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第四章 海上機動都市VS城塞浮遊都市

シュレドの腹の中

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「突入~! ……って、人っ子ひとりいないな」

 ノアクルたちは城塞都市パルプタに乗り込んだが、そこに住人だけではなく、兵士などもいなかった。
 すぐに戦闘になると思っていたので肩透かしだ。

「パルプタの簡易的な地図は作成済みですので、用心しながら進みますにゃ」
「ああ、海賊団の中にパルプタに来たことのある奴がいて助かった」

 城塞都市だけあって、戦争に備えて城砦が張り巡らされ、かなり道が入り組んだ作りとなっている。
 物陰にシュレドの手の者が隠れている可能性もあるので、なるべく慎重に進んでいくことにした。

「魔力の集まりは、この先の大きな宮殿のようじゃな。位置的に少し下にあるので、地下っぽいかのぉ」
「パルプタを浮かせている半球型の土台の中ということか」

 アスピは頷いた。
 どうやら地図によると普段は解放されていない区画で、倉庫のような扱いになっているらしい。
 その四ヶ所に住人が捕らえられているはずだ。
 大体の目星が付き、そのまま移動を続けて宮殿に辿り着いた。

「ここにも誰もいないな……」
「飛んで上も見てきたけど、そっちもいないよ~」
「ご苦労、ムル」

 石造りの堅牢な宮殿は、薄暗く静まりかえっていた。
 ノアクルたちとしては敵がいないのは楽でいいのだが、どこか不気味に感じてしまう。

「う~ん、もしかして乗り込まれるのは想定外で兵士0の状態ですかにゃ? 戦闘員まで閉じ込めて魔力にしちゃったとか、もしくは誰もついてこない独断専行だったとか……」
「シュレドならありえるな……」

 そもそも、これだけの規模の都市が一人のワガママで攻撃を仕掛けてくるなどありえない。
 協力者が多くいれば別だろうが、今のシュレドは孤立しているように思える。
 そう考えると自分以外を〝ゴミ〟として扱っている可能性が高いだろう。

「なぁんだ、それなら楽勝じゃねぇか兄妹! 獣人のオレ様たちが一番最初に住人を解放してやろうぜ~!」
「お、おい! トラキア! 用心はしておけよ!」

 トラキアを先頭に四つある別れ道を走っていく獣人たち。
 スパルタクスだけが少しだけ足を止めて、ノアクルを見てきた。

「……大丈夫だ。何があろうと獣人闘士は障害を打ち砕いて目標を達成する。それがローズ様とお前――ノアクルへの恩返しだ」
「……わかった、任せた」

 頷き、疾風のように駆けていくスパルタクスを見送った。

「じゃあ、私たちはこっちの方へ行きますにゃ」
「ジーニャスも気を付けて行けよ」
「平気ですにゃ、ノアクル様。海の上じゃなくても、今日はジーニャス海賊団が一緒! 百人力ですにゃ! 行きますよ、野郎共~!」
Yo-ho-hoヨーホーホー!』

 ジーニャスと共に雄叫びを上げるジーニャス海賊団は、別れ道の二つ目に進んでいった。

「残りはムル……って、おい! 寝るな!」
「ん~、……むにゃ~……」
「帰ったら新しいベッドを開発してやるから、な!」
「ね~む~い~……けど、さらなる快適な睡眠のためにがんばる~」

 ムルは目を擦りながら、ヨタヨタと三つ目の別れ道に進んでいく。
 その後ろ姿に不安しか感じない。

「だ、大丈夫か……あいつ……」
「うーん、そうじゃのぉ。あんなのでも身体能力は一番高いから平気じゃろうて」
「そ、そうだよな……うん。そう信じるしかない……。何というか、メンバーがロクでもない奴らばかりだと実感してしまうな」
「お主、鏡を見た方がいいのじゃ」
「ははは! ゴミを愛するイケメンがいるだけだろう?」

 なぜか溜め息を吐くアスピをスルーしながら、ノアクルは四つ目の別れ道を進む。
 通路は特に異常もなく、薄暗いがギリギリ道が見えるくらいの光量が確保されていた。

「そういえば、別れ道を進んで地下へ降りてきたら、外の建材とは少し違う物が使われているな……。どこかで見たことがあるような……」
「ふぅむ、この区画は古代文明のシロモノらしいのぉ。ノアクルが既視感を覚えたのは魔大砲と同じような素材だからじゃろうて」
「魔大砲と同じ素材……。もしかして、この城砦浮遊都市パルプタ全体が魔大砲のようなものだというのか?」
「魔大砲自体は魔力さえ通せば海上都市ノアのようにできる……別の仕組みがあるのかもしれないのじゃ。用心して――おわっ!?」

 後ろを歩いていたはずのアスピの声が途切れたので、ノアクルは急いで振り向いた。
 そこには今までなかったはずの壁が現れていて、アスピとの通路を分断していた。

「アスピ、無事か?」
「こっちは平気じゃ。塞がれた壁とは別に、新たな道が現れておる」
「なるほど、まるで誘っているようだ。さっそく、シュレドの奴が仕組みの一つを使ったのかもしれないな」

 ここで待つこともできるが、住人の命のタイムリミットを考えると急いだ方がいいだろう。

「先に進むか」
「そうするしかないようじゃな。ワシがいなくても泣かないようにのぉ」
「え~ん、怖いよぉ~……――とでも言えばどうにかなるのなら、いくらでも泣いてやろう」
「気色悪っ!」
「うるさい。お前こそ、ただの亀なんだから無理だと思ったら甲羅に籠もってガタガタ震えて待っておけ」
「老人は労るもんじゃろうて、まったく」

 二人は慣れた調子の悪態を吐きながら、互いの道を進むことにした。
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