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第2章 街での暮らし⑥『アルミルト法国』
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イリアスがさらわれたカイトの行き先を推測しようとしたとき、ダグラスとシモンが執務室に入ってきた。
このわずかな時間にカイトがさらわれたことは、隊舎内に知れ渡ったようだ。
二人はそれぞれが確認してきたことを報告した。
ダグラスは門番にカイトが表門を使っていないことを、シモンは厨房でカイトにお使いを頼み、誰も付いて行っていないことを確認していた。
カイトがひとりで出掛けたことがわかった。
警備隊の誰かがやられたというわけではない。
ロイの話した限りでは、騒ぎも起きていないようだ。
カイトはおそらく、人通りのない細い路地に誘い込まれたのだろう。
カイトが異世界から来た跳躍者だと気づいた者が、ひとりのときを狙ったと考えられる。
では、一体誰が。
イリアスが思考を巡らせようとしたとき、
「見られてたってことですかね」
と、ダグラスが言った。
カイトが現れたのはルンダの森。
イリアスがシモンと二人でいるときだった。
「けどあのとき、人の気配はありませんでした」
シモンは記憶を辿るように言ったが、イリアスは否定した。
「密偵かもしれない。偶然見た可能性がある。隠密行動中だったら私にもわからないからな」
人の気配に敏感なイリアスも気配を消した密偵に気づくのは至難の業だった。
油断したわけではないが、そこまで気を配る余裕はあのときなかった。
窓から入る陽射しがイリアスの顔を照らす。
ダグラスは海人の行き先を考えていた。
「跳躍者の存在を知っている者が王宮に売るつもりでさらったか、それとも別の意図を持つ他国の仕業か」
金のために王宮に売られるならまだいい。
王宮の者であれば、彼らは言い値を出し、なんとしてでもカイトを保護するだろう。
厄介なのは他国が拉致した場合である。
跳躍者は何もルテアニア王国にだけ現れるわけではない。
古くからこの王国と隣国に現れるのだと聞かされていた。
隣国、アルミルト法国。
イリアスは内心、舌打ちをした。
「アルミルトは竜のいる国。竜と戦うためにも跳躍者の力は欲しいだろうな」
竜は魔獣の頂点に立つ存在。狡猾で獰猛。竜が人に及ぼす被害は大きいと聞き及んでいる。
イリアスは最悪の可能性を示唆した。
「隣国の仕業なら、犯人はすぐにこの街を離れるだろう。アルミルト法国に向かうにしても、どこを経由するかわからん。関所のある三方面に使いを出し、荷を検めろ。ダグラス、任せていいか」
「わかりました。隊長はどうされますか」
イリアスは棚に掛けてあった剣を取った。
「私はルンダの森に行く。あそこはアルミルトに入るのに一番近いからな。魔獣が多いから避けられやすいが、道はある。一刻も早くルテアニアから出たかったら、危険を冒してでも森を抜けるかもしれん。アルミルトに入られてしまってはカイトを取り戻せなくなる」
帯剣し、大股で扉に向かう。
「シモン、ついて来い」
カイトがさらわれてすでに四半刻。森を通るかどうかは賭けだった。
このわずかな時間にカイトがさらわれたことは、隊舎内に知れ渡ったようだ。
二人はそれぞれが確認してきたことを報告した。
ダグラスは門番にカイトが表門を使っていないことを、シモンは厨房でカイトにお使いを頼み、誰も付いて行っていないことを確認していた。
カイトがひとりで出掛けたことがわかった。
警備隊の誰かがやられたというわけではない。
ロイの話した限りでは、騒ぎも起きていないようだ。
カイトはおそらく、人通りのない細い路地に誘い込まれたのだろう。
カイトが異世界から来た跳躍者だと気づいた者が、ひとりのときを狙ったと考えられる。
では、一体誰が。
イリアスが思考を巡らせようとしたとき、
「見られてたってことですかね」
と、ダグラスが言った。
カイトが現れたのはルンダの森。
イリアスがシモンと二人でいるときだった。
「けどあのとき、人の気配はありませんでした」
シモンは記憶を辿るように言ったが、イリアスは否定した。
「密偵かもしれない。偶然見た可能性がある。隠密行動中だったら私にもわからないからな」
人の気配に敏感なイリアスも気配を消した密偵に気づくのは至難の業だった。
油断したわけではないが、そこまで気を配る余裕はあのときなかった。
窓から入る陽射しがイリアスの顔を照らす。
ダグラスは海人の行き先を考えていた。
「跳躍者の存在を知っている者が王宮に売るつもりでさらったか、それとも別の意図を持つ他国の仕業か」
金のために王宮に売られるならまだいい。
王宮の者であれば、彼らは言い値を出し、なんとしてでもカイトを保護するだろう。
厄介なのは他国が拉致した場合である。
跳躍者は何もルテアニア王国にだけ現れるわけではない。
古くからこの王国と隣国に現れるのだと聞かされていた。
隣国、アルミルト法国。
イリアスは内心、舌打ちをした。
「アルミルトは竜のいる国。竜と戦うためにも跳躍者の力は欲しいだろうな」
竜は魔獣の頂点に立つ存在。狡猾で獰猛。竜が人に及ぼす被害は大きいと聞き及んでいる。
イリアスは最悪の可能性を示唆した。
「隣国の仕業なら、犯人はすぐにこの街を離れるだろう。アルミルト法国に向かうにしても、どこを経由するかわからん。関所のある三方面に使いを出し、荷を検めろ。ダグラス、任せていいか」
「わかりました。隊長はどうされますか」
イリアスは棚に掛けてあった剣を取った。
「私はルンダの森に行く。あそこはアルミルトに入るのに一番近いからな。魔獣が多いから避けられやすいが、道はある。一刻も早くルテアニアから出たかったら、危険を冒してでも森を抜けるかもしれん。アルミルトに入られてしまってはカイトを取り戻せなくなる」
帯剣し、大股で扉に向かう。
「シモン、ついて来い」
カイトがさらわれてすでに四半刻。森を通るかどうかは賭けだった。
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