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第24話『街医者』
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その日、街医者のグラハムはトレイの村に来ていた。数年前から診ている患者の往診である。彼は心臓を悪くしていた。
以前は街にある自分の診療所まで来ていたのだが、近頃は娘が薬を取りに来るようになっていた。心臓への負担を避けるためには仕方ないが、患者の様子は実際に診てみないとわからない。
往診を頼まれたわけではなかったが、たまに様子を見に訪れていた。
「先生、わざわざありがとうございます」
出迎えてくれた壮年の男性患者は、椅子をすすめてくれた。腰を下ろしながた訊く。
「なにか変わったことはありますか」
「そうですね。飲み薬を変えてから、胸が苦しくなる頻度が減った気がします」
「それはよかった」
グラハムは微笑んだ。患者もうれしそうである。
「畑仕事もできそうな感じです」
「おっと、無理は禁物ですよ」
グラハムが厳しい顔を作って言うと、男はわかっています、と笑った。
彼の妻がお茶を入れてくれたので、夫妻と談笑していると慌ただしい足音がした。柱の影から若い娘が勢いよく現れる。
「お母さん! すっごくかっこいい人が来てる‼」
目を輝かせ、興奮気味に母親に向かって言った。父親は騒々しい娘に対して顔をしかめた。
「こら、お客さんがいるんだぞ」
「あ! グラハム先生、こんにちは」
ぺこり、と悪気もなく娘は頭を下げた。グラハムは苦笑いしながら尋ねた。
「それで、誰が来たのですか?」
よくぞ訊いてくれたとばかりに、娘の顔が華やぐ・・。
「クオンが友達を連れて来てるんですよ! その人がすっごくかっこ良くて‼」
娘は頬を上気させて言った。
「朱色の髪してて、背も高くて、しかも結婚してない‼」
その言葉にグラハムはおや? と思った。彼の友人は栗色の髪だったはずだ。
クオンのことはよく知っている。彼の作る薬草茶は街の薬草師が作るものより飲みやすいと評判だった。グラハムも薬草師たちの機嫌を損なわない程度に、こっそり分けてもらっている。
娘がきゃあきゃあとはしたなく騒いでいるので、母親がたしなめた。
「あなた、婚約者がいるのに何を言っているの」
「それとこれとは別よ! お母さんも見といた方がいいって! 今から見に行こうよ! 早くしないと帰っちゃうかも‼」
座っている母親の腕を娘が引っ張った。グラハムはくすりと笑った。どこの誰かはわからないが、珍獣扱いされている。
父親が仕方なさそうに眉を寄せた。
「クオンの香草茶をもらってきてくれ」
母親はうなずき、娘と一緒に出ていった。
「すみません、騒がしくて」
「いえ、かまいませんよ。それより、娘さん結婚されるんですね」
「はい。娘が結婚するまで生きていられるか不安でしたが、先生のおかげで花嫁姿が見られそうです」
感謝され、グラハムは小さくうなずいた。
父親の病状を確認しつつ、世間話をしていると母娘が帰ってきた。ちょうどよいので、辞去することにした。今ならまだクオンに会えるかもしれない。
グラハムもクオンが連れているという男が気になっていた。足早に村の入口に向かっていると、水車小屋の近くに二つの影があった。
以前は街にある自分の診療所まで来ていたのだが、近頃は娘が薬を取りに来るようになっていた。心臓への負担を避けるためには仕方ないが、患者の様子は実際に診てみないとわからない。
往診を頼まれたわけではなかったが、たまに様子を見に訪れていた。
「先生、わざわざありがとうございます」
出迎えてくれた壮年の男性患者は、椅子をすすめてくれた。腰を下ろしながた訊く。
「なにか変わったことはありますか」
「そうですね。飲み薬を変えてから、胸が苦しくなる頻度が減った気がします」
「それはよかった」
グラハムは微笑んだ。患者もうれしそうである。
「畑仕事もできそうな感じです」
「おっと、無理は禁物ですよ」
グラハムが厳しい顔を作って言うと、男はわかっています、と笑った。
彼の妻がお茶を入れてくれたので、夫妻と談笑していると慌ただしい足音がした。柱の影から若い娘が勢いよく現れる。
「お母さん! すっごくかっこいい人が来てる‼」
目を輝かせ、興奮気味に母親に向かって言った。父親は騒々しい娘に対して顔をしかめた。
「こら、お客さんがいるんだぞ」
「あ! グラハム先生、こんにちは」
ぺこり、と悪気もなく娘は頭を下げた。グラハムは苦笑いしながら尋ねた。
「それで、誰が来たのですか?」
よくぞ訊いてくれたとばかりに、娘の顔が華やぐ・・。
「クオンが友達を連れて来てるんですよ! その人がすっごくかっこ良くて‼」
娘は頬を上気させて言った。
「朱色の髪してて、背も高くて、しかも結婚してない‼」
その言葉にグラハムはおや? と思った。彼の友人は栗色の髪だったはずだ。
クオンのことはよく知っている。彼の作る薬草茶は街の薬草師が作るものより飲みやすいと評判だった。グラハムも薬草師たちの機嫌を損なわない程度に、こっそり分けてもらっている。
娘がきゃあきゃあとはしたなく騒いでいるので、母親がたしなめた。
「あなた、婚約者がいるのに何を言っているの」
「それとこれとは別よ! お母さんも見といた方がいいって! 今から見に行こうよ! 早くしないと帰っちゃうかも‼」
座っている母親の腕を娘が引っ張った。グラハムはくすりと笑った。どこの誰かはわからないが、珍獣扱いされている。
父親が仕方なさそうに眉を寄せた。
「クオンの香草茶をもらってきてくれ」
母親はうなずき、娘と一緒に出ていった。
「すみません、騒がしくて」
「いえ、かまいませんよ。それより、娘さん結婚されるんですね」
「はい。娘が結婚するまで生きていられるか不安でしたが、先生のおかげで花嫁姿が見られそうです」
感謝され、グラハムは小さくうなずいた。
父親の病状を確認しつつ、世間話をしていると母娘が帰ってきた。ちょうどよいので、辞去することにした。今ならまだクオンに会えるかもしれない。
グラハムもクオンが連れているという男が気になっていた。足早に村の入口に向かっていると、水車小屋の近くに二つの影があった。
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