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星の降る丘へ
第10話 しんせつの平原
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第10話 しんせつの平原
☆前回のあらすじ
アミィセンサーに導かれた一行が辿り着いたのは、真っ赤な熱い水が流れる大河だった
魔法使いが関与していた訳ではなかったが、アミィセンサーがルナにこの惑星が終わりかけていることを再び伝えたかったのだという結論になった
ルナはこのことでまた惑星を救う決意を深めた
「むむぅ…」
アミィが歩きながら妙な声を上げている
「どうかしたの?」
「いやね、あの暑~い場所から離れた途端、やけに寒くなってきたと思わない?」
「いわれてみれば…確かにそうね」
あたりは風もよく吹いていて、それも冷たい
さらにあまり木が見当たらなくなってきたせいで直にその風が身体を冷やそうとしていた
「ねぇ、ルナ
どうだろう
ここはちょっと休んでいかないかい?」
「うーん、確かにそうだけど…」
「まああんまり急いでも仕方ないからね
ルナ、そうした方がいいんじゃない?」
「そうと決まれば早速休める場所を探さないとね!」
「アミィ、寒さに関わらず休みたかっただけなんじゃない?」
「そ…そんなことないよ!」
「まあ私も疲れてきてたしちょうどいいか」
「じゃあとりあえずこの風を凌げるところ!
それだけでも探そう!」
しばらく歩くと洞窟を見つけた
「あ!おあつらえむき!」
「じゃあここで休もうか」
「サン、草を集めましょうか」
「あ、ボクもいくよ~」
「アミィは食べ物を探してほしいかな」
「まかせて!アミィセンサーなら、わけないよ!」
「アミィセンサーそんなのにも使えるんだ…」
「じゃあ安心して任せられるわね!」
「期待して!」
「よし、解散!」
しばらくして、みんなで洞窟に収集品を持ち寄った
「あ、これなら暖かそう!」
「アミィもなかなかやるね!」
「ふふふ~もっと褒めて~」
寝床が作れる程度の草と、全員でも食べきれないくらいの木の実が集まった
「改めて思うとさ、なんか家族以外で食事したり寝たりするのって、ワクワクするよね」
「ほんとね!私もお母さんとばかりだったから、こういうのってちょっと楽しいわ」
「ボクは…」
「あれ?アミィ、なんだか…」
「う…ううん
なんでもないんだ…」
なんだかやけに口数が少ないじゃない
「…アミィ」
「……」
「…お腹が空いたのね!
早く食べるわよ!」
そういうと私は真っ先に木の実を手に取り口に含んだ
「あ、ルナそれ僕が狙ってたやつ!」
「あっちにもあるわよ!
さ、食べましょ食べましょ!」
「……へへっ…!
待て待て~!それはボクがとったやつ~!」
アミィはちょっと元気になったようだ
みんなおなかいっぱい食べて、もう寝ることにした
「くおぉぉ…すふひぃ…」
「サン、うるさい…」
「ね、ルナ…起きてるよね…」
「アミィ…あなたもやっぱりこのいびきに…?」
「あはは…それもあるけど…
…さっきのこと」
「…別にいいのよ
何も話さなくても」
「なにさ、ルナったら
星の巫女のことはあ~んなに聞きたがったのに
ボクのことは興味ないのぉ…?」
「変なトコで拗ねないの…
別に興味がないって言ってるんじゃないわ
ただ、思い出したくないことって、あるじゃない
私だって、サンには…
お父さんのことについて嘘をついたわ」
「ルナでも嘘つくんだ…」
「私を何だと思ってるのよ…
私は別に正直者でもなければ聖者でもないわ
嫌なことは嫌だし
だから星の巫女からも逃げたかったわよ
でもアミィ、あなただって戦ってるじゃない
ユリィズも、ミドーも、命を賭けたじゃない
それで私は星の巫女から逃げないことにしただけよ
だから、別の嫌なことはまだ嫌よ
あなたにだって、お父さんのことは話してあげないわ
…だから、あなたも別に話すことはないわ」
「ルナ…
…いつか、教えて
お父さんのこと」
「じゃあ、あなたの家族のこと、その時は聞かせてもらうわ」
「もちろん!」
夜は更けて、やがて私はすっかりと眠ってしまった
翌朝
「ルナ!大変だよ!」
「…なによ…寝起きに…サン、あなた元気ね」
「いやいや!これを見たらきっと目を覚ますって!」
「そんなこと……!」
私は見事に目が覚めた
洞窟の外が、真っ白になっていた
「なになに~どうしたの~?」
「あ…アミィ…洞窟の外が消えちゃったんだ…!」
「何言ってるのサン…あ、もしかして~…知らないんだな~?」
「な、なにをさ!」
「よし、アミィちゃんが教えてあげよ~!」
「これも魔法なのかしら…?」
「答えはばってん!
