星の降る丘へ

瀬戸森羅

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星の降る丘へ

第11話 呪いの行方

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第11話 呪いの行方


 ☆前回のあらすじ
 旅を続けるうちに、今の惑星を救うのではなく、今の惑星が滅んだ後に救いがあると信じる崩星信者がいることをアミィに伝えられたルナとサン
 その話をきいた新雪の積もる平原で、魔法使いの襲撃を受けた一行
 崩星信者の襲撃かと思ったが逆に崩星信者に呪いをかけられ、呪術師を探す者たちだった
 アリモー、ミッディという彼らは復讐を望んでいたが、アミィに諭され解呪をしてもらうためにその呪術師を探すべく行動を共にした


 「おい、まだか?」

 「アミィセンサーはね…こう…気長に待つもんだよ…」

 私たちはユキで真っ白になった平原を延々と歩いていた

 「ねぇ…寒いわ…」

 「ルナはそればっかりだね!僕はもうすっかり慣れた!」

 「あなたは最初から平気そうだったじゃない…」

 「オレたちも寒さには慣れてるが…流石に冷えてきたな」

 「雪が降ってるわけじゃないからまだいいと思うけどなぁ」

 「アミィは逆によく平気ね…」

 「平気じゃないよ~
 ボクは我慢してるの!」

 「えらいねアミィ」

 「えへへ~」

「それで目的地はどうかな?」

 「そろそろらしいよ」

 「ほんとか?!」

 「う、うん」

 「一体どこだ?!」

 「あ…あの、ミッディ
 忘れてないよね?」

 「も…もちろんだ
 冷静に、だろ?」

 「そうだよ!」

 「よし…行ってやろうじゃねェか…」

 アミィセンサーの目的地についた

 「……誰だ?」

 ユキの積もる平原の中に、ユキの積もってない円があった
 その中心に、それはいた

 「オレはミッディ、こいつはアリモー
 …なぁ、お前
 オレたちの名前に聞き覚えはないか…?」

 ミッディの声は震えていた
 きっと色々な思いを堪えているんだと思う

 「ミッディ…アリモー…そうか……
 では私は…ここまでなのだな…」

 「やはり…お前が…!」

 「ミッディ!」

 ミッディはそれに飛びかかろうとしたが、咄嗟に叫んだサンの声に手を止めた

 「すまねェ…!つい…」

 「とりあえズ…話を…きかせてクレ…」

 「…すぐに殺されると思った
 お前たちにはそれほどのことをしたと…そう覚悟していた…」

 「いや…こいつらに会わなきゃ確かにすぐ殺していたかもしれないな」

 「何度詫びをしても許されることではない…
 私は私のためにお前たちを犠牲にした…」

 「はっ…それじゃあお前は何と引き換えにオレたちを犠牲にしたってんだ?」

 「……お前たちは…崩星信者の掟を知っているか…?」

 「ンなもん…知るわけねぇだろうが…」

 「崩星信者は…この星に未練を残してはならない…
 それは例え己の愛する者ですら…」

 「愛する…?おいどういうことだ」 

 「まさカ…オマエ…」

 「愛する息子たちでさえ…残すことは許されなかった…」

 「オヤジ…?」

 「そうだ…お前たちは私の息子…
 アリモー…お前の呪いは崩星信者からお前の存在を隠すためのものでもあったんだ…」

 「じゃあなんでオレにはかけなかったんだ?」

 「アリモーには…特殊な波長があった…
 ミッディと違って崩星信者の仲間にその存在を知られてしまった…」

 「それで…なんでオレたちを消さなかった?
 お前は崩星信者なんだろう?」

 「私は確かに全てを犠牲にする覚悟があった…
 だが…お前たちと過ごす日々は…確かに私に未練を残したよ…」

 「……最後だ
 お前は…助かるのか?」

 「……流石にわかるか…
 そう、今の私はここに磔にされている…
 簡単な話だ…
 私はこの星に未練を残したことを仲間に知られてしまった…
 崩星信者の掟は重い…
 彼らはまたそれに従順だ…
 私はこの星に縛られたことを知られ、文字通りこの星に縛られたのだ…」

