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第48話
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背後で自動扉が開く音がした。入口を見ると、先程の男性客が店を出て行くところだった。
レイがどうすることもできずにバックヤードのドアを見つめていると、そのドアが開いた。
出て来たのはユタカさんのおじいさんだった。
サキの香りが漏れてくる。おじいさんは特に変わったことはなかったかのように、平然としていた。
おじいさんが言った。
「きみはアルファかい?」
唐突な質問に面食らったが、レイはうなずいた。
おじいさんは、そうか、とつぶやいた。
「泉くんはユタカが車で送るそうだ」
「なら、おれも一緒に……」
おじいさんはレイの言葉を遮った。
「心配なのはわかるがね。孫はベータだから安心しておくれ」
その言葉に胸がズキリとした。
おじいさんに悪気はなかったのだろうが、自分だとサキを襲ってしまうだろうと言われた気がした。
「あの、抑制剤は持ってますから、理性を失ったりはしません」
発情抑制剤は持っている。他のアルファはどうか知らないが、レイは不測の事態に備えて、常に持ち歩いていた。
理解を求めるように言うと、おじいさんは後ろ頭に片手を当てた。
「ああ、すまない。きみが襲うかもしれないという話ではないんだ」
おじいさんは、口元は柔らかかったが、目は真剣な色を浮かべていた。
「あの状態でアルファに近寄られると、身体が抑えられなくなるんだよ。ひどくなるばかりで、泉くんがつらいだけだ」
おじいさんは訳知り顔で言った。
「……本当に厄介な身体だよ」
深い皺は人生の酸いも甘いも経験して刻まれたもののように思えた。
「彼のことは孫に任せておくれ」
でも、と言いかけて、レイは口を閉じた。同じ家に住んでいるから、とは言えなかった。
サキの香りが鼻腔に残っている。レイは下唇を噛んだ。
色香を纏ったあのサキを他人に託さなければならないことが歯がゆかった。
レイは一度視線を落としてから、顔を上げた。
「帰ります」
おじいさんは柔らかい表情でうなずいた。
レイが踵を返そうとしたとき、本を持っていたことに気がついた。
「あ、これください」
『霧の魔法使い』を出すと、おじいさんは目を細めた。
タブレット端末で会計手続きをするおじいさんの手を、見るとはなしに見ていた。本を受け取り、白河紙書店を出る。
イチョウ並木の道には銀杏が転がっている。
熟して落ちた実を踏みながら、レイは苦い思いで駅に向かって歩いた。
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おじいさんは、そうか、とつぶやいた。
「泉くんはユタカが車で送るそうだ」
「なら、おれも一緒に……」
おじいさんはレイの言葉を遮った。
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おじいさんに悪気はなかったのだろうが、自分だとサキを襲ってしまうだろうと言われた気がした。
「あの、抑制剤は持ってますから、理性を失ったりはしません」
発情抑制剤は持っている。他のアルファはどうか知らないが、レイは不測の事態に備えて、常に持ち歩いていた。
理解を求めるように言うと、おじいさんは後ろ頭に片手を当てた。
「ああ、すまない。きみが襲うかもしれないという話ではないんだ」
おじいさんは、口元は柔らかかったが、目は真剣な色を浮かべていた。
「あの状態でアルファに近寄られると、身体が抑えられなくなるんだよ。ひどくなるばかりで、泉くんがつらいだけだ」
おじいさんは訳知り顔で言った。
「……本当に厄介な身体だよ」
深い皺は人生の酸いも甘いも経験して刻まれたもののように思えた。
「彼のことは孫に任せておくれ」
でも、と言いかけて、レイは口を閉じた。同じ家に住んでいるから、とは言えなかった。
サキの香りが鼻腔に残っている。レイは下唇を噛んだ。
色香を纏ったあのサキを他人に託さなければならないことが歯がゆかった。
レイは一度視線を落としてから、顔を上げた。
「帰ります」
おじいさんは柔らかい表情でうなずいた。
レイが踵を返そうとしたとき、本を持っていたことに気がついた。
「あ、これください」
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タブレット端末で会計手続きをするおじいさんの手を、見るとはなしに見ていた。本を受け取り、白河紙書店を出る。
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熟して落ちた実を踏みながら、レイは苦い思いで駅に向かって歩いた。
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