これはね、雪、で~す!」
「ユキ…?聞いたことがないわ…」
「よしじゃあ、雨は?!」
「バカにしてる?!それくらい知ってるわ!」
「それと同じくらい単純な話なのさ!」
「…どういうコト?」
「これはね、雨の仲間さ
寒~い場所だと、雨が凍ってね、それが雪になるんだ
なに、寒い場所に住んでいないから知らなかっただけさ」
「へぇ…雨ってこんなになるんだ…」
「じゃあちょっとこの上を歩いてみる?」
「ちょっと怖いけど…行くわ!」
私はこのユキの上にとんでみた
ぼっ!
「ちょ、ちょちょちょ…つつつ、冷たい!」
「そう!雪はとっても冷たいんだ!凍ってるからね
あと、動きにくいよ」
「え…これってもしかして…」
「……うん、ちょっとこのまま進むのは心配かな…」
「どうするのよー!」
「もう我慢していくしかないね!
溶けるまで待ってたらさらに積もるかもしれないし!
まあ夜通し歩いて洞窟もないところで降られるよりはよかったよ!」
「そう言われるとそうだけど…」
「じゃ、いこっか!」
「うぅ…さむ…」
ざっざっざっ、と音を立てて歩を進める
やけに周りの音が静かで、私たちの足音だけが平原にこだましている
もちろん足は冷たい
でも歩かなきゃ、もっとひどくなるってアミィは言ってる
「ねぇアミィ…目的地はまだなの…?」
「う~ん、この平原のどこかにあるみたいだからもう少し進めばあるはずなんだけど」
「じゃあまだ耐えられる…」
「やあ、ルナ、なんだかこのユキは、君みたいじゃないか
透き通った真っ白い身体が、太陽の光を浴びてキラキラ光ってさ」
「ごめん今は…ほんと…」
「………」
「サンは寒さに強いんだねぇ」
「うん、なんか平気みたい
僕が住んでた場所、ユキが降らないまでも寒かったのかな」
「ルナはそれに比べて…」
「うう、うるさい…!」
「それにしても、ユキってのは面白いね
ね、振り返ってごらんよ」
サンにいわれて歩いてきた道を顧みてみる
「これは…」
私たちの足跡がずーっと残っていた
点は線になって、平原に三本の道を作ったみたいだった
「ちょっと…きれいね」
「でもこれもしばらくすると消えちゃうからね
この儚さも、雪の面白いところさ」
「僕はすっかり気に入ったよ」
「私はちょっと慣れないわね…」
またしばらく歩いて
「あ、これ!」
アミィがなにか見つけたようだ
「どうしたの?」
「こんな所に足跡が…」
「足跡ってことは…」
「まだそう遠くない時間にここに誰かがいたのね」
「もしかして…あ、やっぱりそうだ」
「なになに?」
「アミィセンサーがこの足跡に反応してる」
「あ、じゃあこれを追っていけば…?」
「うん!目的地!というか、目的者?」
「魔法使いかな?仲良くなれるといいな」
「そうだね!」
「あぁ…おほん…あのねルナ」
「なに?」
「魔法使い全部は信用しない方がいいよって」
「え?」
「これはちょっといやな話なんだけど…
崩星信者ってのがいるんだ」
「ほーせーしんじゃ?」
「簡単に言うと、惑星を救いたくないやつら
それどころか全部滅んで欲しいっていう破滅を願う者たちさ」
「それって…死にたいってこと…?」
「いや、ちょっと違う
滅んだ先に新たなる世界があるだとかうんぬんかんぬん…
そんな理由で星が破滅することに意味があるらしくて、みんなを巻き込んででも星を破壊しようとする過激なやつらがいるんだよ」
「そんなキケンなやつらが魔法使いなんてさらにキケンじゃない…」
「ま、アミィセンサーに指定されるような子はそんな危険なやつじゃないと思うから!アミィセンサーの目的地の魔法使いに関しては安全だと思ってよ!」
「じゃあもしアミィセンサーと関係なく遭遇した魔法使いがいたら、気をつけてってことね」
「そういうこと!」
そうこういってるうちに平原の先に誰かの影が見えてきた
「あ、あれ!」
「魔法使いだ!」
「どうする?とりあえず呼んでみる?」
「そうしよ!おーい!」
謎の影は振り返ったかと思うとまっすぐこちらに走ってきた
「あれ?ねぇ、アミィ、大丈夫だよね?」
「あ、当たり前でしょぉ?アミィセンサーの示した子なんだよぉ?」
その影が顔を認識できるほどに迫った時、その子は片手を上げながら走る形に変わった
「え?なになになにあれ?!」
その手の上の空気がゆらゆら揺れているようだった
やがて手の上には橙色の光が集まってきて、小さな太陽みたいになった
そしてそれを…私たちに向かって勢いをつけて投げつけてきた!
「ちょっとぉ!あれなによアミィー!」
「おっかしいなぁ~!」
逃げようとして背を向けると…
「ばは~っ!!」
「うわわわわー!」
顔になにかを被せたような魔法使いがそこにいた
「えー!誰ー?!」
「ぶぇひへひへ!バレちったぁ!
