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第4章 いにしえの因果③『出自』
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荒々しい足音が去っていくと、イリアスは息を吐いてソファにもたれた。
海人は成り行きを見守っていたが、シモンは顔を強張らせてイリアスをゆっくりと見た。
「隊長……。聞き間違いじゃなければ、あの人、いま、大公家って言いました?」
海人はその言葉をグレンから聞いたことがあるような気がした。
「まさか、隊長の生まれって、ノルマンテ大公家……?」
ノルマンテ大公。
海人は思い出した。
それはこの国で、王族の次に権威と権力を兼ね備えた大貴族。貴族の中でも別格の存在らしい。
その家の生まれということは、ノルマンテ大公の実の息子ということになる。
嘘だと言ってくれと言わんばかりのシモンに、イリアスはあっさり認めた。
「あまり生家のことは出したくなかったんだがな。あの手の輩には、ああでも言わんと話が進まん。使えるものは使わんとな」
海人はイリアスが大公の子どもと言われても、ぴんと来ていなかったが、シモンは震えていた。
「俺、今まで、何て態度を……」
そこで言葉を失った。
シモンが固まってしまったの見て、イリアスはため息を吐いた。
「こうなるだろうとわかっていたから、素性は隠していたんだ」
イリアスはシモンの頭をぐしゃぐしゃとかき回した。
「どこの生まれだろうと、私は私だ。何も変わることはない」
今まで通りでかまわない、とイリアスは言った。
シモンは愕然としながらも、気持ちの整理をするかのように、両手で顔を覆っていた。
海人はそんなシモンを横目に見つつ、枢密院長官がどういう立場なのか、イリアスに尋ねた。
枢密院長官はこの国ではそれなりの政治的権力を持っているらしい。
ルテアニア王国で絶対的権力を持っているのは王族ではあるが、政治の面では三つの院で構成される、議会制度をとっていた。
貴族の意見である貴族院、魔法分野を受け持つ魔法院、そして枢密院は政治を動かす実務部隊であり、庶民で構成されている。
政治権力を持っている貴族院の貴族たちと強い繋がりを持つ枢密院議員たちは、庶民とはいえ地方貴族たちよりも権力を持っていた。そのため、しばしば辺境の貴族を下に見る傾向がある。ルテアニア王国の四つの領を治める領主よりも、中央権力の方が地位は高い。
ベイルは枢密院長官という立場だ。貴族院の者たちが後ろ盾になっているという驕りがあるのだとイリアスは言った。
海人とイリアスが話しをしていると、ベイルが戻ってきた。
「宰相がお会いになる。来られよ」
憮然とした物言いだったが、不遜な態度は消えていた。イリアスの脅しが効いたらしい。
ベイルに連れられ、赤い絨毯の敷かれた広い石造りの王宮内を歩く。
いま来た道を一人では戻れそうにないなと海人が思った時、応接間と思しき一室の前で止まった。
「中にいらっしゃる」
それだけ言って、ベイルは大股で去っていった。
部屋の外には近衛兵が立っている。イリアスがシモンを一瞥した。
「シモンはここで待て」
海人はイリアスを見上げ、シモンを振り返った。
ここまで一緒に来たのに、同席を許さないとは。
シモンは気にするなと言うように笑って、近衛兵と同じように壁を背にして立った。
イリアスが扉を叩く。
「イリアス=ウィル=サラディールです」
中から、入れ、という声が聞こえた。近衛兵が扉を開けてくれる。
「失礼いたします」
イリアスが敬語を使うほどの相手と知り、海人は緊張した。
海人は成り行きを見守っていたが、シモンは顔を強張らせてイリアスをゆっくりと見た。
「隊長……。聞き間違いじゃなければ、あの人、いま、大公家って言いました?」
海人はその言葉をグレンから聞いたことがあるような気がした。
「まさか、隊長の生まれって、ノルマンテ大公家……?」
ノルマンテ大公。
海人は思い出した。
それはこの国で、王族の次に権威と権力を兼ね備えた大貴族。貴族の中でも別格の存在らしい。
その家の生まれということは、ノルマンテ大公の実の息子ということになる。
嘘だと言ってくれと言わんばかりのシモンに、イリアスはあっさり認めた。
「あまり生家のことは出したくなかったんだがな。あの手の輩には、ああでも言わんと話が進まん。使えるものは使わんとな」
海人はイリアスが大公の子どもと言われても、ぴんと来ていなかったが、シモンは震えていた。
「俺、今まで、何て態度を……」
そこで言葉を失った。
シモンが固まってしまったの見て、イリアスはため息を吐いた。
「こうなるだろうとわかっていたから、素性は隠していたんだ」
イリアスはシモンの頭をぐしゃぐしゃとかき回した。
「どこの生まれだろうと、私は私だ。何も変わることはない」
今まで通りでかまわない、とイリアスは言った。
シモンは愕然としながらも、気持ちの整理をするかのように、両手で顔を覆っていた。
海人はそんなシモンを横目に見つつ、枢密院長官がどういう立場なのか、イリアスに尋ねた。
枢密院長官はこの国ではそれなりの政治的権力を持っているらしい。
ルテアニア王国で絶対的権力を持っているのは王族ではあるが、政治の面では三つの院で構成される、議会制度をとっていた。
貴族の意見である貴族院、魔法分野を受け持つ魔法院、そして枢密院は政治を動かす実務部隊であり、庶民で構成されている。
政治権力を持っている貴族院の貴族たちと強い繋がりを持つ枢密院議員たちは、庶民とはいえ地方貴族たちよりも権力を持っていた。そのため、しばしば辺境の貴族を下に見る傾向がある。ルテアニア王国の四つの領を治める領主よりも、中央権力の方が地位は高い。
ベイルは枢密院長官という立場だ。貴族院の者たちが後ろ盾になっているという驕りがあるのだとイリアスは言った。
海人とイリアスが話しをしていると、ベイルが戻ってきた。
「宰相がお会いになる。来られよ」
憮然とした物言いだったが、不遜な態度は消えていた。イリアスの脅しが効いたらしい。
ベイルに連れられ、赤い絨毯の敷かれた広い石造りの王宮内を歩く。
いま来た道を一人では戻れそうにないなと海人が思った時、応接間と思しき一室の前で止まった。
「中にいらっしゃる」
それだけ言って、ベイルは大股で去っていった。
部屋の外には近衛兵が立っている。イリアスがシモンを一瞥した。
「シモンはここで待て」
海人はイリアスを見上げ、シモンを振り返った。
ここまで一緒に来たのに、同席を許さないとは。
シモンは気にするなと言うように笑って、近衛兵と同じように壁を背にして立った。
イリアスが扉を叩く。
「イリアス=ウィル=サラディールです」
中から、入れ、という声が聞こえた。近衛兵が扉を開けてくれる。
「失礼いたします」
イリアスが敬語を使うほどの相手と知り、海人は緊張した。
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