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終 章 巡る想い③『撤回』
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イリアスが起きたことが王宮に知れ渡ると、翌日、早速国王との謁見があった。
跳躍者の存在を知る今回の関係者が一堂に会している。
海人は玉座の左側の列に佐井賀と共に並んでいた。右列には王太子が先頭で、その隣にユリウス、イリアスという順に並んでいる。枢密院長官は左列にいて、王太子の正面だった。
国王は玉座に着くと開口一番、イリアスを呼んだ。
「イリアス、ご苦労だった。ユリウスと共に王都を守ってくれたこと、心から礼を言う」
竜の炎の第一波が王宮を襲ったとき、王族はすぐに王宮の地下へと避難し、みな無事だった。
イリアスは片膝をつき、恭しく頭を下げた。
「何か礼をしたいが」
イリアスは顔を伏せたまま言った。
「それには及びません。私はこの一件でノルマンテ家の王への忠誠を示せたのであれば、充分にございます」
滑らかな口上に、苦々しそうに顔を歪めた者がいたのを海人は見た。
隣にいた佐井賀が笑いを含んで囁いた。
「イルってば、ちゃっかりやり返してるよ」
よっぽど悔しかったんだろうね、と言う佐井賀に海人は小さく笑った。
イリアスの言に、国王が口端を上げる。
「無欲なことだな」
さてどうしようか、とでも言うような思案顔を国王がしたとき、王太子が声を上げた。
「恐れながら、陛下。申し上げたいことがございます」
「うん? なんだ」
王太子は一歩前に出た。
「此度の竜飛来の件、跳躍者が二人揃っていることが原因と思われます」
王太子の朗々とした声に、広間に緊張が走った。海人は拳を握り、佐井賀の表情が曇る。
「この危険性はイリアスが前もって指摘しておりましたが、私が取るに足らないことだと軽視しました。その結果がこれです」
宰相が何か言いたげに身動きしたが、口には出さなかった。
「つきましては、跳躍者のフジワラカイトは王宮ではなく、辺境で暮らしてもらうのがよろしいかと」
王太子の提言に海人は大きく息を吸った。王太子は続けた。
「預け先の適任者はイリアスでしょう。彼にリンデで保護してもらうのが一番かと存じます」
一見すれば、王宮にとって厄介者を押し付けるような言い分だった。だが海人にとってはこれ以上ない申し出だった。
国王は上顎に手をやった。
「宰相はどう思う」
「私も異論はありません。跳躍者が他国に狙われる可能性もありますが、それはリンデ辺境警備隊にしっかりと護衛してもらいましょう。再び竜が来られる方が困ります」
ふむ、と国王がうなずいた。
「異議のある者はいるか」
張りのある声が広間に響く。海人は固唾を呑んだ。
どこからも声は上がらない。国王は一同を見回し、イリアスに目をやった。
「では、イリアス。それでもよいか」
「はい。お任せください」
海人は信じられない思いだった。震えるように佐井賀を見た。
佐井賀は満面の笑みで、よかったね、と言ってくれた。
跳躍者の存在を知る今回の関係者が一堂に会している。
海人は玉座の左側の列に佐井賀と共に並んでいた。右列には王太子が先頭で、その隣にユリウス、イリアスという順に並んでいる。枢密院長官は左列にいて、王太子の正面だった。
国王は玉座に着くと開口一番、イリアスを呼んだ。
「イリアス、ご苦労だった。ユリウスと共に王都を守ってくれたこと、心から礼を言う」
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イリアスは片膝をつき、恭しく頭を下げた。
「何か礼をしたいが」
イリアスは顔を伏せたまま言った。
「それには及びません。私はこの一件でノルマンテ家の王への忠誠を示せたのであれば、充分にございます」
滑らかな口上に、苦々しそうに顔を歪めた者がいたのを海人は見た。
隣にいた佐井賀が笑いを含んで囁いた。
「イルってば、ちゃっかりやり返してるよ」
よっぽど悔しかったんだろうね、と言う佐井賀に海人は小さく笑った。
イリアスの言に、国王が口端を上げる。
「無欲なことだな」
さてどうしようか、とでも言うような思案顔を国王がしたとき、王太子が声を上げた。
「恐れながら、陛下。申し上げたいことがございます」
「うん? なんだ」
王太子は一歩前に出た。
「此度の竜飛来の件、跳躍者が二人揃っていることが原因と思われます」
王太子の朗々とした声に、広間に緊張が走った。海人は拳を握り、佐井賀の表情が曇る。
「この危険性はイリアスが前もって指摘しておりましたが、私が取るに足らないことだと軽視しました。その結果がこれです」
宰相が何か言いたげに身動きしたが、口には出さなかった。
「つきましては、跳躍者のフジワラカイトは王宮ではなく、辺境で暮らしてもらうのがよろしいかと」
王太子の提言に海人は大きく息を吸った。王太子は続けた。
「預け先の適任者はイリアスでしょう。彼にリンデで保護してもらうのが一番かと存じます」
一見すれば、王宮にとって厄介者を押し付けるような言い分だった。だが海人にとってはこれ以上ない申し出だった。
国王は上顎に手をやった。
「宰相はどう思う」
「私も異論はありません。跳躍者が他国に狙われる可能性もありますが、それはリンデ辺境警備隊にしっかりと護衛してもらいましょう。再び竜が来られる方が困ります」
ふむ、と国王がうなずいた。
「異議のある者はいるか」
張りのある声が広間に響く。海人は固唾を呑んだ。
どこからも声は上がらない。国王は一同を見回し、イリアスに目をやった。
「では、イリアス。それでもよいか」
「はい。お任せください」
海人は信じられない思いだった。震えるように佐井賀を見た。
佐井賀は満面の笑みで、よかったね、と言ってくれた。
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