じゃ、作戦変更~!」
その魔法使いが口笛を吹くと、先程光球を投げてきた魔法使いがさらにスピードをあげて迫ってきた
「うわー!なんなんだよキミたちはー!」
「待ってサン!冷静に!話せばきっとわかってくれるわ!」
私たちはおとなしくなった
「んン?なんだァ?もうお終いかぁ?
よし、それならば…サヨナラだ…っ!」
彼は鋭い爪を振りかざした
「ちょーっと!話が違うよルナぁー!」
「わかってくれるんじゃないのー?!」
「いや!こいつら多分崩星信者だ!」
「さっきいってたやつ!」
「んぁ?オマエ…今崩星信者って言ったなァ?」
「言ったよ!それがなに!」
「やっぱりそうダ…!おいミッディ…!やっぱりコイツラが崩星信者ダ!」
「え?なんか言ってることおかしくない?」
「キミたちが崩星信者なんでしょ!?」
「ミッディ!コイツラの言ってることヘン!はやく倒すゾ!」
「待てよアリモー!ちっと誤解があるみたいだぜ?」
「あ、この人は話が通じそう…」
ミッディと呼ばれた方がアリモーと呼ばれた方に声をかけると、彼の動きが止まった
「えーっと、つまり?」
「ボクたちは星の巫女とその連れで、星を壊すんじゃなくて救うために旅をしているんだよ!」
「なるほどな…よくわかった
アリモー、こいつらはオレたちの敵じゃない
…行くぞ」
「ま…待ってください!
あなたたちは…?」
「てめぇらには関係ねェ
…と言いたいとこだが…お前らがほんとに星の巫女ってんなら話は別かもしれんな…
よし、いいだろう
話をしてやる」
「な…なんか…上からだね…」
「しっ…聞こえるよサン…」
「何をコソコソしてやがる
オレたちは暇じゃねェんだ
何も話すことはねェってんなら終わりにするぜ」
「ま、待って待って!えーっと…じゃあ自己紹介から!はじめましょ!」
「……ミッディだ
そんでこいつがアリモー…終わりだ」
「えーっと…じゃじゃあ…私はルナ!星の巫女の使命で星の降る丘へ向かってるの!」
「僕はサン!えっと…ルナのつきそい!」
「ボクはアミィちゃん!アミィ・ユノンの名をついで!果たすは星を救うこと!星の巫女ルナを見事探し出して星の降る丘へ導く旅の最中さ!この旅もボクのアミィセンサーのおかげでほんとに色々と助かってるからね!というかアミィセンサーなかったらその時点でもう終わってるからね!ボクがいなきゃほんと始まらない!」
「おい、もう黙れ…」
「しゅん…」
「で?その星の巫女サマが、こんな場所になんの用だい?」
「それがね…そのアミィセンサーってやつの目的地が…あなたなの、ミッディ」
「オレが?はっ、オレは星の降る丘じゃあねぇぜ」
「それはまあわかるんだけど…あなたって魔法使いでしょ?多分そのせい
アミィセンサーはあなたみたいな魔法使いの許に私を導くの」
「そうかい
でもオレがしてやれることなんてねぇぞ
こいつの世話だけで手一杯だってのに…」
ぼやくように言ってミッディはアリモーのことをちらりと見た
「彼は…弟さん…?」
「…余計な詮索は無用だ」
「ごめん…」
「……ミッディ…コイツラになら…別にいいゾ」
「へぇ…珍しいな
なんか感じるのか?アリモー」
「いや…星の巫女っテ…オデも知ってル…
オデたち…協力すベキ…」
「…ちっ…生意気になったもんだ
まあいいや
教えてやるよ」
「まずハ…悪かったナ…」
「いや、いいのよ
よく考えると私たちも軽率だったわ
崩星信者についてきいたばかりだったのに…」
「まあオレたちは崩星信者じゃあねぇんだけどな」
「魔力もったヤツ…倒そうとしてタ…スマン…」
「もう謝るのはいいだろ?とりあえずお前のことについて教えてやんねぇと話が進まねぇよ…」
「ゴメン…」
「お前らもなんとなくわかったろうが、こいつはちっと話し方が違ぇだろ?」
「なんか片言だよね」
「こいつはな、オレの弟でもなんでもねぇよ」
「そうなんだ…じゃあ相棒かなんか…?」
「そんなモンでもねぇ…言うなら…道具ってとこか」
「道具?!」
「そうだ
オレの望みを叶えるために動いてもらう
そんな道具さ」
「キミは…ひどいヤツだな…」
「……ふんっ」
「ほんとなの…?アリモー…」
「それハ…」
「余計なことを言うな」
「あウ…」
「そんなわけでこいつはオレとは生まれも育ちも違うからこんな変な言葉遣いなんだ
それと、魔力を持ったやつを追ってる理由
簡単に言えば、崩星信者を見つけ出して打ち倒すため、だな」
「……キミさ、嘘ばっかりだね…」
「あん…?」
「別にいいんだよ
キミがホントのこと言いたくないのはわかった
でもさ、アリモーはきっとボクらのこと信じてくれてるんだよ
それでキミに託しているのに…それはないんじゃない?」
「なにを根拠に…」
「ボクにはわかるよ
だってキミたちは家族でしょう?」
「…!」
「……呪いのニオイがしたんだ
アリモー…キミからさ
そのマスク…多分オシャレなんかじゃないよね」
「………おい、アミィ…
それを知ったところでお前には何ができるんだよ?」
「ボクたちが導かれたのには理由があるに違いないんだよ
今回はきっと、キミたちを救うために
…違ってたら、ごめんね?」
「……ふっ…冗談じゃ済ませねぇからな」
ミッディがようやく少し和らいだ気がした
「そこまでわかってんならもういいや
そう、こいつはオレの弟
で、魔力を持ったやつを追ってんのは、こいつの呪いの元凶かもしれねェから
崩星信者は呪いに長けてるから崩星信者を探してるってのは嘘じゃあねぇけどな」
「回りくどいね、キミも
なんでホントのこと言わないのさ」
「……オレがやるって決めたんだ
だからお前らも…もし呪いをかけたやつが見つかったとしても…トドメは俺に刺させてくれ…頼む…」
「やっぱり…呪いをかけたヤツは…殺すつもりなんだね」
「当たり前だ!
