追放令嬢の叛逆譚〜魔王の力をこの手に〜

ノウミ

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第一章 灰姫と魔王

episode.09 部屋の中の訪問者

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皆は無事だったのでしょうか、それだけが気がかりではあるが溶け落ちる意識を保つ事は出来なかった。それでも命を落とす事は無かったようで、気がつけば見慣れた自室のベッドの上で天井を見上げていた。

「そうか、生きてる……」

体を起こそうとすると激しい痛みが全身を駆け巡り声を上げそうになった、これは危険だと感じもう一度ベッドの上に横たわる。

「エレナ……様…」

声が聞こえ、顔を向けると椅子に座っていたアリサが涙を流しながらこちらを見ていた。どこかやつれたようにも見受けられ、目は腫れていた。

「エレナ様っ!エレナ様っ!!」

そう何度も声を上げながら私の手を握っていた。

「アリサ……無事だったのね…」
「あぁっ、エレナ様もご無事でっ!!」
「私は大丈夫よ……」
「あんな事は二度としないで下さい!!」

涙を零しながらアリサは叫んでいた、その表情からどんな気持ちで私の目が覚めるのを待っていたのかは想像が出来る。

「私はエレナ様のメイドであり、旦那様より貴女を守るようにと賜っております!!ですので、次からは私の命を差し出すおつもりでお願いします……」
「えっ……お父様が?」
「あっ!いや……今のは…」

お父様が私を守るためにアリサを側に置いていたと言ったのだろうか、私には伝えてはいけない内容らしく先程までと違って居心地が悪そうな表情を浮かべている。そんな表情をさせるつもりはなかったのにと、私も気まずくなってしまった。

そんな空気を壊してくれたのは勢いよく開かれた扉と、安心できる声だった。

「エレナの声が聞こえたっ………」
「リュシアン……様」
「エレナっ無事だったか!!」

リュシアン様は勢いよく私の下へと駆け寄り抱きしめようと両手を広げてきたが寸前で止まった、どうやら勢いよく駆け出したが私の体調を気遣って堪えたのだろう。広げた手は下ろされ、私でも分かるぐらいに力強く握られていた。

「エレナっ……体調はどうだ」
「えぇ、起きたばかりではありますが…無事です」
「そうか……そうか…そうか………すまない」
「何故リュシアン様が」
「君を守れなかった」
「私は大丈夫ですよ、勝手にやったことですから」
「それなら私が悪いです!エレナ様を守るどころか、御身で守られてしまったのですから……」

せっかくこうしてリュシアン様が会いに来てくださったというのに重い空気は変わらなかった、たしかに命の危険にさらされたかもしれないが、それよりもアリサを守れた事に誇りを持ちたい、この身一つで守りたいものを守れたのだから。

それなのに二人の表情からは笑顔が消えていた。

「お二人共、こうして生きている事に喜びを感じませんか?私だって至らない点もありましたし」
「いえ、それは…「はいこの話はお終い、せっかくこうして話せるのですから、楽しい話をしたいではありませんか」私は手を叩きそう告げる。
「エレナ様………」
「私は今一度ここに誓おう、この先何があってもエレナの事を守り抜くと」
「私も誓います、エレナ様に救われたこの命。エレナ様のために生涯仕え続けると」

そう言いながら二人は頭を下げていた、仰々しくもあったが私にとってこの言葉を否定する事も、訂正する事も出来ない。ただ二人に伝えたいのは……。

「その言葉を受け取りますが、私からはたった一つだけ約束して下さい………勝手に死なないで下さい、勝手に私のために命をかけないで下さい。二人が生きている事が何よりですから」

そっと二人の手を握り返し三人で笑い合い、ようやく訪れた笑顔に私は安堵する。アリサを守った甲斐があったと、こうして生きているお陰で再び眺めることのできた二人の笑顔に感謝する、私にとっては自身の事よりこうして笑い合う二人を見ているこの光景で頑張れる理由にる、改めてそう感じた。

「そういえば、あの後はどうなりました?」
「襲撃者達は無事に一人残らず撃退したよ」
「そうですか、皆さんにお怪我は?」
「エレナのお陰で無事だったよ」

狙われたのはリュシアン様との事だったが、あの時の二人は私に狙いを定めているようにも感じられた。アリサを背後から狙い、動揺している隙に私を刺し殺す予定だったのだろうか、そう考えると生きている事が奇跡に感じる、魔力も無くなっていたあの状況で。きっと三人が私を守りながら戦ってくれていたのだろう。

