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第一章 灰姫と魔王
episode.10 ソフィアの目覚め
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大怪我を負ってから数日が経過していた、体力が戻ってからはベッドの上で出来ることとして座学などを中心に王妃教育を進めていた。
医師から完治したことを知られてからは魔法の鍛錬に注力する、少しでも魔力効率を上げて使える魔力を増やしたり、使える魔法の種類を増やしたりと。最近は先生と、魔極を重きに置いた訓練が続いていた。
「今日も……はぁ…はぁ…、ありがとうございました」
「はい、とても良くなってきています。言われた課題をしっかひとこなしているお陰ですね」
「はぁ…はぁ…先生の教えが良いからです」
あれから襲撃者が現れることもなく平和な時間だが過ぎていた、定期的に訪れるリュシアン様とも空いた時間でお茶をしたり街にお忍びで出かけてデートのような事もしていた。
信じられないほど幸せな時間が増えていき、その度にあの日お継母様が残した言葉が色濃くなっていく気がする。それだけまだ、自分自身は弱いのだと言い聞かせながら努力を重ねる、この幸せを無くさないように、リュシアン様の隣に並び立てるようにと。
「エレナ、お疲れ様」
「リュシアン様、今日もいらしてたんですね」
「さっき着いたところだよ」
「リュシアン殿下、本日の王妃学習は終わりましたので後はご自由に」
「そうか、ありがとう」
私はアリサの持ってきてくれていたタオルで汗を拭き、水でのどを潤す。こう何度もお会いしていると普通に会話ができるほどには慣れてきた。
「では、エレナ。この後の時間を私に頂いても?」
「良かったですねエレナ様、リュシアン様と過ごすために頑張っていましたもんね~」
「あ、アリサっ!?そんな、私は……」
「おや、楽しみにしていたのは私だけかい?」
「うぅ、その一言はずるいです」
慣れていた気がしただけかもしれない、からかわれてしまうと一気に恥ずかしくなってきた。私も楽しみにしていないはずがない、この時間を無くさないように頑張っているのだから。
そうして私は急いで汗を流し身支度を整える、 今日は観劇を見に行こうと誘われた。沸き上がる嬉しい気持ちを抑えながら、隣に並んで恥ずかしくないようにとアリサに整えてもらう。そうして準備を終え、迎えに行こうと廊下を歩いているとリュシアン様が奥から慌てた様子で走ってきた。
「エレナ、妹が目を覚ましたらしいよ」
「えっ、ソフィアが!?」
あの日、半狂乱で侵入してきたソフィアを私の魔法で吹き飛ばしてしまいしばらく気を失っていた。そのソフィアがようやく目を覚ましたと、リュシアン様もあの日現場に居合わせていたので知らせが入ったらしく、私は急いでソフィアの部屋へと向かう。
部屋の付近まで近づくと既に人は集まっており、中に入ろうとするが屋敷の者数名が私を通さないようにと壁になって塞いでいた。事の経緯はどうであれ、最終的に手を下したのは私なので警戒するのも無理はない、それどころかこの屋敷の人たちはソフィアの味方なので守りたい一心からなのだろう。
「何故ここに来た」「まだ傷は癒えてない」「帰って下さい」などと追い返そうとする言葉が向けられる。少しピリついた空気に怖いと思えてくるが、リュシアン様が優しく手を握ってくれた。
「大丈夫、エレナの味方はここにいるよ」
「リュシアン様…」
そう優しく呟かれた言葉は私の足を自然と前に動かしていた、不思議なものでここにいる全員の敵意よりリュシアン様の言葉が勝っていた。
「う、あっ………」
そうして歩きだそうとした時、リュシアン様が以前のように頭を抱えながらふらついた様子を見せている。
「リュシアン様、大丈夫ですか?」
「あぁ、すまない……大丈夫だよ」
その様子に異常を感じたのか、先程まで向けていた敵意も慌てた様子の騒々しさに変わっていた。私もどうすれば良いのか声をかけることしか出来ない。
「騒々しいぞ、道を開けろ」
低く威圧感のある声で背後からお父様が近づいていてくる、先程までとは違いその言葉に全員が黙り込み静かに道を開けた。リュシアン様もふらつきが収まったようで「大丈夫」と一言、私の手を引いて歩き出してくれた。