アリモーはもう5年もこのままなんだ…このマスクを外すこともできず…片言でぼーっとしてやがる……
最初の頃は話すことさえできなかったんだ…」
「…敵がどんな悪党でも…ボクは殺しはしないよ」
「綺麗事だね
じゃあお前らのツレがそいつにやられたらどうする?」
「……」
「私は…赦すわ」
「ルナ…」
「私たちが目指す目標も、そいつらが目指す目標も、お互いにとっては正反対
分かり合えるはずはないのよ
でもだからこそ、私たちがそいつらの邪魔になってることも否定はできないわ
私たちはお互いに赦し合いその志を折り合わなきゃならないわ」
「つまり…それは殺すことを正当化したいってことかい?」
「…そうね
衝突は避けて通れないでしょうから…私たちは星が滅べば死ぬことになるし…崩星信者も星が滅ぼせないと未来はないと思い込んでるわ
思想が違う相手に何を言っても無駄よ
その権利を奪うか奪われるか、それだけ」
「お前の方がリアリティがあって良い意見だ
そう、アイツらはきかねぇんだ
何を言ってもだ
そんなやつに、弟の呪いを解いてくださいなんてお願いしても無駄さ」
「それでもボクは…」
「お仲間だってやらなきゃならねぇって言ってんだぜ?」
「……ボクはもう殺すのも殺されるのも嫌なんだ…」
「もしかしてアミィ…わかったわ
私ももし困難だったとしても相手を打ち倒すようなことは考えない」
「おいおいあんたもか…
じゃあオレは一体この恨みをどうすりゃいいんだよ
5年もこいつがこんなになっちまってよ…」
「でも気持ちはそこにあるんじゃないか
…こんなことは言いたくないけどさ
死ななかっただけ…いいよ…」
「お前に何がわかるんだ!」
「わかるよ!
……わかるんだ
ボクだって…大切な人を殺されたんだ…」
「……ちっ…
それで?お前はそいつをどうしたんだ?」
「……」
「なんだ、泣き寝入りか?
そりゃあな、お前にはやり返す力がなかったんだろ
どれだけ殺してやりたいって思った?
なあそうだろ?」
「違う!そんなことない!
ボクは…ボクは…」
「もうやめなよ!」
「…ううん、ボクは、殺したいなんて思ってないよ
でも、強くならなきゃって思ったんだ
ボクは強くなっても奪いたくはないけど…
奪わなければ生きていけない者たちもいる
でも強ければ、ボクとボクが守れる範囲のものは、奪われないんだ」
「ふぅん…仕方ない、で片付けるのか」
「ミッディ…オデも…ミッディと一緒にいられタこと…それだケでもよかったんだナ…」
「なっ!なにを流されてやがる…!」
「思えバ…アイツならきっト…すぐに殺すこともできたゾ…
アイツも命を奪わずに無力化したかったんじゃないカ?」
「そんなの…納得できるかよ…」
「じゃああなたは、もし勘違いで私たちをさっき殺してしまっていたとしたら?」
「何?」
「あなたはそうやって負の連鎖を作るのよ
そして呪術師を倒したとしても、今度はその大切な人があなたを殺すわ」
「じゃあ諦めろってことか?」
「だって、アリモーは生きてるじゃない」
「オデも…もうイイ…もう…誰も死なないでイイ…」
「……はぁ…
俺たちがやってきたことってなんだったんだろうな」
「それじゃあ…」
「わかった
それでいいや
だがきっちり呪いは解いてもらうぜ?
