後悔電車

如月由美

文字の大きさ
3 / 8
regret one 「亡くなった妹」

おれの妹は、

しおりを挟む
おれの妹は、可愛くて頭の良い子だった。
でも、妹は三年前に亡くなった。
妹との最後の思い出は、三年前の夏──。


父を亡くした俺と妹・母は、落ち込んでいた。しかし、なぜか妹はそんなにショックではなかった様子だった。
そんな中で母は、気晴らしにと海に連れて行ってくれた。
その海の名前は、幸せを流れると書いて幸流せせらぎ海岸。
行ったのは平日。幸い、人は全くいなかった。
俺は、空気を明るいものにさせようと、そんな海辺で妹と遊んだ。
妹はなぜか、とても笑顔でいた。
それがなぜか悲しくて、俺は作り笑顔しかできなかった。
母は、そんな俺たちを複雑な心境で見ていたと思う。
"どうして、妹はあんな笑顔を作れたんだろう"
当時の自分は、そう思っていた。
でも、答えはすぐに分かった。
その日の帰り道のことだ。
『早く帰ろっ!』
俺と母が複雑な顔でいたとき、妹はそう言っていた。きっと暗い空気を明るくしたかったのだろう。
そう言った妹はスキップをして、横断歩道を渡っていた。その時だった。車が妹をはねたのは。
なんとも言えない大きな音がして、妹の体は宙に浮いた。そして、妹は地面に落ちた。
俺は、足を止めた。
今、目の前で起きた出来事に動揺を隠せなかった。
なんだ。今のは。
しゅう!秀!」
妹が、宙を舞っていた?
そんなの、ある訳ないだろ。
妹が空に浮いて、落ちる。
スローモーションなんかじゃなく、"一瞬"の出来事だった。
その出来事を信じたくはなかった。
「秀ってば!」
「え…?」
目の前には、母がいた。母の目尻から頬には、一筋の線。
そんな母を俺の目線が通り過ぎ、母の後ろを見た。
そこには。
南月なつき?南月、なのか?」
南月は、妹の名前。
そこには、車の中で治療を受ける妹の姿があった。
そう、救急車が来ていたのだ。しかし、後ろの扉は閉まっていなかった。
その状況を知った俺の隣で、母は俺を抱きしめた。微かに聞こえるのは、泣き声。それは、とても情けないものだった。
「おい、南月?おい…!おい!起きろよ!南月!」
母に抱き締められながら、俺はそう叫んだ。
妹がいた車内の床は、淡いグレー色。でも、世界地図のように赤いものが広がっていく。
「南月!お前ら、離れろよ!南月に触んな!」
と言って、母の抱き締める腕を振りほどく。
しかし、高校生だった当時の俺は、大人の力には勝てなかった。
そして、母は抵抗するように、俺を強く抱き締めた。
「秀!落ち着いて!秀!」
そう呼び掛ける母の声。
しかし、俺の耳には届いていなかった。
「南月!生きてるんだよな!な!」
すると、妹の治療をしている医者の手元が止まった。
そんなことを知らない母の手は俺を抱き締めていたが緩み、落ちていった──。


これは、不慮の事故と言えるのでしょうか。
もしかしたら、この事故は。自殺だったのかもしれない。
そうは思いませんか?
なぜなら。
それは、妹の笑顔が意味していた。
つまり、俺の妹は亡くなった父に会うため、死んだのだと──。
もしかしたら、母は。その手伝いをしていたのかもしれませんね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ

青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。 今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。 婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。 その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。 実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...