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終 章 巡る想い⑦『手紙』
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王都からリンデの街に帰ってきて一か月半が過ぎた。季節は秋になっていた。
海人は屋敷の客室を使っていたが、正式な部屋を与えられた。イリアスの部屋の並びだ。
今まで使っていた部屋より広かったので、前の部屋でいいと言ったが、客人が来たときに困るとのことで、部屋を移った。
海人は以前と変わらない生活を送っているが、ひとりにならないということは徹底している。
もうあんな思いは二度としたくなかった。
戻ってきてすぐにイリアスに辺境警備隊に入隊したいと言ったら、身を守るために剣を教わりたいだけなら、駄目だと却下された。
辺境警備隊は命を懸けて人を守らねばならない。その覚悟ができたらもう一度言えと言われた。
護身のための剣術はダグラスが教えてくれている。最初はイリアスが教えてくれていたのだが、駐屯地で打ち合いをしていたら、ダグラスが口を挟むようになった。
「隊長は人に教えるのは下手ですな」と言い、自分が代わると言い出した。
自ら言うだけあって、ダグラスの教え方はうまかった。しかもよく褒めてくれるので、やる気も出る。正直、イリアスはあまり褒めてくれなかった。
最近になって知ったが、イリアスもダグラスに剣を教わったそうだ。剣の腕だけなら隊長より副官の方が上らしい。イリアスが自分で言っていた。
乗馬の訓練もしつつ、厨房では料理の手伝いをしながら、作り方も教わるようになった。屋敷ではグレンに勉強を教えてもらう。
忙しない日常だったが、休みの日にはイリアスの部屋で過ごすことが多くなった。今も庭で剣術の相手をしてもらい、汗を流した後に彼の部屋に来ていた。
イリアスは本を読んでいて、海人は机を借りて、読み書きをしていた。
そこに二人分の紅茶を持ってグレンが部屋にやってきた。
「カイト様。お手紙が届いておりますよ」
「手紙? おれに?」
グレンがにこにこと手紙をくれる。宛名はルテアニア語で海人の名前が書かれていた。
差出人を見るとルテアニア語で書かれた名前の下に、サインのように漢字で名前が書かれていた。
「佐井賀さんだ!」
海人は急いで封を切った。
「日本語で書いてある‼」
海人はうれしくて、手紙を広げてイリアスに見せた。
誰も読むことのできない、使われることのない故郷の文字。しかし佐井賀とだけは通じ合える。佐井賀も同じ思いに違いない。
久々に日本語を書くので、漢字が思い出せないと冒頭にあった。ひらがなばかりでごめん、と苦笑がにじみ出ている文章だ。
『元気?』から始まり、内容はとりとめのない、佐井賀の日常のことだったが、読みながら海人は次第に困惑していった。
「なんか……ユリウスさんへの愚痴が多い……」
日本語であれば誰に見られてもわからないからと、ここぞとばかりに日々の鬱憤が書き連ねられていた。
海人のつぶやきに、イリアスはため息交じりに言った。
「昔からそうだ。放っておけ」
イリアスは二人の喧嘩の仲裁に何度も立たされていたという。
「あれで仲がいいのだから、まともに取り合う必要はない」
と、冷めている。そうは言われても、返事は書きたい。
海人はどうしよう、と思いながら、追伸部分を読んだ途端―
ぐしゃっと手紙を握った。
「どうした?」
イリアスが顔を上げたが、海人はなんでもない、とふるふる首を振った。
海人の反応を見て、軽く眉を寄せたが、追及せずに手元の本に目を落とした。
海人は潰した手紙をそっと広げる。追伸部分にはこう書かれていた。
『竜の瞳はセックスしてるときにも見れるよ。体をつなげると目が変わるから。じゃ、仲良くね!』
海人は机に突っ伏した。
(なんてこと書くんだ、佐井賀さん! いくら他の人には読めないからって……!)
そこで海人は、はたと気づいた。
(佐井賀さんとユリウスさんって、そういう関係だったのか)
イリアスは知っているのだろうか。知っていそうな気がする。
椅子に座っている美貌の彼を、海人はこっそりのぞき見た。
本をめくる形のいい指を見て、赤くなる。
(まだ、竜の瞳は見れてないけど……でも、そのうち)
海人は潰してしまった手紙を伸ばし、封筒にしまった。
秋の陽射しが降り注ぐ窓の外から、甲高い鳥の鳴き声が響き渡った。
ー 本編・完 -
*****
最後まで閲覧いただき、ありがとうございました!
本編はここで終了ですが、次回から後日談を公開します。
リンデでのイリアスと海人の恋愛日常編です!