それだけは約束だ」
「わかったよ!必ずその呪術師を探してみせる!」
「アミィセンサーの実力、みせてあげるよ~!」
「ありがとな…信じてるぜ」
私たちはアリモーの呪いを解くために行動を共にすることにした
☆前回のあらすじ
アミィセンサーに導かれた一行が辿り着いたのは、真っ赤な熱い水が流れる大河だった
魔法使いが関与していた訳ではなかったが、アミィセンサーがルナにこの惑星が終わりかけていることを再び伝えたかったのだという結論になった
ルナはこのことでまた惑星を救う決意を深めた
「むむぅ…」
アミィが歩きながら妙な声を上げている
「どうかしたの?」
「いやね、あの暑~い場所から離れた途端、やけに寒くなってきたと思わない?」
「いわれてみれば…確かにそうね」
あたりは風もよく吹いていて、それも冷たい
さらにあまり木が見当たらなくなってきたせいで直にその風が身体を冷やそうとしていた
「ねぇ、ルナ
どうだろう
ここはちょっと休んでいかないかい?」
「うーん、確かにそうだけど…」
「まああんまり急いでも仕方ないからね
ルナ、そうした方がいいんじゃない?」
「そうと決まれば早速休める場所を探さないとね!」
「アミィ、寒さに関わらず休みたかっただけなんじゃない?」
「そ…そんなことないよ!」
「まあ私も疲れてきてたしちょうどいいか」
「じゃあとりあえずこの風を凌げるところ!
それだけでも探そう!」
しばらく歩くと洞窟を見つけた
「あ!おあつらえむき!」
「じゃあここで休もうか」
「サン、草を集めましょうか」
「あ、ボクもいくよ~」
「アミィは食べ物を探してほしいかな」
「まかせて!アミィセンサーなら、わけないよ!」
「アミィセンサーそんなのにも使えるんだ…」
「じゃあ安心して任せられるわね!」
「期待して!」
「よし、解散!」
しばらくして、みんなで洞窟に収集品を持ち寄った
「あ、これなら暖かそう!」
「アミィもなかなかやるね!」
「ふふふ~もっと褒めて~」
寝床が作れる程度の草と、全員でも食べきれないくらいの木の実が集まった
「改めて思うとさ、なんか家族以外で食事したり寝たりするのって、ワクワクするよね」
「ほんとね!私もお母さんとばかりだったから、こういうのってちょっと楽しいわ」
「ボクは…」
「あれ?アミィ、なんだか…」
「う…ううん
なんでもないんだ…」
なんだかやけに口数が少ないじゃない
「…アミィ」
「……」
「…お腹が空いたのね!
早く食べるわよ!」
そういうと私は真っ先に木の実を手に取り口に含んだ
「あ、ルナそれ僕が狙ってたやつ!」
「あっちにもあるわよ!
さ、食べましょ食べましょ!」
「……へへっ…!
待て待て~!それはボクがとったやつ~!」
アミィはちょっと元気になったようだ
みんなおなかいっぱい食べて、もう寝ることにした
「くおぉぉ…すふひぃ…」
「サン、うるさい…」
「ね、ルナ…起きてるよね…」
「アミィ…あなたもやっぱりこのいびきに…?」
「あはは…それもあるけど…
…さっきのこと」
「…別にいいのよ
何も話さなくても」
「なにさ、ルナったら
星の巫女のことはあ~んなに聞きたがったのに
ボクのことは興味ないのぉ…?」
「変なトコで拗ねないの…
別に興味がないって言ってるんじゃないわ
ただ、思い出したくないことって、あるじゃない
私だって、サンには…
お父さんのことについて嘘をついたわ」
「ルナでも嘘つくんだ…」
「私を何だと思ってるのよ…
私は別に正直者でもなければ聖者でもないわ
嫌なことは嫌だし
だから星の巫女からも逃げたかったわよ
でもアミィ、あなただって戦ってるじゃない
ユリィズも、ミドーも、命を賭けたじゃない
それで私は星の巫女から逃げないことにしただけよ
だから、別の嫌なことはまだ嫌よ
あなたにだって、お父さんのことは話してあげないわ
…だから、あなたも別に話すことはないわ」
「ルナ…
…いつか、教えて
お父さんのこと」
「じゃあ、あなたの家族のこと、その時は聞かせてもらうわ」
「もちろん!」
夜は更けて、やがて私はすっかりと眠ってしまった
翌朝
「ルナ!大変だよ!」
「…なによ…寝起きに…サン、あなた元気ね」
「いやいや!これを見たらきっと目を覚ますって!」
「そんなこと……!」
私は見事に目が覚めた
洞窟の外が、真っ白になっていた
「なになに~どうしたの~?」
「あ…アミィ…洞窟の外が消えちゃったんだ…!」
「何言ってるのサン…あ、もしかして~…知らないんだな~?」
「な、なにをさ!」
「よし、アミィちゃんが教えてあげよ~!」
「これも魔法なのかしら…?」
「答えはばってん!
