異世界転生補佐官になったけど担当女神が幼すぎる

瀬戸森羅

文字の大きさ
51 / 257
普通な俺は転生しても普通を目指す

ガレフへ

しおりを挟む
 ガレフには、多くの魔法生物たちが潜んでいる。
 それ自体は別に悪いことではない。
 言うなれば魔法生物たちにも俺たちと同じような暮らしがありある種の生活を営んでいるわけだ。
 だから、冒険者たちがガレフに進行し、宝を奪いに行く行為は略奪に近い。
 アミィが忌避しているのはその部分だろう。
 彼女も人間に迷惑をかける魔法生物に対してはどうすることもできないと思っているだろうが、人間がそれと同じことをするな、と。そう言いたかったに違いない。
「では、頼みましたよ」
 呼び出された宿屋にてルルーさんが俺に真剣な眼差しを向ける。
『……はい』
 それをわかっていながら、今回俺はガレフに潜ることになる。
 一体そこがどういう環境で、どんな生命が育まれているのか。それを見定めなければ……。
「アミィの言ったことならば、あまりお気になさらずに。ガレフに生息する魔法生物には意思疎通の可能な種はそこまで多いわけではありません。襲われたら、簡単に命をくれてやるわけにもいかないでしょう?」
『では……俺たちが干渉しなければ相手も被害を被ることはないのでは?』
「それは確かにそうですが、だからといって魔法生物の蔓延る場所を放置しておくわけにもいきません。共存というのは完全な平和が保証された時にしか成立し得ないのです。逆にいえばどちらかが脅威と感じたならば、互いにそれを弾圧しなければならないこともあります。見逃してやる、などというのは完全なエゴです。余程余裕がある時にしかそんなこと言っていられませんよ。そもそも……」
『ああっ……その、すみません。わかりました』
 またルルーさんの長い話が始まってしまいそうだったのでとりあえず話を切らせてもらう。
「……まぁ、気をつけてくれたらそれで良いです」
『それで……ガレフにはどうやって移動を?』
「ここからそんなに離れていませんので徒歩で移動してもらいます」
『そんなこと言ったって……普通に数十キロはあるとききましたよ?』
「あなたの身体ならば大した距離ではないでしょう?」
 ルルーさんはあっさりとそう言う。
『え、俺チカラ解放してもいいんですか?』
「ガレフの中ではそのチカラは大いに役に立つでしょう。あなたをスカウトした理由ももちろんそのチカラですから。あまり生態系に甚大な被害を与えさえしなければ大抵のことは大目に見ましょう」
 いいのかな……。
「あ、でも人里から一キロは離れたところで解放してくださいね」
 流石にそうしないとまずいか。
『じゃあ、行ってきますよ。……と言っても何をするのかイマイチわかんないんですけどね』
「それに関しては到着後にお話しましょう。外套をはずしてもその首輪だけははずしてはいけませんよ」
『わかりました』
「では後ほど」
 ルルーさんに軽く会釈して俺はその場を後にした。


『さて……』
 村から出て徒歩で歩くこと数十分。流石にもう見回す限りには人里は見えない。
『えー……マークです。今からこれはずすんでよろしくお願いします』
『了解しました。お気をつけて』
 通信機を介してルルーさんの応答が聞こえたのを確認して外套をはずす。
『ぐ……っ!』
 久々にチカラが開放されると、自分の内から湧き上がるとてつもない魔素に身体が弾け飛びそうになる。
 深呼吸をしてそれを抑え込む。
 息を吸って吐く度に周囲の草花が吹き飛んでいく。
『うぅ……ああああぁぁああぁあ!』
 俺を中心として円形に地面が抉れて剥き出しになる。
『……ちょっとこれ、加減とか考えてる場合じゃないかもな……逆の意味で』
 自分が強すぎる。これでは脅威と思われても当然かもしれない。
『……ふぅ、仕方ないか』
 俺は掴んだままにしておいた外套を再び羽織る。
『……えー、こちらマーク。あの、やっばりあれつけておきます』
『どうしてですか?』
『話し合いが通じる相手にはこの姿は刺激が強すぎるからです』
『なるほど。飽くまであなたは対話をしにいくのですね』
『申し訳ないですけど、とりあえずはこのまま行かせて欲しいです』
『わかりました。身体は丈夫なままですので死ぬことはないでしょうが、もし危なそうなら迷いなくその外套を外してくださいね』
『ありがとうございます。それではまた』
 通信を切ってから、移動手段をどうするべきかと思い出す。
『あー……流石に遠いよな』
 そう思ったところで、後ろから声が聞こえてきた。
「おぉ~い! ご~しゅじんさまぁ~!」
『この声は……!』
 後ろを振り返ると獣の姿をしたフィーナが走ってきた。
「置いてっちゃうなんてひどいですよぉ! オレだって今まで村を護ってきたんですからねぇ~!」
 そしてあっという間に俺の前までたどり着いてしまう。
『来ちゃったの?』
「オレはいつだってご主人様にお供いたしますよ!」
『ありがたいけど……危ないからなぁ』
「いいんですよっ! 今まで散々危ないこと乗り越えてきましたから!」
 フィーナは牙を見せて笑った。
『まぁいいけど……今ちょっと問題があってな』
「あ、なんとなくわかりましたよ? 足が無いんですね!」
『察しがいいな』
「それなら丁度良いじゃないですか! オレに乗ってください!」
『え、大丈夫?』
「ホネと皮でできたご主人様なんてわけないですよ!」
 そう言って頼もしく笑うがちょっと煽られてる気もするな……。
『お前がそう言うなら頼むよ。実は結構困ってたんだ』
「おまかせあれ!」
 乗るように背をみせるフィーナに応えてゆっくりと跨る。
「うおっ」
『だ、大丈夫か大丈夫か?』
「ちょっとびっくりしただけっす! さぁ~行きますよ~!」
 フィーナはすぐさま体勢を整えると走り出す。
 風を切って景色がどんどん後ろに流されていく。
『速いなお前!』
「伊達に草原駆け抜けてないですからねっ!」
 地平線の先が、唐突に無くなる。
『あっ! まさかあれが……?』
「見えましたね! ガレフの大穴です!」
 実際に目の当たりにすると、それは大穴というにはあまりにも大きい。
 もはや穴なんて言葉では片付けられないくらい大きなものだ。
『え……これ、どこからどこまで?』
「ん~とにかく大きいですね」
『向こう岸も霧で見えないし穴の中もほとんど見えない……』
「準備は良いですか?」
『お、おうっ!』
 怖気付く気持ちを抑えつつ、気合いを入れるべく一声吠える。
 果たしてこの先に待つものは……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

処理中です...