異世界美貌の騎士様は、キスで魔力をもっていく

琉希

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第4章 いにしえの因果⑫『手が早い⁉』

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 ふと、横から強い視線を感じ、海人はイリアスをちらりと見た。灰色の瞳がじっと見ている。

 海人は目をそらした。
 心の中の動揺を見透かされた気がして、居たたまれない。

 膝に置いた手を丸めたとき、佐井賀が言った。

「海人くんは、僕たちに特別な能力があるのは知ってる?」

 海人は顔を上げた。

「あ、はい。知ってます。魔力を付与できるんですよね」

 うん、とうなずき、佐井賀は海人を見た。

「やり方は聞いた?」

 海人は、うっ、と詰まった。思わず目が泳ぐ。

「聞いたというか……この前、イリアスに魔力をあげたんで……」
「えっ⁉」

 佐井賀は大きく目を見開いた。

「なに、もう、やっちゃったの⁉」

 イリアスは佐井賀からわずかに視線をそらした。

「イル、手ぇ早すぎ!」

 わああああ、と海人は心の中で叫んだ。顔の温度が急上昇する。

(言い方! その言い方はやめてほしい!)

 海人が心中穏やかでない中、佐井賀はソファに体をうずめて、腕を組んだ。

「ちょっと、いくらなんでも、もう吸っちゃうなんて思わなかったよ」

 佐井賀の非難がましい目に、イリアスはムッとしたように言い返した。

「緊急事態だったんだ。カイトには申し訳ないと思っている」

 佐井賀が同情の目で海人を見る。

「海人くん。いきなりあんなことされて、びっくりしたでしょ」

 あんなこと、という言葉に海人はもごもごしながら、イリアスの横顔をちらっと見た。すると、それまで無表情だったイリアスが明らかに不機嫌な表情を浮かべた。

「あなただって、人のことは言えないだろう」

 ぴくっと佐井賀は眉を動かした。海人は、え、と思った。

「なに。あのときのこと、蒸し返す気?」

 佐井賀は面白くなさそうに、飲みかけのグラスを触った。

「あのときはしょうがないでしょ。ほんとにどうしようもなかったんだから」
「だからそれと同じだと言っているんだ」

 二人が睨み合った。風もないのに燭台の炎が揺れる。
 険悪な雰囲気になり、海人は慌てた。

「あの、おれのことはいいんです。イリアスのおかげで、怪我人もでなかったし……」

 海人は一度言葉を切り、思い切って尋ねた。

「昔、何があったんですか? 佐井賀さんもイリアスに力をあげたことがあるんですよね?」

 海人の問いに、イリアスと佐井賀が押し黙った。

 沈黙が流れる。

 二人はお互いから顔をそらしていた。
 海人は二人の顔を交互に見て、うつむいた。

 教えてもらえないのか、と消沈しそうになったとき、佐井賀が口を開いた。

「イルから話してあげたら?」

 イリアスは黙考し、わかった、と言った。

 そして語ってくれた。
 七年前に起こった事件のことを。
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