これはね、雪、で~す!」
「ユキ…?聞いたことがないわ…」
「よしじゃあ、雨は?!」
「バカにしてる?!それくらい知ってるわ!」
「それと同じくらい単純な話なのさ!」
「…どういうコト?」
「これはね、雨の仲間さ
寒~い場所だと、雨が凍ってね、それが雪になるんだ
なに、寒い場所に住んでいないから知らなかっただけさ」
「へぇ…雨ってこんなになるんだ…」
「じゃあちょっとこの上を歩いてみる?」
「ちょっと怖いけど…行くわ!」
私はこのユキの上にとんでみた
ぼっ!
「ちょ、ちょちょちょ…つつつ、冷たい!」
「そう!雪はとっても冷たいんだ!凍ってるからね
あと、動きにくいよ」
「え…これってもしかして…」
「……うん、ちょっとこのまま進むのは心配かな…」
「どうするのよー!」
「もう我慢していくしかないね!
溶けるまで待ってたらさらに積もるかもしれないし!
まあ夜通し歩いて洞窟もないところで降られるよりはよかったよ!」
「そう言われるとそうだけど…」
「じゃ、いこっか!」
「うぅ…さむ…」
ざっざっざっ、と音を立てて歩を進める
やけに周りの音が静かで、私たちの足音だけが平原にこだましている
もちろん足は冷たい
でも歩かなきゃ、もっとひどくなるってアミィは言ってる
「ねぇアミィ…目的地はまだなの…?」
「う~ん、この平原のどこかにあるみたいだからもう少し進めばあるはずなんだけど」
「じゃあまだ耐えられる…」
「やあ、ルナ、なんだかこのユキは、君みたいじゃないか
透き通った真っ白い身体が、太陽の光を浴びてキラキラ光ってさ」
「ごめん今は…ほんと…」
「………」
「サンは寒さに強いんだねぇ」
「うん、なんか平気みたい
僕が住んでた場所、ユキが降らないまでも寒かったのかな」
「ルナはそれに比べて…」
「うう、うるさい…!」
「それにしても、ユキってのは面白いね
ね、振り返ってごらんよ」
サンにいわれて歩いてきた道を顧みてみる
「これは…」
私たちの足跡がずーっと残っていた
点は線になって、平原に三本の道を作ったみたいだった
「ちょっと…きれいね」
「でもこれもしばらくすると消えちゃうからね
この儚さも、雪の面白いところさ」
「僕はすっかり気に入ったよ」
「私はちょっと慣れないわね…」
またしばらく歩いて
「あ、これ!」
アミィがなにか見つけたようだ
「どうしたの?」
「こんな所に足跡が…」
「足跡ってことは…」
「まだそう遠くない時間にここに誰かがいたのね」
「もしかして…あ、やっぱりそうだ」
「なになに?」
「アミィセンサーがこの足跡に反応してる」
「あ、じゃあこれを追っていけば…?」
「うん!目的地!というか、目的者?」
「魔法使いかな?仲良くなれるといいな」
「そうだね!」
「あぁ…おほん…あのねルナ」
「なに?」
「魔法使い全部は信用しない方がいいよって」
「え?」
「これはちょっといやな話なんだけど…
崩星信者ってのがいるんだ」
「ほーせーしんじゃ?」
「簡単に言うと、惑星を救いたくないやつら
それどころか全部滅んで欲しいっていう破滅を願う者たちさ」
「それって…死にたいってこと…?」
「いや、ちょっと違う
滅んだ先に新たなる世界があるだとかうんぬんかんぬん…
そんな理由で星が破滅することに意味があるらしくて、みんなを巻き込んででも星を破壊しようとする過激なやつらがいるんだよ」
「そんなキケンなやつらが魔法使いなんてさらにキケンじゃない…」
「ま、アミィセンサーに指定されるような子はそんな危険なやつじゃないと思うから!アミィセンサーの目的地の魔法使いに関しては安全だと思ってよ!」
「じゃあもしアミィセンサーと関係なく遭遇した魔法使いがいたら、気をつけてってことね」
「そういうこと!」
そうこういってるうちに平原の先に誰かの影が見えてきた
「あ、あれ!」
「魔法使いだ!」
「どうする?とりあえず呼んでみる?」
「そうしよ!おーい!」
謎の影は振り返ったかと思うとまっすぐこちらに走ってきた
「あれ?ねぇ、アミィ、大丈夫だよね?」
「あ、当たり前でしょぉ?アミィセンサーの示した子なんだよぉ?」
その影が顔を認識できるほどに迫った時、その子は片手を上げながら走る形に変わった
「え?なになになにあれ?!」
その手の上の空気がゆらゆら揺れているようだった
やがて手の上には橙色の光が集まってきて、小さな太陽みたいになった
そしてそれを…私たちに向かって勢いをつけて投げつけてきた!
「ちょっとぉ!あれなによアミィー!」
「おっかしいなぁ~!」
逃げようとして背を向けると…
「ばは~っ!!」
「うわわわわー!」
顔になにかを被せたような魔法使いがそこにいた
「えー!誰ー?!」
「ぶぇひへひへ!バレちったぁ!
