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終 章 巡る想い②『寝起き』
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離れていても気配がわかるというのは、こういうときに便利である。
海人は王宮の離れに向かう廊下でユリウスを捕まえた。
前回は半日もせず起きてきたのに、起きる様子のないイリアスが心配だと訴えると、
「結界とはまた力の使い方が違うからな。あれだけの魔法を組成して、魔力を一気に放出したんだ。神経もすり減っただろう。心配せずとも、魔力と精神が回復すれば起きる」
と、別段気にしてはいなかった。
とはいえ、ユリウスは佐井賀から力をもらっても眠ることもなく、変わりがない。それはなぜかと、ついでに訊いてみた。するとユリウスはにやりと笑った。
「慣れているからな。私も昔はよく眠っていたよ。イリアスも慣れれば眠らなくなるだろう」
慣れ、と言われ、海人は自分の唇を軽くつまんだ。無意識の動作をユリウスがおもしろそうに見ていた。
ハッとして、恥ずかしくなる。
ユリウスは口元を緩めて、海人の肩に手を置いた。
「弟をよろしくな」
そう言って、佐井賀の部屋の方へ歩いて行った。
遠ざかる後ろ姿を見ながら、海人はよろしくと言われても、と複雑な気分になった。
自分は王宮で暮らすことになったのだ。別れは近い。
海人は足元に目を落としたが、すぐに顔を上げた。イリアスの眠る部屋に足を向けた。
前は不貞腐れて部屋にこもって泣いていただけだった。
でも今なら笑って見送れる。
イリアスは海人を見捨てたわけではない。
竜の飛来に気づき、戻ってきてくれたときは泣きそうなくらい嬉しかった。
いつかまた会える。そう思えた。
四日経ったら、イリアスが目を覚ました。
海人はそのとき、イリアスの部屋で文字の練習をしていた。
佐井賀が昔勉強していたという単語帳を譲り受け、青いガラスペンでミミズ字を書いていた。
イリアスは言葉もなく、急に半身を起こしたので驚いた。
海人はうれしさと逸る気持ちを抑えながら、
「具合はどう?」
と訊いたが反応はなく、ぼんやりとしていた。
まだ寝ぼけてるのかなと思い、海人はベッドに腰掛けた。
「イリアス?」
呼びかけるとイリアスは灰色の瞳でぼうっと海人を見ていたが、不意に覚醒した。
「……カイト?」
「うん」
海人が笑みを浮かべてうなずくと、突然腕を取られ、引き寄せられた。
イリアスの胸に顔が埋まり、ギュッと抱き締められる。
海人の胸が大きく跳ねた。
ばくばくする鼓動はイリアスにも聞こえているはずで、顔が火照った。体温が一度上がった気がした。
「イ、イリアス……?」
腕の中で呼ぶと、さらに抱く力が強くなった。
海人はどきどきしながらイリアスの背に手を回そうとした。すると、パッと体を離された。
え、と思ったとき、部屋の扉が叩かれた。
海人が中にいることを知っているのだろう、海人に入室の許可を求めてきた。
イリアスがうなずくのを見て、海人は立ち上がった。赤くなった頬を軽く叩きながら、扉を開ける。
昼食はどうするのか訊きに来た使用人が、目覚めたイリアスを見て、騒ぎだした。
海人は王宮の離れに向かう廊下でユリウスを捕まえた。
前回は半日もせず起きてきたのに、起きる様子のないイリアスが心配だと訴えると、
「結界とはまた力の使い方が違うからな。あれだけの魔法を組成して、魔力を一気に放出したんだ。神経もすり減っただろう。心配せずとも、魔力と精神が回復すれば起きる」
と、別段気にしてはいなかった。
とはいえ、ユリウスは佐井賀から力をもらっても眠ることもなく、変わりがない。それはなぜかと、ついでに訊いてみた。するとユリウスはにやりと笑った。
「慣れているからな。私も昔はよく眠っていたよ。イリアスも慣れれば眠らなくなるだろう」
慣れ、と言われ、海人は自分の唇を軽くつまんだ。無意識の動作をユリウスがおもしろそうに見ていた。
ハッとして、恥ずかしくなる。
ユリウスは口元を緩めて、海人の肩に手を置いた。
「弟をよろしくな」
そう言って、佐井賀の部屋の方へ歩いて行った。
遠ざかる後ろ姿を見ながら、海人はよろしくと言われても、と複雑な気分になった。
自分は王宮で暮らすことになったのだ。別れは近い。
海人は足元に目を落としたが、すぐに顔を上げた。イリアスの眠る部屋に足を向けた。
前は不貞腐れて部屋にこもって泣いていただけだった。
でも今なら笑って見送れる。
イリアスは海人を見捨てたわけではない。
竜の飛来に気づき、戻ってきてくれたときは泣きそうなくらい嬉しかった。
いつかまた会える。そう思えた。
四日経ったら、イリアスが目を覚ました。
海人はそのとき、イリアスの部屋で文字の練習をしていた。
佐井賀が昔勉強していたという単語帳を譲り受け、青いガラスペンでミミズ字を書いていた。
イリアスは言葉もなく、急に半身を起こしたので驚いた。
海人はうれしさと逸る気持ちを抑えながら、
「具合はどう?」
と訊いたが反応はなく、ぼんやりとしていた。
まだ寝ぼけてるのかなと思い、海人はベッドに腰掛けた。
「イリアス?」
呼びかけるとイリアスは灰色の瞳でぼうっと海人を見ていたが、不意に覚醒した。
「……カイト?」
「うん」
海人が笑みを浮かべてうなずくと、突然腕を取られ、引き寄せられた。
イリアスの胸に顔が埋まり、ギュッと抱き締められる。
海人の胸が大きく跳ねた。
ばくばくする鼓動はイリアスにも聞こえているはずで、顔が火照った。体温が一度上がった気がした。
「イ、イリアス……?」
腕の中で呼ぶと、さらに抱く力が強くなった。
海人はどきどきしながらイリアスの背に手を回そうとした。すると、パッと体を離された。
え、と思ったとき、部屋の扉が叩かれた。
海人が中にいることを知っているのだろう、海人に入室の許可を求めてきた。
イリアスがうなずくのを見て、海人は立ち上がった。赤くなった頬を軽く叩きながら、扉を開ける。
昼食はどうするのか訊きに来た使用人が、目覚めたイリアスを見て、騒ぎだした。
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