そうしてお父様が先導し、私達が後を追うようにして部屋の中に入っていく。不満そうな視線をいくつか感じるが気にしない、私にも確かねばならない事があるのだから。
そこには、ベッドで体を起こしているソフィアと隣で心配そうに見つめているお継母様がいた。お父様は構わず中には入っていきソフィアに優しく声を掛ける、私は入り口付近でこれ以上進めずに立ちすくんでいた。
正当防衛だったはずなのにここに私の正義は通じない、そんな事実からかけていい言葉が見つからずにいた。
「何してるの?」
肩を叩いてきたのは伯父であるザンラ様だった。数えれる程度しかお会いした事は無いがこの人だけはずっと苦手だった、この人と相対すると理由の分からない不気味さを感じずにはいられない。
「私は……ただ…」
ザンラ様の雰囲気に呑まれそうになっていると、握られていたはずの手をリュシアンが離し、ソフィアの下へと向かって歩いていった。先に行かれた事への驚きとザンラ様の雰囲気に絡められ呆然とするしか無い。
「ソフィア嬢、身体は大丈夫かい?」
「リュシアン王太子殿下、お越しいただき感謝します。このような状態でのご挨拶、失礼します」
その言葉遣いに私は驚きを隠せずにいた、部屋の中に入ってきた時と同じ人物とは思えない。あの時が何かの原因で半狂乱になっていたとしか思えないほどに。
「構わないよ、無事なようで安心した」
「そんな、お気を遣わせてしまって申し訳ございません」
二人のやり取りに身の毛がよだつ、リュシアン様も何かのお考えがあって話しているのだろうか、あの時の状況を確認する為に。
「早速で悪いが……」
「王太子殿下、娘は先程目を覚ましたばかりです。どうかお話はもう少し回復してからでも」
「お母様、構いません。リュシアン王太子殿下はあの日の事についてお知りになられたいのかと存じます。何せ、居合わせたばかりかただならぬ状況だったのですから」
「すまない」
「お父様も聞いていただけますか?」
「無理のない範囲で良い、何があった」
嫌な予感がする、この状況は一体何だ。お父様もリュシアン様も勘違いだと思いたいがソフィアに寄り添うような様子を見せている。そうする事でゆだんさせようといった作戦なのだろうか、それにしてはこの光景は私が蚊帳の外に外されているようにも感じてしまう。
「あの日、お異母姉様の部屋に伺ったのは……」
その先は驚愕の言葉であった、これだけの人物が揃っている中でソフィアは堂々と嘘の事実を並べる。あの日お継母様が述べたような、私の心配をして部屋に入ったと、こんな事になるとは思っていなかったと、全くの事実無根な言葉の数々が並べらていく。
後ろからは「やっぱり」「可哀想なソフィア様」と言ったような言葉が聞こえる。
「ソフィア、貴女……」
声を出そうとした瞬間に違和感を感じる、リュシアン様とお父様が何も答えずにただただソフィアの言葉を黙って頷きながら聞いているのだ。
「私はただ、リュシアン王太子殿下の婚約者として立派にやり遂げる覚悟があるのかを確認したいだけだったんです。恥ずかしながら私も気持ちを寄せていましたので諦めるための、身勝手な理由ではありますが」
「ソフィア貴女っ!そんな嘘をよくも並べて」
「ひぃっ、ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい」
「あぁ、可哀想なソフィア!大丈夫、大丈夫よ」
お継母様がソフィアを抱きしめて声を上げる、ここで私は確信した。二人は口裏を合わせ、あの時の目撃者は当事者の私とソフィアのみ。
この状況で私が有利になることもなければ、味方をしてくれる人物などいないと踏んだ上での行動なのだろう。それでも私は……。
「リュシアン様、お父様信じて下さい。ソフィアが話していることは全くのデタラメだと、あの日襲われそうになって仕方なく魔法を行使したのです。確かにやり過ぎだったのかもしれませ「エレナ」
今までに聞いた事が無いほどの冷たく重たい声がリュシアン様から発せられ私の話を遮る。
「お互いの言い分が食い違っている……と思いたいがソフィア嬢の怯えようは異常だよ」
「あれは、あんな事になるような事はしていません!」
