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第4章 いにしえの因果④『王太子』
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中に入ると、そこには二人の人物がいた。
一人は濃い茶の髪色に白髪が混ざった長身の壮年男性。
そしてもう一人は、くすんだ金色の髪をした若い男だった。
若い男は声を弾ませて言った。
「イリアス、久しいな。おまえが来るというので、宰相殿に頼んで入れてもらった」
破顔した若い男にイリアスは深々と一礼をした。
「ご無沙汰しております。殿下」
海人は驚いた。
殿下ということは、王族ということか。
海人は思わぬ大物の登場に、身が固まった。
まさか王族がいるとは思わなかった。ベイルが部屋に来たとき、宰相が会うとは言ったが、もうひとりいるなどとは言っていない。
教えなかったのはイリアスにやり込まれた腹いせに違いないと思った。しかし、イリアスは王族が中にいることに気がついていたようだった。
殿下と呼ばれた彼は、イリアスに会えてうれしそうである。
「サラディール伯は息災か」
「はい、殿下にくれぐれもよろしくと申しておりました」
イリアスは恭しく答えた。殿下はうなずき、海人を見た。
「紹介してくれるか」
イリアスは後ろにいた海人を隣に立たせた。
「彼の名はフジワラカイトです」
海人は背筋を伸ばした。
「カイト、この御方は我が国の第一王位継承者、エドワード=フォン=ルテアーニ王太子殿下だ」
海人はさらに目を丸くした。
ただの王族ではない。次期国王だった。王太子はにこやかに握手を求めてきた。
「よく来てくれた」
その手を恐る恐る握りながら、藤原海人です、と頭を下げた。
次に宰相を紹介された。この国の政治を司る人物で、庶民出身ではあるが、貴族を黙らせるほど有能で切れ者だということは、待合室で聞いていた。
王太子はソファに腰掛け、二人に座るように手で示した。
「イリアスがノルマンテ大公の子だということは聞いているか?」
王太子に問われ、海人は、はい、と答えた。知ったのはついさきほどではあるが。
海人はちらっとイリアスを見たが、澄ました顔をしている。
大公の子息は王族の子どもたちの遊び相手として、王宮を自由に出入りすることを許されているらしい。
イリアスがサラディール伯爵の養子にいくまで、よく遊んでいたのだと王太子は言った。シモンが知ったら、また頭を抱えるだろう。
イリアスとの関係を教えてくれたあと、王太子は幼馴染みに目を向けた。
「四か月前に現れたというが、どういう状況だったんだ」
王太子が尋ねると、イリアスは海人が現れた様子を説明した。
海人がこの話を聞くのは二度目である。
魔獣の活動状況を確認しようとシモンとルンダの森に入ったとき、突如、人の気配を感じた。それが上空からだったので、イリアスは驚いたという。
馬を止め、気配がした宙の方へ目を向けたとき、両膝を抱くように丸まった人が浮かび出た。ちょうどイリアスの上だったので、受け止められたらしい。
驚いたのはイリアスよりも、急に二人分の重さが加わった馬の方だったと、シモンが笑っていた。
海人が空中から落ちたというのに、怪我をしていなかったのは、イリアスが抱き止めてくれたおかげだった。
王太子は、ふむ、とうなずいた。
「ディーテと同じだな。場所が違うくらいか」
アフロディーテのことを、王太子は親しげに『ディーテ』と言った。
「彼にこの話は?」
「しておりません」
「言葉足らずは相変わらずか」
王太子は呆れた顔をし、アフロディーテが現れたときのことを話してくれた。
一人は濃い茶の髪色に白髪が混ざった長身の壮年男性。
そしてもう一人は、くすんだ金色の髪をした若い男だった。
若い男は声を弾ませて言った。
「イリアス、久しいな。おまえが来るというので、宰相殿に頼んで入れてもらった」
破顔した若い男にイリアスは深々と一礼をした。
「ご無沙汰しております。殿下」
海人は驚いた。
殿下ということは、王族ということか。
海人は思わぬ大物の登場に、身が固まった。
まさか王族がいるとは思わなかった。ベイルが部屋に来たとき、宰相が会うとは言ったが、もうひとりいるなどとは言っていない。
教えなかったのはイリアスにやり込まれた腹いせに違いないと思った。しかし、イリアスは王族が中にいることに気がついていたようだった。
殿下と呼ばれた彼は、イリアスに会えてうれしそうである。
「サラディール伯は息災か」
「はい、殿下にくれぐれもよろしくと申しておりました」
イリアスは恭しく答えた。殿下はうなずき、海人を見た。
「紹介してくれるか」
イリアスは後ろにいた海人を隣に立たせた。
「彼の名はフジワラカイトです」
海人は背筋を伸ばした。
「カイト、この御方は我が国の第一王位継承者、エドワード=フォン=ルテアーニ王太子殿下だ」
海人はさらに目を丸くした。
ただの王族ではない。次期国王だった。王太子はにこやかに握手を求めてきた。
「よく来てくれた」
その手を恐る恐る握りながら、藤原海人です、と頭を下げた。
次に宰相を紹介された。この国の政治を司る人物で、庶民出身ではあるが、貴族を黙らせるほど有能で切れ者だということは、待合室で聞いていた。
王太子はソファに腰掛け、二人に座るように手で示した。
「イリアスがノルマンテ大公の子だということは聞いているか?」
王太子に問われ、海人は、はい、と答えた。知ったのはついさきほどではあるが。
海人はちらっとイリアスを見たが、澄ました顔をしている。
大公の子息は王族の子どもたちの遊び相手として、王宮を自由に出入りすることを許されているらしい。
イリアスがサラディール伯爵の養子にいくまで、よく遊んでいたのだと王太子は言った。シモンが知ったら、また頭を抱えるだろう。
イリアスとの関係を教えてくれたあと、王太子は幼馴染みに目を向けた。
「四か月前に現れたというが、どういう状況だったんだ」
王太子が尋ねると、イリアスは海人が現れた様子を説明した。
海人がこの話を聞くのは二度目である。
魔獣の活動状況を確認しようとシモンとルンダの森に入ったとき、突如、人の気配を感じた。それが上空からだったので、イリアスは驚いたという。
馬を止め、気配がした宙の方へ目を向けたとき、両膝を抱くように丸まった人が浮かび出た。ちょうどイリアスの上だったので、受け止められたらしい。
驚いたのはイリアスよりも、急に二人分の重さが加わった馬の方だったと、シモンが笑っていた。
海人が空中から落ちたというのに、怪我をしていなかったのは、イリアスが抱き止めてくれたおかげだった。
王太子は、ふむ、とうなずいた。
「ディーテと同じだな。場所が違うくらいか」
アフロディーテのことを、王太子は親しげに『ディーテ』と言った。
「彼にこの話は?」
「しておりません」
「言葉足らずは相変わらずか」
王太子は呆れた顔をし、アフロディーテが現れたときのことを話してくれた。
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