 「じゃあこの円からはもう出られないってこと…?」

「その通りだ…」

 「……まあ、オヤジが生きていたことすら、オレたちは知らなかったんだがな」

 「オヤジ…オデ…もウ許すことにしたんダ…
 だかラ…帰っテきてクレよ…」

 「それは無理だ…アリモー…
 お前には辛い5年だったろうに…許してくれてありがとうな…
 でもやはり無理なのだ…」

 「うウ…オデ…カナしい…」

 「悪いなオヤジ
 オレはこいつほど幼くない
 こいつは誰かのせいであまり賢くないままなんだがな
 …だから、オレは当然だと思うぜ
 お前にゃこれがお似合いってことだ」

 多分ミッディはまた嘘をついていたんだと思う
 今度は私にもよくわかった

 「ねぇオヤジさん」

 「デイズだ…」

 「デイズさん、アリモーはずっとこのままなの?」

 「私にはその呪いを解くことができる」

 「それじゃあ…!」

 「……ああ…今、解いてあげようね…」

 デイズさんは悲しいのか嬉しいのかよくわからない表情をしていた
そしてその様子をさっきから黙ってみていたアミィは、もっと複雑そうな顔をしていた

 「…アミィ、どうしたの?」

 私はそっとアミィに声をかけてみた

 「ううん、なんでもないよ」

 アミィはちょっとだけぎこちなく笑った


 「よし、じゃあオヤジ
 頼むぜ」

 「…わかった…しかし…大きくなったな、ミッディ」

 「おいおい、よせよ
 今からおっきくなったアリモーの顔だって見られるんだ
 兄弟そろって顔見せてやんだからさっさとやっちまってくれよな」

 「……ふふ、そうだな…」

 「オデも…はやグ…」

 「待っていてくれ…」

 ちょっとだけ照れ臭そうに急かすミッディと、ワクワクした様子のアリモー
 ようやく呪縛から解放される兄弟
 私はついさっき会ったばかりの彼らのことなのに、なんだか心底嬉しかった

ぱきっ…ぱきぱき…

アリモーの被っているものが音を立てて割れ始めた

 「おお…ついに…!」

 割れ目から光が漏れ始めて、一瞬何も見えなくなった

 「うわっ…!すごいな…!」

 地面にはアリモーの被っていたものが転がっていて、見上げると全てが取り払われたアリモーがそこにいた

 「あぁ…アリモー!ようやくこの日が…!」

 「兄さん、ただいま」

 「お前…!」

 「うん
 全部、わかるよ
 僕はもう、僕なんだ」

 「うぅ…よかったねぇ…」

 気がつくとアミィもサンも泣いていた
 ……私だって…泣いてるけど…

 「ようオヤジ!どうだ!これでオレたちをじ~っくり見られるぜ!」

 「お父さん!やっと会えたんだから!」

 彼らが振り返ると、デイズさんはもうそこにはいなかった

 「あれ?おいおい、この大事な時に何やってんだ…」

 「いや、待って兄さん
 お父さんは、ここから動けない…」

 「いやだって…いないし…」

 「……アミィ、まさか…」

 「………うん」

 「おい!なんだってんだよ!」

 「…呪いさ」

 「呪い?!今解いただろ!」

 「アリモーのじゃない…デイズさんの呪いだ…」

 「ど…どういうことだ…」

 「それだけ崩星信者ってのは残酷で周到な奴らってことだよ…!」

 「まさか…僕が…?」

 「そう…キミの呪いを解いた時…が、その時だよ…」

 「わ…わかるように言ってくれ…なァ…」

 「兄さん…お父さんは…お父さんも…呪われていたんだ…」

 「つまり…?」

 「僕の呪いを解いたら、死ぬんだ」

 「……ふざけんなよ…
 もういいじゃねぇかよ…なんで諦めたヤツにまでそんなことを…」

 「ダメだミッディ!
 それ以上いけない」

 「これが黙っていられるか!オヤジは……」

 「崩星信者だったから」

 「アリモー?!」

 「…仕方がなかったんだ
 僕は、でも、許したんだから
 お父さんは、でも、自分が生きることより
 僕に命をくれたんだ
 うまく言えないけど、きっとそうなんだ
 だからミッディ、もういいんだ」