じゃ、作戦変更~!」
その魔法使いが口笛を吹くと、先程光球を投げてきた魔法使いがさらにスピードをあげて迫ってきた
「うわー!なんなんだよキミたちはー!」
「待ってサン!冷静に!話せばきっとわかってくれるわ!」
私たちはおとなしくなった
「んン?なんだァ?もうお終いかぁ?
よし、それならば…サヨナラだ…っ!」
彼は鋭い爪を振りかざした
「ちょーっと!話が違うよルナぁー!」
「わかってくれるんじゃないのー?!」
「いや!こいつら多分崩星信者だ!」
「さっきいってたやつ!」
「んぁ?オマエ…今崩星信者って言ったなァ?」
「言ったよ!それがなに!」
「やっぱりそうダ…!おいミッディ…!やっぱりコイツラが崩星信者ダ!」
「え?なんか言ってることおかしくない?」
「キミたちが崩星信者なんでしょ!?」
「ミッディ!コイツラの言ってることヘン!はやく倒すゾ!」
「待てよアリモー!ちっと誤解があるみたいだぜ?」
「あ、この人は話が通じそう…」
ミッディと呼ばれた方がアリモーと呼ばれた方に声をかけると、彼の動きが止まった
「えーっと、つまり?」
「ボクたちは星の巫女とその連れで、星を壊すんじゃなくて救うために旅をしているんだよ!」
「なるほどな…よくわかった
アリモー、こいつらはオレたちの敵じゃない
…行くぞ」
「ま…待ってください!
あなたたちは…?」
「てめぇらには関係ねェ
…と言いたいとこだが…お前らがほんとに星の巫女ってんなら話は別かもしれんな…
よし、いいだろう
話をしてやる」
「な…なんか…上からだね…」
「しっ…聞こえるよサン…」
「何をコソコソしてやがる
オレたちは暇じゃねェんだ
何も話すことはねェってんなら終わりにするぜ」
「ま、待って待って!えーっと…じゃあ自己紹介から!はじめましょ!」
「……ミッディだ
そんでこいつがアリモー…終わりだ」
「えーっと…じゃじゃあ…私はルナ!星の巫女の使命で星の降る丘へ向かってるの!」
「僕はサン!えっと…ルナのつきそい!」
「ボクはアミィちゃん!アミィ・ユノンの名をついで!果たすは星を救うこと!星の巫女ルナを見事探し出して星の降る丘へ導く旅の最中さ!この旅もボクのアミィセンサーのおかげでほんとに色々と助かってるからね!というかアミィセンサーなかったらその時点でもう終わってるからね!ボクがいなきゃほんと始まらない!」
「おい、もう黙れ…」
「しゅん…」
「で?その星の巫女サマが、こんな場所になんの用だい?」
「それがね…そのアミィセンサーってやつの目的地が…あなたなの、ミッディ」
「オレが?はっ、オレは星の降る丘じゃあねぇぜ」
「それはまあわかるんだけど…あなたって魔法使いでしょ?多分そのせい
アミィセンサーはあなたみたいな魔法使いの許に私を導くの」
「そうかい
でもオレがしてやれることなんてねぇぞ
こいつの世話だけで手一杯だってのに…」
ぼやくように言ってミッディはアリモーのことをちらりと見た
「彼は…弟さん…?」
「…余計な詮索は無用だ」
「ごめん…」
「……ミッディ…コイツラになら…別にいいゾ」
「へぇ…珍しいな
なんか感じるのか?アリモー」
「いや…星の巫女っテ…オデも知ってル…
オデたち…協力すベキ…」
「…ちっ…生意気になったもんだ
まあいいや
教えてやるよ」
「まずハ…悪かったナ…」
「いや、いいのよ
よく考えると私たちも軽率だったわ
崩星信者についてきいたばかりだったのに…」
「まあオレたちは崩星信者じゃあねぇんだけどな」
「魔力もったヤツ…倒そうとしてタ…スマン…」
「もう謝るのはいいだろ?とりあえずお前のことについて教えてやんねぇと話が進まねぇよ…」
「ゴメン…」
「お前らもなんとなくわかったろうが、こいつはちっと話し方が違ぇだろ?」
「なんか片言だよね」
「こいつはな、オレの弟でもなんでもねぇよ」
「そうなんだ…じゃあ相棒かなんか…?」
「そんなモンでもねぇ…言うなら…道具ってとこか」
「道具?!」
「そうだ
オレの望みを叶えるために動いてもらう
そんな道具さ」
「キミは…ひどいヤツだな…」
「……ふんっ」
「ほんとなの…?アリモー…」
「それハ…」
「余計なことを言うな」
「あウ…」
「そんなわけでこいつはオレとは生まれも育ちも違うからこんな変な言葉遣いなんだ
それと、魔力を持ったやつを追ってる理由
簡単に言えば、崩星信者を見つけ出して打ち倒すため、だな」
「……キミさ、嘘ばっかりだね…」
「あん…?」
「別にいいんだよ
キミがホントのこと言いたくないのはわかった
でもさ、アリモーはきっとボクらのこと信じてくれてるんだよ
それでキミに託しているのに…それはないんじゃない?」
「なにを根拠に…」
「ボクにはわかるよ
だってキミたちは家族でしょう?」
「…!」
「……呪いのニオイがしたんだ
アリモー…キミからさ
そのマスク…多分オシャレなんかじゃないよね」
「………おい、アミィ…
それを知ったところでお前には何ができるんだよ?」
「ボクたちが導かれたのには理由があるに違いないんだよ
今回はきっと、キミたちを救うために
…違ってたら、ごめんね?」
「……ふっ…冗談じゃ済ませねぇからな」
ミッディがようやく少し和らいだ気がした
「そこまでわかってんならもういいや
そう、こいつはオレの弟
で、魔力を持ったやつを追ってんのは、こいつの呪いの元凶かもしれねェから
崩星信者は呪いに長けてるから崩星信者を探してるってのは嘘じゃあねぇけどな」
「回りくどいね、キミも
なんでホントのこと言わないのさ」
「……オレがやるって決めたんだ
だからお前らも…もし呪いをかけたやつが見つかったとしても…トドメは俺に刺させてくれ…頼む…」
「やっぱり…呪いをかけたヤツは…殺すつもりなんだね」
「当たり前だ!
