星の降る丘へ

瀬戸森羅

文字の大きさ
11 / 15
星の降る丘へ

第11話 呪いの行方

しおりを挟む
第11話 呪いの行方


 ☆前回のあらすじ
 旅を続けるうちに、今の惑星を救うのではなく、今の惑星が滅んだ後に救いがあると信じる崩星信者がいることをアミィに伝えられたルナとサン
 その話をきいた新雪の積もる平原で、魔法使いの襲撃を受けた一行
 崩星信者の襲撃かと思ったが逆に崩星信者に呪いをかけられ、呪術師を探す者たちだった
 アリモー、ミッディという彼らは復讐を望んでいたが、アミィに諭され解呪をしてもらうためにその呪術師を探すべく行動を共にした


 「おい、まだか?」

 「アミィセンサーはね…こう…気長に待つもんだよ…」

 私たちはユキで真っ白になった平原を延々と歩いていた

 「ねぇ…寒いわ…」

 「ルナはそればっかりだね!僕はもうすっかり慣れた!」

 「あなたは最初から平気そうだったじゃない…」

 「オレたちも寒さには慣れてるが…流石に冷えてきたな」

 「雪が降ってるわけじゃないからまだいいと思うけどなぁ」

 「アミィは逆によく平気ね…」

 「平気じゃないよ~
 ボクは我慢してるの!」

 「えらいねアミィ」

 「えへへ~」

「それで目的地はどうかな?」

 「そろそろらしいよ」

 「ほんとか?!」

 「う、うん」

 「一体どこだ?!」

 「あ…あの、ミッディ
 忘れてないよね?」

 「も…もちろんだ
 冷静に、だろ?」

 「そうだよ!」

 「よし…行ってやろうじゃねェか…」

 アミィセンサーの目的地についた

 「……誰だ?」

 ユキの積もる平原の中に、ユキの積もってない円があった
 その中心に、それはいた

 「オレはミッディ、こいつはアリモー
 …なぁ、お前
 オレたちの名前に聞き覚えはないか…?」

 ミッディの声は震えていた
 きっと色々な思いを堪えているんだと思う

 「ミッディ…アリモー…そうか……
 では私は…ここまでなのだな…」

 「やはり…お前が…!」

 「ミッディ!」

 ミッディはそれに飛びかかろうとしたが、咄嗟に叫んだサンの声に手を止めた

 「すまねェ…!つい…」

 「とりあえズ…話を…きかせてクレ…」

 「…すぐに殺されると思った
 お前たちにはそれほどのことをしたと…そう覚悟していた…」

 「いや…こいつらに会わなきゃ確かにすぐ殺していたかもしれないな」

 「何度詫びをしても許されることではない…
 私は私のためにお前たちを犠牲にした…」

 「はっ…それじゃあお前は何と引き換えにオレたちを犠牲にしたってんだ?」

 「……お前たちは…崩星信者の掟を知っているか…?」

 「ンなもん…知るわけねぇだろうが…」

 「崩星信者は…この星に未練を残してはならない…
 それは例え己の愛する者ですら…」

 「愛する…?おいどういうことだ」 

 「まさカ…オマエ…」

 「愛する息子たちでさえ…残すことは許されなかった…」

 「オヤジ…?」

 「そうだ…お前たちは私の息子…
 アリモー…お前の呪いは崩星信者からお前の存在を隠すためのものでもあったんだ…」

 「じゃあなんでオレにはかけなかったんだ?」

 「アリモーには…特殊な波長があった…
 ミッディと違って崩星信者の仲間にその存在を知られてしまった…」

 「それで…なんでオレたちを消さなかった?
 お前は崩星信者なんだろう?」

 「私は確かに全てを犠牲にする覚悟があった…
 だが…お前たちと過ごす日々は…確かに私に未練を残したよ…」

 「……最後だ
 お前は…助かるのか?」

 「……流石にわかるか…
 そう、今の私はここに磔にされている…
 簡単な話だ…
 私はこの星に未練を残したことを仲間に知られてしまった…
 崩星信者の掟は重い…
 彼らはまたそれに従順だ…
 私はこの星に縛られたことを知られ、文字通りこの星に縛られたのだ…」