「あぁ、お異母姉様。ごめんなさい、私が悪かったです、もう何も言いません。何もしませんからどうか、どうか………」
「おぉ、痛わしい。私の娘にどんな恨みがあって!?」
同調を繰り返すお継母様の言葉が空気の流れを一気に作り出していた、後ろからも先ほどは呟くような声だったのが大きな声へと変わっていた。
「エレナ、信じていたのに……」
「リュシアン様信じて下さい、私は嘘など!」
「もういいよ、止めてくれ。頼むから………」
その言葉に全身を打ち付けられたような感覚に襲われる。声が出ない、体が動かない。誰か間違いだって指摘してよ、ソフィアが嘘をついているのでは無いのかと聞いてよ。そう願わずにはいられなかった、誰か助けてと……。
「ふふ、良いのかい?」
耳元で囁いたザンラ様声で一気に鳥肌が立った、言葉の意味が理解出来ない筈なのに。それとも、理解をしたくないだけなのだろうか。ギリギリを保っていた私の心が崩れたように聞こえ、その場に座り込みたくなる。
「リュシアン殿下、我が家の不始末はこちらで。エレナの処遇に関しては預からせて下さい」
「オーエンス伯爵、どうするつもりだ」
「今はお互いに冷静でないのでしょう、記憶が混濁している可能性もありますので後日改めて」
「この様子を見て同じ事が言えるのか!?あっ、う」
再び頭を押さえて先ほどより苦しそうな表情を浮かべていた、今回は一瞬だけだったようですぐに持ち直し再びお父様に向き直る、お父様は変わらず膝をつき頭を下げながら続けていた。
「双方からしっかりと話を聞いた上で報告はさせて頂きます、平等に冷静な場を設けさせて頂きたく」
「分かった、後日改めてまた来よう」
「ありがとうございます」
もう私には何が起こっているのか理解する事も出来ない、何もしていない。何もしなかったからこんな状況に追い込まれたのだろうか、リュシアン様は味方でいてくれると言っていたはずなのに。
リュシアン様は私の顔を見る事もなく、今にも崩れそうな私の隣を無情にも過ぎ去っていきそれを追い掛けるようにしてお父様が続く。
残された私は屋敷の者たちに力任せに抑えつけられ自室へと運ばれる。もう抵抗する気力は起きなかった、いつの間にかアリサも居なくなっていたので彼女も私を見限ったのだろう。
こうして私は、また一人になった。以前と比べて大事なものを抱えた後の一人は苦しいものがある。それに押し潰されるようにして倒れ込み、沙汰があるまで待ち続ける。
医師から完治したことを知られてからは魔法の鍛錬に注力する、少しでも魔力効率を上げて使える魔力を増やしたり、使える魔法の種類を増やしたりと。最近は先生と、魔極を重きに置いた訓練が続いていた。
「今日も……はぁ…はぁ…、ありがとうございました」
「はい、とても良くなってきています。言われた課題をしっかひとこなしているお陰ですね」
「はぁ…はぁ…先生の教えが良いからです」
あれから襲撃者が現れることもなく平和な時間だが過ぎていた、定期的に訪れるリュシアン様とも空いた時間でお茶をしたり街にお忍びで出かけてデートのような事もしていた。
信じられないほど幸せな時間が増えていき、その度にあの日お継母様が残した言葉が色濃くなっていく気がする。それだけまだ、自分自身は弱いのだと言い聞かせながら努力を重ねる、この幸せを無くさないように、リュシアン様の隣に並び立てるようにと。
「エレナ、お疲れ様」
「リュシアン様、今日もいらしてたんですね」
「さっき着いたところだよ」
「リュシアン殿下、本日の王妃学習は終わりましたので後はご自由に」
「そうか、ありがとう」
私はアリサの持ってきてくれていたタオルで汗を拭き、水でのどを潤す。こう何度もお会いしていると普通に会話ができるほどには慣れてきた。
「では、エレナ。この後の時間を私に頂いても?」
「良かったですねエレナ様、リュシアン様と過ごすために頑張っていましたもんね~」
「あ、アリサっ!?そんな、私は……」
「おや、楽しみにしていたのは私だけかい?」
「うぅ、その一言はずるいです」
慣れていた気がしただけかもしれない、からかわれてしまうと一気に恥ずかしくなってきた。私も楽しみにしていないはずがない、この時間を無くさないように頑張っているのだから。
