異世界美貌の騎士様は、キスで魔力をもっていく

琉希

文字の大きさ
44 / 117

第4章 いにしえの因果①『王都』

しおりを挟む
 最後の街を出て、陽が中天に差しかかる前に王都アルバスに着いた。
 
 やたら高い外壁をくぐると、そこは壮麗な街だった。
 にぎやかな街はこれまでも見てきたし、リンデの街も活気がある。だが、王都は別格だった。にぎやかなだけでなく、街並みが美しい。

 整備された道はやたら広く、街中を馬で歩ける。馬車も多く行き交っていた。
 リンデの街は石畳だが、王都はレンガ作りで、朱色が目立つ。それがまた華やかさを強調していた。
 王都の住人は服装も洒落ている。海人は物珍しく、きょろきょろした。

「シモンの家はここから遠いの?」
「ああ、王宮の西側だから、もっと先だよ」

 王宮への道は関所を通ってまっすぐに作られているので、大通りを進んでいれば迷うことはないという。

「イリアスの実家はどこにあるの?」
「王宮の近くだな」

 貴族の屋敷は王宮の周辺に集中しており、そこから下った先に庶民の住宅街があるのだとイリアスは言った。海人はもっと訊きたくて、口を開こうとしたとき、

「あー、カイト。貴族の話はここではよそう。下手に聞かれるとめんどくさいこともあるから」

 シモンがためらいがちに言った。
 絶対的な身分制度のあるこの国では、庶民は気安く貴族に話しかけてはいけないという暗黙のルールがある。シモンに言われて、イリアスは貴族としては規格外だということを思い出した。

 実のところ、海人は階級社会の面倒臭さというのが、よくわかっていない。会ったことのある貴族はイリアスとサラディール伯爵だけなのだ。その伯爵も変わり者みたいで、なにがどう面倒臭いのか実感がない。

 ただ、貴族も多く住むこの街の生まれのシモンが言うのだから、素直に従った方が良さそうである。

(夜にでも聞いてみよう)

 海人は口を閉じた。
 
 王宮へ進む道は、馬車が頻繁に通った。
 邪魔にならないように三人は道の端を一列で行く。
 海人は一列になると決まって真ん中だった。追い越して行く馬車は装飾が立派だ。

 そういえば、紋章があるものは要注意だと、グレンが言っていた。
 意識して見ていると、紋章のある馬車とすれ違った。あれは貴族の乗っている馬車なのだろうか。
 
 観察しながら進んでいると、王宮の城門に着いた。城門の両脇に門番が立っている。
 イリアスは下馬し、門番に話しかけた。すぐに通行の許可が下り、馬と剣を預けるように言われた。

 王宮の中で帯剣が許されるのは近衛騎士団と他国の要人だけらしい。防犯上、当然のことのように思えたが、イリアスが剣を預けるところを見て、海人は心中、苦笑した。

(この人から剣を取り上げても、意味ないよな)

 城門をくぐると、白亜の荘厳な城がそびえ立っていた。その美しさに感動を覚え、感嘆の声が漏れた。
 だがその感動も一瞬で、城までの道が長く、すでにうんざりしている海人である。

 貴族の馬車が歩く三人を追い越して行く。歩いているのは自分たちくらいだ。
 
 王宮の入口まで来ると、イリアスは慣れた足取りで面会の受付に向かった。普段は率先して動くシモンも初めての王宮に辺りを見回していた。近衛騎士団にいたことのあるシモンだが、王宮に入れるのは限られた人間だけらしい。
 
 受付を済ますと、別室に案内され、待たされた。
 海人は少し緊張してきた。これから同郷の人に会えるという期待で胸がいっぱいだった。
 イリアスは黙っており、海人も気を張ってしまい、言葉が少ない。シモンだけがお気楽な感じだった。

 しかし、待てどもお呼びはかからない。
 待合室に入ってどれくらい経っただろうか、シモンが痺れを切らしたように言った。

「けっこう、待たされますね」

 海人がうなずこうとしたとき、扉を叩く音がした。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

猫を追いかけて異世界に来たら、拾ってくれたのは優しい貴族様でした

水無瀬 蒼
BL
清石拓也はある日飼い猫の黒猫・ルナを追って古びた神社に紛れ込んだ。 そこで、御神木の根に足をひっかけて転んでしまう。 倒れる瞬間、大きな光に飲み込まれる。 そして目を覚ましたのは、遺跡の中だった。 体調の悪い拓也を助けてくれたのは貴族のレオニス・アーゼンハイツだった。 2026.1.5〜

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

処理中です...