本編でのラブ要素少なかったので、
多めでがんばります♡♡
引続きお読みいただけるとうれしいです(´▽`*)
海人は屋敷の客室を使っていたが、正式な部屋を与えられた。イリアスの部屋の並びだ。
今まで使っていた部屋より広かったので、前の部屋でいいと言ったが、客人が来たときに困るとのことで、部屋を移った。
海人は以前と変わらない生活を送っているが、ひとりにならないということは徹底している。
もうあんな思いは二度としたくなかった。
戻ってきてすぐにイリアスに辺境警備隊に入隊したいと言ったら、身を守るために剣を教わりたいだけなら、駄目だと却下された。
辺境警備隊は命を懸けて人を守らねばならない。その覚悟ができたらもう一度言えと言われた。
護身のための剣術はダグラスが教えてくれている。最初はイリアスが教えてくれていたのだが、駐屯地で打ち合いをしていたら、ダグラスが口を挟むようになった。
「隊長は人に教えるのは下手ですな」と言い、自分が代わると言い出した。
自ら言うだけあって、ダグラスの教え方はうまかった。しかもよく褒めてくれるので、やる気も出る。正直、イリアスはあまり褒めてくれなかった。
最近になって知ったが、イリアスもダグラスに剣を教わったそうだ。剣の腕だけなら隊長より副官の方が上らしい。イリアスが自分で言っていた。
乗馬の訓練もしつつ、厨房では料理の手伝いをしながら、作り方も教わるようになった。屋敷ではグレンに勉強を教えてもらう。
忙しない日常だったが、休みの日にはイリアスの部屋で過ごすことが多くなった。今も庭で剣術の相手をしてもらい、汗を流した後に彼の部屋に来ていた。
イリアスは本を読んでいて、海人は机を借りて、読み書きをしていた。
そこに二人分の紅茶を持ってグレンが部屋にやってきた。
「カイト様。お手紙が届いておりますよ」
「手紙? おれに?」
グレンがにこにこと手紙をくれる。宛名はルテアニア語で海人の名前が書かれていた。
差出人を見るとルテアニア語で書かれた名前の下に、サインのように漢字で名前が書かれていた。
「佐井賀さんだ!」
海人は急いで封を切った。
「日本語で書いてある‼」
海人はうれしくて、手紙を広げてイリアスに見せた。
誰も読むことのできない、使われることのない故郷の文字。しかし佐井賀とだけは通じ合える。佐井賀も同じ思いに違いない。
久々に日本語を書くので、漢字が思い出せないと冒頭にあった。ひらがなばかりでごめん、と苦笑がにじみ出ている文章だ。
『元気?』から始まり、内容はとりとめのない、佐井賀の日常のことだったが、読みながら海人は次第に困惑していった。
「なんか……ユリウスさんへの愚痴が多い……」
日本語であれば誰に見られてもわからないからと、ここぞとばかりに日々の鬱憤が書き連ねられていた。
海人のつぶやきに、イリアスはため息交じりに言った。
「昔からそうだ。放っておけ」
イリアスは二人の喧嘩の仲裁に何度も立たされていたという。
「あれで仲がいいのだから、まともに取り合う必要はない」
と、冷めている。そうは言われても、返事は書きたい。
海人はどうしよう、と思いながら、追伸部分を読んだ途端―
ぐしゃっと手紙を握った。
「どうした?」
イリアスが顔を上げたが、海人はなんでもない、とふるふる首を振った。
海人の反応を見て、軽く眉を寄せたが、追及せずに手元の本に目を落とした。
海人は潰した手紙をそっと広げる。追伸部分にはこう書かれていた。
『竜の瞳はセックスしてるときにも見れるよ。体をつなげると目が変わるから。じゃ、仲良くね!』
海人は机に突っ伏した。
(なんてこと書くんだ、佐井賀さん! いくら他の人には読めないからって……!)
そこで海人は、はたと気づいた。
(佐井賀さんとユリウスさんって、そういう関係だったのか)
イリアスは知っているのだろうか。知っていそうな気がする。
椅子に座っている美貌の彼を、海人はこっそりのぞき見た。
本をめくる形のいい指を見て、赤くなる。
(まだ、竜の瞳は見れてないけど……でも、そのうち)
海人は潰してしまった手紙を伸ばし、封筒にしまった。
秋の陽射しが降り注ぐ窓の外から、甲高い鳥の鳴き声が響き渡った。
ー 本編・完 -
*****
最後まで閲覧いただき、ありがとうございました!
本編はここで終了ですが、次回から後日談を公開します。
リンデでのイリアスと海人の恋愛日常編です!
本編でのラブ要素少なかったので、
多めでがんばります♡♡
引続きお読みいただけるとうれしいです(´▽`*)
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