 「じゃあこの円からはもう出られないってこと…?」

「その通りだ…」

 「……まあ、オヤジが生きていたことすら、オレたちは知らなかったんだがな」

 「オヤジ…オデ…もウ許すことにしたんダ…
 だかラ…帰っテきてクレよ…」

 「それは無理だ…アリモー…
 お前には辛い5年だったろうに…許してくれてありがとうな…
 でもやはり無理なのだ…」

 「うウ…オデ…カナしい…」

 「悪いなオヤジ
 オレはこいつほど幼くない
 こいつは誰かのせいであまり賢くないままなんだがな
 …だから、オレは当然だと思うぜ
 お前にゃこれがお似合いってことだ」

 多分ミッディはまた嘘をついていたんだと思う
 今度は私にもよくわかった

 「ねぇオヤジさん」

 「デイズだ…」

 「デイズさん、アリモーはずっとこのままなの?」

 「私にはその呪いを解くことができる」

 「それじゃあ…!」

 「……ああ…今、解いてあげようね…」

 デイズさんは悲しいのか嬉しいのかよくわからない表情をしていた
そしてその様子をさっきから黙ってみていたアミィは、もっと複雑そうな顔をしていた

 「…アミィ、どうしたの?」

 私はそっとアミィに声をかけてみた

 「ううん、なんでもないよ」

 アミィはちょっとだけぎこちなく笑った


 「よし、じゃあオヤジ
 頼むぜ」

 「…わかった…しかし…大きくなったな、ミッディ」

 「おいおい、よせよ
 今からおっきくなったアリモーの顔だって見られるんだ
 兄弟そろって顔見せてやんだからさっさとやっちまってくれよな」

 「……ふふ、そうだな…」

 「オデも…はやグ…」

 「待っていてくれ…」

 ちょっとだけ照れ臭そうに急かすミッディと、ワクワクした様子のアリモー
 ようやく呪縛から解放される兄弟
 私はついさっき会ったばかりの彼らのことなのに、なんだか心底嬉しかった

ぱきっ…ぱきぱき…

アリモーの被っているものが音を立てて割れ始めた

 「おお…ついに…!」

 割れ目から光が漏れ始めて、一瞬何も見えなくなった

 「うわっ…!すごいな…!」

 地面にはアリモーの被っていたものが転がっていて、見上げると全てが取り払われたアリモーがそこにいた

 「あぁ…アリモー!ようやくこの日が…!」

 「兄さん、ただいま」

 「お前…!」

 「うん
 全部、わかるよ
 僕はもう、僕なんだ」

 「うぅ…よかったねぇ…」

 気がつくとアミィもサンも泣いていた
 ……私だって…泣いてるけど…

 「ようオヤジ!どうだ!これでオレたちをじ~っくり見られるぜ!」

 「お父さん!やっと会えたんだから!」

 彼らが振り返ると、デイズさんはもうそこにはいなかった

 「あれ?おいおい、この大事な時に何やってんだ…」

 「いや、待って兄さん
 お父さんは、ここから動けない…」

 「いやだって…いないし…」

 「……アミィ、まさか…」

 「………うん」

 「おい!なんだってんだよ!」

 「…呪いさ」

 「呪い?!今解いただろ!」

 「アリモーのじゃない…デイズさんの呪いだ…」

 「ど…どういうことだ…」

 「それだけ崩星信者ってのは残酷で周到な奴らってことだよ…!」

 「まさか…僕が…?」

 「そう…キミの呪いを解いた時…が、その時だよ…」

 「わ…わかるように言ってくれ…なァ…」

 「兄さん…お父さんは…お父さんも…呪われていたんだ…」

 「つまり…?」

 「僕の呪いを解いたら、死ぬんだ」

 「……ふざけんなよ…
 もういいじゃねぇかよ…なんで諦めたヤツにまでそんなことを…」

 「ダメだミッディ!
 それ以上いけない」

 「これが黙っていられるか!オヤジは……」

 「崩星信者だったから」

 「アリモー?!」

 「…仕方がなかったんだ
 僕は、でも、許したんだから
 お父さんは、でも、自分が生きることより
 僕に命をくれたんだ
 うまく言えないけど、きっとそうなんだ
 だからミッディ、もういいんだ」

