異世界転生補佐官になったけど担当女神が幼すぎる

瀬戸森羅

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普通な俺は転生しても普通を目指す

タセフィ区

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 光を抜けてようやく目が見えるようになると、そこに広がっていたのは広い草原だった。
 青空もあるし太陽だって輝いている。
『お、おい……ここ、洞窟の中だよな?』
「さっき話したじゃないですか! 全部魔素のせいです!」
 それは聞いていたが……見渡す限りの大空が全て偽物ってことなのか?
『あー、あー、聴こえますか?』
 通信機からルルーさんの声が聴こえてきた。
『あ、ルルーさんですか』
『はいそうですよ。進捗を聞きたいのですが』
『ちょうど今ひとつ目の洞窟を抜けたところです。驚いたことに目の前には広大な草原が広がっています……』
『そこはタセフィ区と区分している場所です。ガレフの第一階層です。そこはいわばエントランスのような場所。あなたが出てきたようにひとつ目の洞窟を踏破すると行き着くんです。そこからまた様々な迷宮に入ることが出来ます』
『なるほど……入口は違うのに出口は同じなんて、不思議な場所ですね』
『ガレフは不思議で満ちていますよ。それ故に挑んでいく冒険者たちは後を絶たない……研究は進みますが、もう少し命を大切にして欲しいですね』
 ルルーさんは溜息をつきながら愚痴る。
『あ、そうそう。ガレフは深くて構造も不可解ですが、一度到達した階層への移行は容易なんです。あなたが通ってきたような不思議な光の空間を自由に呼び出せるのでラクに移動できますよ』
『え、そんなんどうやって……』
『魔素にはまるで意思があるようで、それを望めば応えてくれるのです例えば……』
 ルルーさんが言葉を区切る。
「このように」
『え?どのようにですか?』
「ちょ! ご主人様っ!」
 フィーナが急に騒ぎ出す。
『なに今話してるの』
「隣!」
 フィーナがそう言うので隣を見ると……。
『おわっ!』
「はいどうも」
 そこにはルルーさんが立っていた。
『え、え、なんで!? 村からかなり遠いですよね!?』
「先程の話の通り、転移することが出来るのです。不思議を通り越していますけどね……。しかしこれはガレフの階層へしか移動できませんので村や町へ移動することはできません。ガレフに行く際には便利ですが村に帰る場合はしばらく時間が必要ですね」
『これは確かに……研究の対象になるわけですね』
「ええ。もう少し研究が進めばガレフ以外の場所にも自由に移動できるようになるかもしれません。そうしたら世界中の交通事情がひっくり返りますよ」
『ロマンを求めるにはうってつけですね……』
「はい。そんなわけでここタセフィ区には様々な冒険者たちが訪れているわけです。少し歩けば出会えるほどにはそこら辺にいますよ」
『そうなんですか。なら共闘すれば効率的ですね』
「そううまくいけば、ですがね」
『何か問題があるんですか?』
「冒険者たちは欲望のために命をかけて来ているとも言えます。それは私利私欲のためであったり名誉のためだったりと様々ですが、相応の覚悟を持って来ているわけです。親切な人ならそれはいいでしょうけれど、中には他人を利用しようとする者もいるでしょう。得られる物を横取りしたり、荷物を奪う者や、他者を殺めてまで利益を得ようとする悪人までいるでしょう。そういう冒険者たちがいることにも留意すべきです」
『は、はい……』 
「なにかわかっていなさそうな返事ですねぇ……いいですか?ガレフというのは……」
『あー! わかりました! とてもわかりました!』
「……それなら良いですが」
 良くなさそうな顔をしてはいるが長くなりそうなのでここはスルーで……。
「あ、そういえばいっくんはどうしたんですか?」
 フィーナが思いついたようにルルーさんにきく。
「……いっくんをいっくんと呼んでいいと、誰が許可しましたか?」
 ルルーさんが笑顔のままフィーナに言う。しかしその言葉はとんでもない圧を孕んでいた。
「ご、ごご……ごめんなさい……」
 フィーナ、怖くて泣いちゃった。
「……彼は魔法生物擁護派に寝返りやがりましたのであまりガレフには来たがらないんですよね……それもこれも全てあのアミィ・ユノンが……」
 ルルーさんはぶつぶつと独り言のように文句を言い始めたが、はっとしたようにまた笑顔を取り繕う。
「失礼しました。まぁ、魔法生物は駆逐さえ出来ればそれで良いわけですので、いっくんもそこはわかってくれています。なので村の防衛の任には同行してくれるんです。人を護るために、村や町に来てしまった魔法生物は出ていくように説得するけど、魔法生物の住処であるガレフに自ら攻め入るのはあいつらと同じだとかなんとか……ナマイキですよね」
