異世界美貌の騎士様は、キスで魔力をもっていく

琉希

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第4章 いにしえの因果⑤『質問』

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 十五年前、アフロディーテもまた、王宮の庭に落ちてきた。あのときは中庭で貴族を呼んだお茶会が開かれていた。

 同じように、両膝を抱くような形で現れたらしいが、受け止める者はいなかった。食事が並べられたテーブルの上に叩きつけられていたという。

 そんな衝撃を受けているにも関わらず、アフロディーテは目を覚まさなかったというから不思議だ。
 幸い怪我はなかったようだが、目撃者が何人もいて、大騒ぎになったという。

 王太子は当時、まだ十歳だったが克明に覚えていると言った。
 ちなみにイリアスは六歳で、偶然にもその場にいたらしい。
 
 懐かしそうに目を細めて話していた王太子は、ふと真顔になった。

「君は自分がどういう力を持っているか、知っているか」
「はい。魔力の付与ができます。でも、力を与えられるのは、第五の霊脈が視える人だけだと聞きました」

 海人は的確に答えた。イリアスからは質問には好きに答えていいと言われていた。
 最も相手は王太子ではなく、前提としていたのは宰相であった。その宰相は座らずに、王太子の後ろに立って黙っていた。
 
 王太子からの質問は続いた。

「我が国に来て、今まで何をしていた?」

 海人は少し考えて、日常生活を答えた。
 日中は辺境警備隊の駐屯地に出入りしていて、屋敷に帰れば執事のグレンからこの国のことを教えてもらっていた。歴史、地理、生活様式など様々なことだ。

 特に駐屯地での話は熱が入った。馬術を習っていて、馬から落ちたこと。心配してくれるかと思いきや、シモンにこっぴどく叱られたこと。
 そのシモンも模擬戦ではイリアスに瞬殺されたことなど、話題は尽きなかった。
 楽しく話した海人に、王太子はじっくりと耳を傾けて、時折うなずいてくれた。
 
 一通り話し終わると、王太子はにこやかに言った。

「リンデでは良い生活を送っているようだ」
「はい。毎日楽しいです」
「危険なことはなかったか」

 海人は一瞬、言葉に詰まった。だが、王太子の目を見てはっきり言った。

「ありません」

 拉致されかけたことは隠した。これは言ってはならない気がしたからだ。怪しまれなかっただろうかと、内心どきどきした。

 宰相は黙って見ているだけで、王太子は満足そうに、それはよかった、と言った。海人はホッとした。

「ディーテに会いたいということだったな」

 王太子は海人を見ながら言った。

 来た、と思った。本題である。海人は居住まいを正した。

「今夜はささやかだが、君の歓迎会をしよう。ディーテとはそこで会うといい」

 王太子は目元を緩めて言った。
 何か訊かれるだろうと構えていた海人だったが、拍子抜けする。

「宰相殿もそれでいいかな」

 王太子が振り返ると、宰相は、かしこまりました、と返事をした。
 海人は今夜にもうひとりの異世界人に会えることになり、胸を躍らせた。
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