 ぼろぼろと涙を零しながら、アリモーはミッディを諭した
 
 「報い…か
 はぁ…そうだよなァ…5年も息子を呪っといて…また仲良く一緒に、なんて…虫が良すぎるもんなァ…」

 ミッディは自分に言い聞かせるように呟いた

 「…そうだな
 とにかくアリモー!お前が元に戻ったことが1番大事だもんな!」

 「うん!」

 彼らは吹っ切れたように笑った

 「星の巫女!約束を果たしてくれたな!
 …はじめは疑っちまって悪かったな
 でも今は感謝してるよ!」

 「いや…私は何にもしてないっていうか…」

 「ボクの活躍はルナの活躍でもあるのだ~!」

 「ほんとにアミィに助けられてばっかりだよ…」

 「そんな星の巫女にはちゃんと礼をしてやる
 お前、魔法を覚えたくないか?」

 ……魔法!
 アミィに頼りっきりで何も出来ない私にも、魔法があれば何かできるかもしれない
 覚えたい
 私だって、目の前の、手の届く範囲の仲間を守れる力が欲しい

 「……もちろんだよ!」

 「よし、ならオレがなんとかしてやる」

 「…そもそもそんなことできるの?」

 「お前は星の巫女だ
 本来ならもっと魔法を使えるはずなんだが…
 だから素養はあるってわけよ」

 「お母さんが隠してたみたいで…」

 「なるほどそれでか…
 まあお前にはちゃんと魔力を感じる
 安心しろ」

 「あの~」

 「どうしたの?サン」

 「僕にも、魔法を教えてもらうことは出来ないでしょうか?!」

 「気持ちはわかるが、お前はただのつきそいなんだろ?
 素養なんて……
 ……え?」

 「え?なになになに?!」

 「いやお前……
 おい、アミィ、こい」

 「はいは~い」

 「……知ってたのか?」

 「まだ秘密にしようかと思ってたんだけどね~」

 「なんか理由があるのか?」

 「大きすぎる力は…って感じかな?
 彼の持つそれは、基礎からやってかないと彼自身が飲み込まれかねないからね」

 「じゃあまだその時ではないと…?」

 「う~ん、でもルナが覚えるっていうんなら一緒にイチからやってけばいいんじゃないかなぁ?」

 「わかった、用心しながらやるとしよう」

 「わかってるぅ」

 「…待たせたな、サン」

 「で、どうなの?!」

 「なんか……あった」

 「え…」

 「素養がな…ちょっとあったんで、お前も魔法使えるぞ」

 「…………っ!!やったー!!」

 「おいおい、そんなはしゃぐなよ」

 「だって嬉しいんだ!僕だけ何も無かったんだから!」

 「よかったねサン!」

 「うん!これでつきそいだなんて言わなくてすむよ!」

 「そうと決まればお前らにはちゃんと覚えてから行ってもらうぞ!オレのことは師匠と呼ぶんだな!」

 「はい、師匠!」

 「恩人のお前らにそんなことを言わせるのもちっと悪いか?」

 「いや、私もその方がいいわ
 だから、私を強くしてね、師匠」

 「…へっ!任せろよ!」

 私は強くなる
 この使命を果たすまでは、残酷な崩星信者に狙われることも考えなきゃならないんだ
 自分の身も、仲間も、みんな守れるように
 私は、つよくならなきゃ
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