 そう言ってルルーさんは少し笑うが……ジェイクの掲げる理想は俺と似ている。俺も任務さえなければ魔法生物を刺激するようなことはしたくないのだが……。
「マークさんは、ダメですよ?」
『え』
 見透かしたようにルルーさんがそう言って妖しく微笑む。
「アンシェローの所属としてその装束を貸与して自由にさせてあげているんです。何、駆除しろと言っているわけではないのです。ただ技術発展のための研究への協力や魔法生物勢力拡大の阻止への貢献はしてもらいますよと、そういうわけです。いっくんのような来たら帰す、みたいな甘っちょろい戯言は通じないでござりますからね」
『それは……はい』
「この人狼の娘も本来ならば駆逐対象であることをお忘れなく」
「ひっ、ひどい! オレにはフィーナって名前があるんですからっ!」
 フィーナが抗議するようにルルーさんに吠える。
「おや失礼しました。そうですね。今やあなたも私たちの仲間……その首輪も気に入っていただけたでしょうか?」
「気に入るも何も……なんかあるんですかこれ?」
「あら、使っていないんですか」
「……使う?」
 フィーナは首を傾げる。
「ここにボタンがあるんです。それで……」
 フィーナの首輪を弄りながらルルーさんが何やらフィーナに説明している。
「くっ……ふふ、ちょ、ちょっとくすぐったいですぅ」
「じっとしてください」
「あれ」
 急にフィーナが妙な反応を見せる。
「なに……これ」
『どうしたフィーナ!?』
「なんか……くる」
『え?』
「あ……あぁ……あおおおぉぉぉおおおぉぉんっ!」
 大きな遠吠えを上げるとフィーナは獣の姿に変貌する。
 しかしそれはいつもの四足歩行の狼型ではなく、二足歩行のまま人型形態の倍くらいの大きさになったものだ。
 人と獣、両方の性質を併せ持ったような特異な姿をしている。
 人か獣かどっちかを分けていた今までのフィーナの変身と違う、正しく"人狼"のような姿だった。
『ちょっと! フィーナに何したんですか!』
「そう慌てずに……この子の魔素を高めたんです。あなたと逆ですね」
「うぅ……ぐ……止まんない……チカラが……!」
『苦しそうですけど! なんで何の説明も無しにやるんですか!』
「見てもらった方が早いですからね。ふふ」
 笑ってる場合じゃないでしょ!という言葉はもはや通用しなさそうなので飲み込んで、とりあえずフィーナを見守る。
『おいフィーナ! きこえるか! 大丈夫か!?』
「ご……ご主人……様」
『あ、きこえるんだな! どうだ身体は!』
「これ……すごい……身体中が熱くて、今ならなんでもできそうなんです……」
「どうしてそんなに大きくなっちゃったんですか~」
『真面目にやってくださいよ!』
 ふざけたように問いかけるルルーさんにつっこむ。
「まぁその姿なら今までとは比にならない程の戦力になるでしょう。ただし……」
「ただし……?」
 急にルルーさんは言葉を止める。
「な、なんですかぁ」
 フィーナは不安そうにルルーさんに問う。
「……リスクがあるんです」
 悲しそうな顔でルルーさんは答える。
『はぁーっ!? 先に言ってくださいよ!』
「あら、マークさんは随分フィーナちゃんが大事なんですね」
『そりゃあ……もうこいつは仲間だからな』
「ご……主人様」
「まぁリスクなんて言ってもそんなに後引くものではないです。……そろそろですかね」
「あ……なんか……なんか……チカラが……」
 フィーナの身体が急に萎み出す。
 そうして獣の容貌は人のものに戻っていく。
 だが萎むのは止まらない。
「あ、あれ? あれあれあれ?」
 なんとフィーナは子どもくらいの大きさまで縮んでしまった!
「なんですかこれえぇぇっ!」
 高い声でフィーナが叫ぶ。
「数分~数十分はそうなっちゃうんですよ。今は安全なので安心してくださいね」
「あんぜんって! 魔法生物がいたらどうするんですかっ!」
「タセフィ区にはほとんどいないんですよ。いたとしても冒険者たちに狩られてしまうので」
「けっかろんです!」
「ま、とにかくその首輪にはそういう効果もありますので、有効活用してくださいね」
「それはありがとうございますっ!」
 素直だな……。
「さ、それではとりあえず最寄りの店にでも行きましょうか」
 急にルルーさんがまたよくわからないことを言い出す。
『え、店? ここガレフですよ?』
「冒険者たちが集まってるんです。商売人たちにとっては天国ですよ」
 どうやらそんな分野にまで欲望に塗れた者で溢れているらしい。
「それでは早速行きましょう」
 ルルーさんの先導で俺たちは歩き出した。
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