始めた。
「敵……倒す」
「くっ……容赦しねぇぞ!クソガキ!」
敵が繰り出す無数の突きを全て躱しその柄の上に飛び乗ったイヴは、呆気に取られる女の顎を蹴り上げた。
──バキィッ!
「がっ……!!」
この戦闘の中で、敵が苦し紛れに放とうとした魔法は、魔力として分解されて霧散しているのが確認出来た。
映像に残してあるから後で確認しなくては。
骨の砕けるような鈍い音が響く中、間髪入れずに鳩尾へ魔力の塊を叩き付け、足を掬って転倒を誘う。
「血を、もっと」
「やめ、がはっ!や゛めて!あああああああああぁ!!」
馬乗りになったイヴは相手の首に食らいつき、乱暴にその生き血を啜った。錠剤によって闘争心と加虐性を引き出された状態、それに加えて空腹も重なったが故の行動だろう。
「イヴ、その人間を殺してはいけないよ」
「ごめんなさい……治す」
イヴの赤い目が光を僅かに帯びると、彼女の掌から滲み出た魔力が敵の傷口を塞ぐ。新人医師の縫合のような乱雑さではあるが、出血を止めるには十分だろう。
私の命令も聞けるようだし、実験はひとまず成功だ。
この個体は見たところ普通の人間だが、幸いその普通の人間のサンプルが欲しかったところだったので、これは僥倖というべきだろう。
「お前やる気あんのかよ?」
「何に対しての意欲を問われているのか理解しかねるが、攻撃を仕掛けるのなら対処するまでだよ」
「はかせ、イヴはどうしたら」
「君の出番はもっと後だ。大人しくしていてくれたまえ」
イヴを退らせると、痺れを切らせた相手が魔装具を出現させて迫ってきた。
十字の刃がついた槍だが、それを持って俊敏さを維持できる事には素直に驚いている。
「喰らえッ!」
──ガキィィン!
パンドラの内一枚を槍の穂先に合わせて配置すると続けて十枚程、彼女の周囲に展開した。
「【攻勢指令・旋__つむじ__#】」
直後、周囲を旋回しながら相手の武器をいなしつつカードが敵を斬り付ける。殺すつもりはなく、さっさと投降してくれればいいのだが。
「鬱陶しいっ!なんなのこれ!」
「君が大人しく投降するのならこれ以上危害は加えない。まぁ抵抗するのならそれはそれで、別の目的を果たさせてもらうよ」
「っざけんな!」
瞬間、彼女の退路は塞いでいたにも関わらず、突風を引き連れて私の眼前に槍が迫ってきていた。
カード一枚でそれを止めると、続けて命令を下す。
「【守勢指令・堅盾】」
6枚のカードが変形して組み合わさり、菱形の盾の形を取って私の前に浮遊すると、二撃目も難なく防いだ。
「なんて堅さしてんだ……っ」
「その程度の装備で私に挑むとは油断が過ぎるね。スペックはだいたい把握出来た、イヴの試運転には丁度いい性能だ」
「はかせ?」
私が視線を向けると、イヴは首を傾げた。彼女のレムレス細胞は最近になって活性化が顕著である事からカルラくんのような戦闘も可能であると判断した私は、一粒の錠剤を彼女へ手渡した。
「これを服用して、あの人間と戦いたまえ。君の性能をみせてくれ」
「わかった」
イヴに飲ませた物は、この世界で採取した様々な生物の魔核の細胞とタンパク質と、私が開発したレムレス細胞を更に活性化させる化学物質を人工血液に溶かして固めたものだ。
これを摂取することにより、彼女の性能は一時的ではあるが戦闘兵器として運用が可能になる。
今回はその実戦形式の実験といったところだ。
「ガキに戦わせてテメェは見物かよ、とんでもねぇクズだな」
「はははっ、普通の子供な筈がないだろう。彼女はきっとカルラくんとは違った進化をしてくれるはずだ期待しているよ」
「はかせ、なんか、身体……あつい」
「大丈夫だ。あの人間を倒す頃には治まるよさぁ、実験開始だ」
私がイヴをけしかけると、彼女の目が赤く輝き、全身からは視認出来る程の魔力が滲み始めた。
「敵……倒す」
「くっ……容赦しねぇぞ!クソガキ!」
敵が繰り出す無数の突きを全て躱しその柄の上に飛び乗ったイヴは、呆気に取られる女の顎を蹴り上げた。
──バキィッ!
「がっ……!!」
この戦闘の中で、敵が苦し紛れに放とうとした魔法は、魔力として分解されて霧散しているのが確認出来た。
映像に残してあるから後で確認しなくては。
骨の砕けるような鈍い音が響く中、間髪入れずに鳩尾へ魔力の塊を叩き付け、足を掬って転倒を誘う。
「血を、もっと」
「やめ、がはっ!や゛めて!あああああああああぁ!!」
馬乗りになったイヴは相手の首に食らいつき、乱暴にその生き血を啜った。錠剤によって闘争心と加虐性を引き出された状態、それに加えて空腹も重なったが故の行動だろう。
「イヴ、その人間を殺してはいけないよ」
「ごめんなさい……治す」
イヴの赤い目が光を僅かに帯びると、彼女の掌から滲み出た魔力が敵の傷口を塞ぐ。新人医師の縫合のような乱雑さではあるが、出血を止めるには十分だろう。
私の命令も聞けるようだし、実験はひとまず成功だ。
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