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29.だとしても、それがなんだ?
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仕切り直さなければならない。計画段階で未知の要素が次々に出てくるとは、考えなしの度が過ぎた。
情報を揃えることは『いろはの、い』であるのに、完全に自分の落ち度である。
久世の父と対面するに、納得のいく説明文句をひねり出す時間がなかったため、その場は逃げ出すことになった。
ギリギリではあったものの、久世母の計らいで隣室にてしばらく潜んだあと、彼のプレジデントを借用して西園寺宅へと向かうことができた。
遅かったな、と出迎えてくれた西園寺に事の次第を詰め寄ると、当然のごとく久世の父母の立場関係や兄妹については知っているようだった。
「確かに、あいつには腹違いの兄がいる。父親はフランスだったかヨーロッパのどこかの富豪だったはずだ」
「ご存知でしたら教えてくださいよ」
「おまえが知らないなんて思わないだろ」
それは確かに。恋人なのに今さら知るなんて、自分でも驚いているほどだ。
「なぜ子供もいるのに結婚しなかったのでしょう。身分違いというわけでもないですよね?」
「いや、富豪の息子だが妾の子だったはずだ。詳しいことは知らないが、久世の祖父さんが難色を示したか、もしくは国境なき医師団に入ったという話だから、立派な志とやらで結婚しなかったんじゃないか?」
「……できなかった、ではなく、しなかった可能性もあるってことですか?」
「だから、おそらくだ。知りたかったらあいつの母親に直接聞けよ。ガキの頃から何度か会ったことはあるが、口を効いたところなんてほとんど見たことない。そんな相槌を打つ暇もないほど喋るなんて信じられないくらいだ。あいつが言っていたように、雅紀のことを気に入っているってのはマジだったのか?」
息子の彼氏をお気に召す名家のご令嬢なんて、確かに信じがたい話だが、久世に話した家族のことや職場の愚痴がすべて筒抜けだったことからも、気に入ってくれているのかもしれない。
「演技でないのであれば、好意を持ってくださっているご様子でした」
「ふん。演技かどうか見分けられるだろ? それよりも、あいつが家名を捨てるって話は本気だったのか?」
「ええ。ですが、お母さんのほうも反対する様子はなく、むしろ応援していらっしゃいました」
「働いたこともないご令嬢様だから、先行きなんて考えていないんだろ」
西園寺はそう言って、久世たちの家出計画に関しては非現実的だとして一蹴したものの、驚くことに、だとしたら晶と結婚したほうが早いなどと、手のひらを返すようなことを言い始めた。
家名を捨てて転職することを、自分の父──西園寺議員に訴えれば、それは好都合だとして、手元に置いておくべく手回しをするはずだと言う。
「家名を捨てると言っても、久世首相の孫であることには変わりないんだから、愛人のことは許容するから籍だけでも山科家へ入るよう説得にかかるだろう」
「それは、あの写真を使って拒否すればよいのでは……」
「可能だが、家を出る前提であれば無理に恫喝する必要はない。久世の孫を婿に迎えるなんてお釣りがくるほどだ。おまえらの関係くらい保証してくれる」
「それを承知できるなら、最初からしています」
保証と言っても愛人としてであるはずだし、結婚することになれば結局跡継ぎをつくることになるのだから、久世は潔癖で、って元の木阿弥である。堂々巡りで、何の解決にもなっていない。
「あのな、ここまで付き合ってきて、おまえの嫉妬深さを忘れるわけないだろ。保証ってのは、晶との関係は名目だけで、おまえが立場上本妻でも口を出さないという意味だ。晶に他の種で子供をつくってもらって、今の仕事を続けながら山科の姓を名乗っていればいい」
「そんなの、上手くいくんですか?」
「親父たちに話をつけることはできる。問題はあいつの親父と祖父さんだけだ」
「そこが難題なんじゃないんですか?」
「難題なんてものじゃない。婚姻届を書いて出してしまえば、それで終わりだ」
誰一人当事者のいない場で、西園寺は簡単に言った。
確かにシンプルかつ単純な話ではある。面倒なこともなく、押し切ってしまえばなんとでもなりそうに見える。
しかし、結婚とは一生を縛るものだ。政略結婚となれば簡単に離婚もできないだろう。
山科側と久世を納得させたとしても、単なる口約束でしかないのだから、いつ気が変わってもおかしくない。
久世を信じてはいるものの、晶との仲の良さには不安が拭えない。晶のほうは久世と結婚したい様子なのだし、情に流されて関係を持つ可能性は否定しきれない。
「いえ、それは解決になりません」
「おいおい、そんなに愛人の立場が嫌なのか?」
聞かれて、ようやく気がついた。
愛人の立場なんて御免だ。いくら体面上の婚姻関係だとしても、許容したくない。
妻がいるのに、そばにいさせてもらっている立場なんて嫌だ。
御曹司が結婚するのは当然のことかもしれない。しないなら家名を捨てるのは道理かもしれない。
だとしても、それがなんだ?