そうして私は急いで汗を流し身支度を整える、 今日は観劇を見に行こうと誘われた。沸き上がる嬉しい気持ちを抑えながら、隣に並んで恥ずかしくないようにとアリサに整えてもらう。そうして準備を終え、迎えに行こうと廊下を歩いているとリュシアン様が奥から慌てた様子で走ってきた。
「エレナ、妹が目を覚ましたらしいよ」
「えっ、ソフィアが!?」
あの日、半狂乱で侵入してきたソフィアを私の魔法で吹き飛ばしてしまいしばらく気を失っていた。そのソフィアがようやく目を覚ましたと、リュシアン様もあの日現場に居合わせていたので知らせが入ったらしく、私は急いでソフィアの部屋へと向かう。
部屋の付近まで近づくと既に人は集まっており、中に入ろうとするが屋敷の者数名が私を通さないようにと壁になって塞いでいた。事の経緯はどうであれ、最終的に手を下したのは私なので警戒するのも無理はない、それどころかこの屋敷の人たちはソフィアの味方なので守りたい一心からなのだろう。
「何故ここに来た」「まだ傷は癒えてない」「帰って下さい」などと追い返そうとする言葉が向けられる。少しピリついた空気に怖いと思えてくるが、リュシアン様が優しく手を握ってくれた。
「大丈夫、エレナの味方はここにいるよ」
「リュシアン様…」
そう優しく呟かれた言葉は私の足を自然と前に動かしていた、不思議なものでここにいる全員の敵意よりリュシアン様の言葉が勝っていた。
「う、あっ………」
そうして歩きだそうとした時、リュシアン様が以前のように頭を抱えながらふらついた様子を見せている。
「リュシアン様、大丈夫ですか?」
「あぁ、すまない……大丈夫だよ」
その様子に異常を感じたのか、先程まで向けていた敵意も慌てた様子の騒々しさに変わっていた。私もどうすれば良いのか声をかけることしか出来ない。
「騒々しいぞ、道を開けろ」
低く威圧感のある声で背後からお父様が近づいていてくる、先程までとは違いその言葉に全員が黙り込み静かに道を開けた。リュシアン様もふらつきが収まったようで「大丈夫」と一言、私の手を引いて歩き出してくれた。
そうしてお父様が先導し、私達が後を追うようにして部屋の中に入っていく。不満そうな視線をいくつか感じるが気にしない、私にも確かねばならない事があるのだから。
そこには、ベッドで体を起こしているソフィアと隣で心配そうに見つめているお継母様がいた。お父様は構わず中には入っていきソフィアに優しく声を掛ける、私は入り口付近でこれ以上進めずに立ちすくんでいた。
正当防衛だったはずなのにここに私の正義は通じない、そんな事実からかけていい言葉が見つからずにいた。
「何してるの?」
肩を叩いてきたのは伯父であるザンラ様だった。数えれる程度しかお会いした事は無いがこの人だけはずっと苦手だった、この人と相対すると理由の分からない不気味さを感じずにはいられない。
「私は……ただ…」
ザンラ様の雰囲気に呑まれそうになっていると、握られていたはずの手をリュシアンが離し、ソフィアの下へと向かって歩いていった。先に行かれた事への驚きとザンラ様の雰囲気に絡められ呆然とするしか無い。
「ソフィア嬢、身体は大丈夫かい?」
「リュシアン王太子殿下、お越しいただき感謝します。このような状態でのご挨拶、失礼します」
その言葉遣いに私は驚きを隠せずにいた、部屋の中に入ってきた時と同じ人物とは思えない。あの時が何かの原因で半狂乱になっていたとしか思えないほどに。
「構わないよ、無事なようで安心した」
「そんな、お気を遣わせてしまって申し訳ございません」
二人のやり取りに身の毛がよだつ、リュシアン様も何かのお考えがあって話しているのだろうか、あの時の状況を確認する為に。
「早速で悪いが……」
「王太子殿下、娘は先程目を覚ましたばかりです。どうかお話はもう少し回復してからでも」
「お母様、構いません。リュシアン王太子殿下はあの日の事についてお知りになられたいのかと存じます。何せ、居合わせたばかりかただならぬ状況だったのですから」
「すまない」
「お父様も聞いていただけますか?」
「無理のない範囲で良い、何があった」
嫌な予感がする、この状況は一体何だ。お父様もリュシアン様も勘違いだと思いたいがソフィアに寄り添うような様子を見せている。そうする事でゆだんさせようといった作戦なのだろうか、それにしてはこの光景は私が蚊帳の外に外されているようにも感じてしまう。