「取り敢えず今は安静にしておきなさい」
「はい、お二人の顔を見たら少し眠たくなりました」
「うん、また元気になったらお茶でもしよう」

魔法の授業が終われば時間を下さいと言っていた事を覚えていてくれたのでしょう、このまま安心しながら眠れる気がする。

次に目が覚めたときには辺りは暗くなっていた、明りもなく部屋の中は静けさだけが包みこんでいた。寝てばかりだったので体を起こそうとすると何かが手を握っているのを感じた、そちらに視線をやるとお父様が私の手を握りながら、椅子に座り寝ている様だった。

「お父様……」

思い返せばここ最近のお父様の行動は今までよりも父親らしい事をするようになったと思う、私の心配をしてくれたり気遣ってくれたりと。何か心境の変化でもあったのだろうかと、この姿を見て不思議に思う。

「んっ………んん…」

お父様が目を覚ましたようで、握っていた手に力が込められ私の方を見つめていた。

「おはようございます、お父様」
「エレナ…無事で何よりだ」
「おかげさまでこうして生きております」
そう伝えると優しく頬に手を添えながら私の目を見つめる、暗がりながらも心配していた様子が伺える。
「後悔、していないか?」
「後悔…ですか?」
「この国の王妃となれば、今回のように命を狙われることも少なくはない」
「その事であれば後悔はありません、今回は私の油断が招いたようなもの。これからは気をつけます」
「そうか……」
「それに、アリサが私を守ってくれるのでしょう?」
「……聞いたのか」

やはりアリサの話は間違っていないようだ、本当にお父様が私の身を守らせるためにアリサを連れてきたらしい、そんな事今までしなかったのに。

「お父様…お父様は何故……」

ここ最近の事と、今までの事。気になる事を聞こうと思った瞬間ノックも無く部屋の扉が開かれた。少なくともアリサではない事が分かるが、優しく開かれたとはいえ襲撃の直後なので少し警戒する。お父様も同じ考えだったようで扉の方へと体を向け、私を背にしている。

「ご機嫌よう、エレナ」

継母かあ様が私の部屋を急に訪れた、ソフィアの一件以来屋敷の中でも顔を合わせることが無かったので、このタイミングの訪問は少し気味が悪い。

「お継母かあ様、ご機嫌よ「何しに来た?」
お父様が遮るようにして問いかける。

「失礼ね、娘が大怪我をしたと聞いたので心配で来たっていうのに」

そんな事は嘘だと分かる、あのお継母かあ様が私の心配をするなどと片腹痛い。考えたくもないが、何か別の目的があるのでしょうけど、最悪な考えしか頭に思いつかない。

「二人して睨まないでちょうだいな、気分が悪いわ」
「すまない、襲撃の後なのでな」
「ふんっ」

そうして少しずつ私の方に歩みを進めてくる、近づくたびに緊張感が高まり私の身体が強張ってくる。今の私に魔力はあるとはいえ襲われればひとたまりもない。

お父様が側にいるのでそんな事はしないと思いたいがソフィアの一件がある、あの半狂乱な状態が誰かによって引き起こされたものだったとしたら?そんな事を考えなくもなかった。

「せいぜい今の幸せを噛み締めなさい、終わりが来ない事を願っているわ」

継母かあ様は目の前まで近づき、その言葉だけを告げて部屋の外へと歩いていった。お継母かあ様がいなくなった部屋は先程とは違った不気味な静けさだけが残される。

「お父様……」
「すまないエレナ、私も部屋に戻らなければ」
「はい、かしこまりました」

先ほどの話を続けれる空気では無くなっていた、この不気味さを残したまま一人になりたくは無かったが仕方がない、諦めてもう一度ベッドに横たわる。

気がつけば、先程起きたばかりだというのにもう一度深い眠りの中に落ちていた。襲撃者が私を狙ったた事や、ソフィアの半狂乱とお継母かあ様の考えている事など考えれば考えるほど分からなくなってくる。

不安と恐怖に押し潰されそうになるが、リュシアン様の顔を思い浮かべるだけで少しだけ和らぐ。それでも消えはしなかった、私が強くなればこの不安と恐怖は感じなくなるのでしょうか。

「まだまだこれからね……」
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