 ぼろぼろと涙を零しながら、アリモーはミッディを諭した
 
 「報い…か
 はぁ…そうだよなァ…5年も息子を呪っといて…また仲良く一緒に、なんて…虫が良すぎるもんなァ…」

 ミッディは自分に言い聞かせるように呟いた

 「…そうだな
 とにかくアリモー!お前が元に戻ったことが1番大事だもんな!」

 「うん!」

 彼らは吹っ切れたように笑った

 「星の巫女!約束を果たしてくれたな!
 …はじめは疑っちまって悪かったな
 でも今は感謝してるよ!」

 「いや…私は何にもしてないっていうか…」

 「ボクの活躍はルナの活躍でもあるのだ~!」

 「ほんとにアミィに助けられてばっかりだよ…」

 「そんな星の巫女にはちゃんと礼をしてやる
 お前、魔法を覚えたくないか?」

 ……魔法!
 アミィに頼りっきりで何も出来ない私にも、魔法があれば何かできるかもしれない
 覚えたい
 私だって、目の前の、手の届く範囲の仲間を守れる力が欲しい

 「……もちろんだよ!」

 「よし、ならオレがなんとかしてやる」

 「…そもそもそんなことできるの?」

 「お前は星の巫女だ
 本来ならもっと魔法を使えるはずなんだが…
 だから素養はあるってわけよ」

 「お母さんが隠してたみたいで…」

 「なるほどそれでか…
 まあお前にはちゃんと魔力を感じる
 安心しろ」

 「あの~」

 「どうしたの?サン」

 「僕にも、魔法を教えてもらうことは出来ないでしょうか?!」

 「気持ちはわかるが、お前はただのつきそいなんだろ?
 素養なんて……
 ……え?」

 「え?なになになに?!」

 「いやお前……
 おい、アミィ、こい」

 「はいは~い」

 「……知ってたのか?」

 「まだ秘密にしようかと思ってたんだけどね~」

 「なんか理由があるのか?」

 「大きすぎる力は…って感じかな?
 彼の持つそれは、基礎からやってかないと彼自身が飲み込まれかねないからね」

 「じゃあまだその時ではないと…?」

 「う~ん、でもルナが覚えるっていうんなら一緒にイチからやってけばいいんじゃないかなぁ?」

 「わかった、用心しながらやるとしよう」

 「わかってるぅ」

 「…待たせたな、サン」

 「で、どうなの?!」

 「なんか……あった」

 「え…」

 「素養がな…ちょっとあったんで、お前も魔法使えるぞ」

 「…………っ!!やったー!!」

 「おいおい、そんなはしゃぐなよ」

 「だって嬉しいんだ!僕だけ何も無かったんだから!」

 「よかったねサン!」

 「うん!これでつきそいだなんて言わなくてすむよ!」

 「そうと決まればお前らにはちゃんと覚えてから行ってもらうぞ!オレのことは師匠と呼ぶんだな!」

 「はい、師匠!」

 「恩人のお前らにそんなことを言わせるのもちっと悪いか?」

 「いや、私もその方がいいわ
 だから、私を強くしてね、師匠」

 「…へっ!任せろよ!」

 私は強くなる
 この使命を果たすまでは、残酷な崩星信者に狙われることも考えなきゃならないんだ
 自分の身も、仲間も、みんな守れるように
 私は、つよくならなきゃ
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...