「あの日、お異母姉様の部屋に伺ったのは……」
その先は驚愕の言葉であった、これだけの人物が揃っている中でソフィアは堂々と嘘の事実を並べる。あの日お継母様が述べたような、私の心配をして部屋に入ったと、こんな事になるとは思っていなかったと、全くの事実無根な言葉の数々が並べらていく。
後ろからは「やっぱり」「可哀想なソフィア様」と言ったような言葉が聞こえる。
「ソフィア、貴女……」
声を出そうとした瞬間に違和感を感じる、リュシアン様とお父様が何も答えずにただただソフィアの言葉を黙って頷きながら聞いているのだ。
「私はただ、リュシアン王太子殿下の婚約者として立派にやり遂げる覚悟があるのかを確認したいだけだったんです。恥ずかしながら私も気持ちを寄せていましたので諦めるための、身勝手な理由ではありますが」
「ソフィア貴女っ!そんな嘘をよくも並べて」
「ひぃっ、ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい」
「あぁ、可哀想なソフィア!大丈夫、大丈夫よ」
お継母様がソフィアを抱きしめて声を上げる、ここで私は確信した。二人は口裏を合わせ、あの時の目撃者は当事者の私とソフィアのみ。
この状況で私が有利になることもなければ、味方をしてくれる人物などいないと踏んだ上での行動なのだろう。それでも私は……。
「リュシアン様、お父様信じて下さい。ソフィアが話していることは全くのデタラメだと、あの日襲われそうになって仕方なく魔法を行使したのです。確かにやり過ぎだったのかもしれませ「エレナ」
今までに聞いた事が無いほどの冷たく重たい声がリュシアン様から発せられ私の話を遮る。
「お互いの言い分が食い違っている……と思いたいがソフィア嬢の怯えようは異常だよ」
「あれは、あんな事になるような事はしていません!」
「あぁ、お異母姉様。ごめんなさい、私が悪かったです、もう何も言いません。何もしませんからどうか、どうか………」
「おぉ、痛わしい。私の娘にどんな恨みがあって!?」
同調を繰り返すお継母様の言葉が空気の流れを一気に作り出していた、後ろからも先ほどは呟くような声だったのが大きな声へと変わっていた。
「エレナ、信じていたのに……」
「リュシアン様信じて下さい、私は嘘など!」
「もういいよ、止めてくれ。頼むから………」
その言葉に全身を打ち付けられたような感覚に襲われる。声が出ない、体が動かない。誰か間違いだって指摘してよ、ソフィアが嘘をついているのでは無いのかと聞いてよ。そう願わずにはいられなかった、誰か助けてと……。
「ふふ、良いのかい?」
耳元で囁いたザンラ様声で一気に鳥肌が立った、言葉の意味が理解出来ない筈なのに。それとも、理解をしたくないだけなのだろうか。ギリギリを保っていた私の心が崩れたように聞こえ、その場に座り込みたくなる。
「リュシアン殿下、我が家の不始末はこちらで。エレナの処遇に関しては預からせて下さい」
「オーエンス伯爵、どうするつもりだ」
「今はお互いに冷静でないのでしょう、記憶が混濁している可能性もありますので後日改めて」
「この様子を見て同じ事が言えるのか!?あっ、う」
再び頭を押さえて先ほどより苦しそうな表情を浮かべていた、今回は一瞬だけだったようですぐに持ち直し再びお父様に向き直る、お父様は変わらず膝をつき頭を下げながら続けていた。
「双方からしっかりと話を聞いた上で報告はさせて頂きます、平等に冷静な場を設けさせて頂きたく」
「分かった、後日改めてまた来よう」
「ありがとうございます」
もう私には何が起こっているのか理解する事も出来ない、何もしていない。何もしなかったからこんな状況に追い込まれたのだろうか、リュシアン様は味方でいてくれると言っていたはずなのに。
リュシアン様は私の顔を見る事もなく、今にも崩れそうな私の隣を無情にも過ぎ去っていきそれを追い掛けるようにしてお父様が続く。
残された私は屋敷の者たちに力任せに抑えつけられ自室へと運ばれる。もう抵抗する気力は起きなかった、いつの間にかアリサも居なくなっていたので彼女も私を見限ったのだろう。
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