アリモーはもう5年もこのままなんだ…このマスクを外すこともできず…片言でぼーっとしてやがる……
最初の頃は話すことさえできなかったんだ…」
「…敵がどんな悪党でも…ボクは殺しはしないよ」
「綺麗事だね
じゃあお前らのツレがそいつにやられたらどうする?」
「……」
「私は…赦すわ」
「ルナ…」
「私たちが目指す目標も、そいつらが目指す目標も、お互いにとっては正反対
分かり合えるはずはないのよ
でもだからこそ、私たちがそいつらの邪魔になってることも否定はできないわ
私たちはお互いに赦し合いその志を折り合わなきゃならないわ」
「つまり…それは殺すことを正当化したいってことかい?」
「…そうね
衝突は避けて通れないでしょうから…私たちは星が滅べば死ぬことになるし…崩星信者も星が滅ぼせないと未来はないと思い込んでるわ
思想が違う相手に何を言っても無駄よ
その権利を奪うか奪われるか、それだけ」
「お前の方がリアリティがあって良い意見だ
そう、アイツらはきかねぇんだ
何を言ってもだ
そんなやつに、弟の呪いを解いてくださいなんてお願いしても無駄さ」
「それでもボクは…」
「お仲間だってやらなきゃならねぇって言ってんだぜ?」
「……ボクはもう殺すのも殺されるのも嫌なんだ…」
「もしかしてアミィ…わかったわ
私ももし困難だったとしても相手を打ち倒すようなことは考えない」
「おいおいあんたもか…
じゃあオレは一体この恨みをどうすりゃいいんだよ
5年もこいつがこんなになっちまってよ…」
「でも気持ちはそこにあるんじゃないか
…こんなことは言いたくないけどさ
死ななかっただけ…いいよ…」
「お前に何がわかるんだ!」
「わかるよ!
……わかるんだ
ボクだって…大切な人を殺されたんだ…」
「……ちっ…
それで?お前はそいつをどうしたんだ?」
「……」
「なんだ、泣き寝入りか?
そりゃあな、お前にはやり返す力がなかったんだろ
どれだけ殺してやりたいって思った?
なあそうだろ?」
「違う!そんなことない!
ボクは…ボクは…」
「もうやめなよ!」
「…ううん、ボクは、殺したいなんて思ってないよ
でも、強くならなきゃって思ったんだ
ボクは強くなっても奪いたくはないけど…
奪わなければ生きていけない者たちもいる
でも強ければ、ボクとボクが守れる範囲のものは、奪われないんだ」
「ふぅん…仕方ない、で片付けるのか」
「ミッディ…オデも…ミッディと一緒にいられタこと…それだケでもよかったんだナ…」
「なっ!なにを流されてやがる…!」
「思えバ…アイツならきっト…すぐに殺すこともできたゾ…
アイツも命を奪わずに無力化したかったんじゃないカ?」
「そんなの…納得できるかよ…」
「じゃああなたは、もし勘違いで私たちをさっき殺してしまっていたとしたら?」
「何?」
「あなたはそうやって負の連鎖を作るのよ
そして呪術師を倒したとしても、今度はその大切な人があなたを殺すわ」
「じゃあ諦めろってことか?」
「だって、アリモーは生きてるじゃない」
「オデも…もうイイ…もう…誰も死なないでイイ…」
「……はぁ…
俺たちがやってきたことってなんだったんだろうな」
「それじゃあ…」
「わかった
それでいいや
だがきっちり呪いは解いてもらうぜ?
それだけは約束だ」
「わかったよ!必ずその呪術師を探してみせる!」
「アミィセンサーの実力、みせてあげるよ~!」
「ありがとな…信じてるぜ」
私たちはアリモーの呪いを解くために行動を共にすることにした
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