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本編
プロローグ
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夢を、見ている。
広い庭の片隅で、私は、捕まえた爬虫類を手に載せて、男の子とケラケラと笑い合っている。
(昔の……思い出かしら?)
私が知識を披露するたびに、男の子は「すごい!女の子なのに、どうしてそんなに詳しいの!?」と興奮した様子で話しかけてくる。
そう言われるたび、私は調子に乗って、自慢げに知識を披露していく。
(そうだ……小さい頃の私は、虫とか爬虫類の図鑑を読むのが本当に大好きで、道端で見つけるたびに、観察したくて足を止めていたわ……)
きっとこの時も、色んな生き物を見つけて興奮していたのかもしれない。そして、そんな話題で盛り上がるには、男の子なんて、これ以上ないほど最適の相手だったのだろう。
でも、男の子の顔はなぜか、ぼやけてよく見えない。辺りの風景も分からず、鮮明に映るのは手の中の爬虫類だけ。
男の子は、私の手のひらの爬虫類を優しく撫でて、それから私を見て言った。
「君って、かわいいし、虫も爬虫類もめちゃくちゃ詳しいし……本当にすごい!僕、君みたいな子、はじめて!ねえ……僕の、お嫁さんになってよ!」
「え!?いやよ!まだ会ったばっかりなのに。……でも、たくさん仲良くなって、一緒にいたいって思えるようになったら……そしたら、考えてあげる!」
まさかのプロポーズ。なんて積極的な男の子なのだろう。そして私のあしらい方……今の自分より世渡り上手ではないか。
「わかった!僕、頑張る!」
男の子は、そう言うと、幼い私の頬に口付けてきた。
「あは!照れてる!君、ほんとにかわいい!」
過去の記憶を思い出しているのか、それとも、本当に夢なのか。けれど、作り出した夢にしては、あまりにもリアルだった。
そこで、私は目を覚ました。
記憶にない。本当に、ちっとも思い出せない。記憶力に自信がある私が、こうも綺麗に忘れているのだ。昔の記憶などではなく、私が作り出した夢だったのだろうか。
私は、頬に、そっと手を触れる。口付けの感触が残っているようで、なぜか、胸が苦しくなった。
広い庭の片隅で、私は、捕まえた爬虫類を手に載せて、男の子とケラケラと笑い合っている。
(昔の……思い出かしら?)
私が知識を披露するたびに、男の子は「すごい!女の子なのに、どうしてそんなに詳しいの!?」と興奮した様子で話しかけてくる。
そう言われるたび、私は調子に乗って、自慢げに知識を披露していく。
(そうだ……小さい頃の私は、虫とか爬虫類の図鑑を読むのが本当に大好きで、道端で見つけるたびに、観察したくて足を止めていたわ……)
きっとこの時も、色んな生き物を見つけて興奮していたのかもしれない。そして、そんな話題で盛り上がるには、男の子なんて、これ以上ないほど最適の相手だったのだろう。
でも、男の子の顔はなぜか、ぼやけてよく見えない。辺りの風景も分からず、鮮明に映るのは手の中の爬虫類だけ。
男の子は、私の手のひらの爬虫類を優しく撫でて、それから私を見て言った。
「君って、かわいいし、虫も爬虫類もめちゃくちゃ詳しいし……本当にすごい!僕、君みたいな子、はじめて!ねえ……僕の、お嫁さんになってよ!」
「え!?いやよ!まだ会ったばっかりなのに。……でも、たくさん仲良くなって、一緒にいたいって思えるようになったら……そしたら、考えてあげる!」
まさかのプロポーズ。なんて積極的な男の子なのだろう。そして私のあしらい方……今の自分より世渡り上手ではないか。
「わかった!僕、頑張る!」
男の子は、そう言うと、幼い私の頬に口付けてきた。
「あは!照れてる!君、ほんとにかわいい!」
過去の記憶を思い出しているのか、それとも、本当に夢なのか。けれど、作り出した夢にしては、あまりにもリアルだった。
そこで、私は目を覚ました。
記憶にない。本当に、ちっとも思い出せない。記憶力に自信がある私が、こうも綺麗に忘れているのだ。昔の記憶などではなく、私が作り出した夢だったのだろうか。
私は、頬に、そっと手を触れる。口付けの感触が残っているようで、なぜか、胸が苦しくなった。
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