自分は一般人で、久世は違う世界の住人かもしれない。だとしてなぜ歩み寄る必要がある?
おまえらの世界の常識なんて知ったことか。
「おっしゃるとおりです」
答えると、西園寺ははっとした顔をして、やれやれと肩をすくめた。
「じゃあ、例の計画を進めるのか?」
「……西園寺さんは手を引いてくださっても結構です」
「引くわけないだろ。おまえがやるならとことん付き合ってやるよ」
「西園寺さんの利益になるものは何もありませんが」
ああ、と答えて西園寺は表情を変えた。
「俺は一度惚れたらしつこい性質でな……それに、ゲームを始めるまえの下準備を手間とも思わない」
どういう意味だろうと背筋を凍らせつつ、一転して真剣な眼差しを向けてきた西園寺は「やるからにはマジでやる」と、意欲を燃やし始めたため、結局のところ協力関係は継続することになった。
※※※
計画を話し合った翌日、会社へ辞表を提出した。
片手間でできることではないし、やるからには保険なんてものも不要だ。
もし失敗に終わったとしたら、久世は結婚することになる。そうなれば、東京に居続けることなどできないし、どちらにせよ仕事は辞めることになるのだからと、躊躇はいっさいしなかった。
西園寺のほうはというと、やるからには本気でと宣言してくれたとおり、驚くほどの行動力を見せてくれた。
数日という早さでアクセスのよい築浅の店舗を探し出してくれたばかりか、家名と資金力に物を言わせて業者に口を効き、あっという間に内装も整えてくれて、わずか一月で形にしてくれのである。
クラブBootlegで10年修行したというバーテンダーを引き抜き、元バーテンダーで情報屋という、うさんくさい中年男性も連れてきた。一人目は納得だとして、情報屋のほうはなぜなのかと問うと、彼の存在はそこらのバーじゃ比較にならないほどの価値があるのだと言う。
オーナー兼店長の座に座った西園寺は、目的を抜きにしても、これで一商売するのだと意気込んだ様子を見せているので、それならばと彼を信じて、自分もこの仕事で骨をうずめるべく覚悟を決めた。
「最短でどれくらいかかると思いますか? あ……おかわり要ります?」
開店前日の今夜、いまだ新しい木材の匂い漂う店内で、この一月毎日のように付き合ってくれている八乙女に、二つの質問を投げかけた。
「今度は別のがいい。なんでぼくに聞くんだよ」
八乙女はポテトサラダに箸をつけつつ、はあと頬杖をついて答えた。これも試行錯誤をして試食してもらっているものだ。
「志信さんの感覚が一番近いと思いまして……じゃあ、マティーニを試してみますね」
シェイカーを持って、カクテルレシピに目を通す。
バーテンダーになるには数年ほど修行が必要なため、即戦力にはなれない。自分は今のところ、例の二人の弟子として日々練習に励む立場だ。
自分が主にすべきことは料理と客の相手であり、仕上げなければならないのは話術。つまり、話題に精通することである。
カクテルや料理の味見をしてもらいつつ、八乙女に付き合ってもらっているのは、未知の世界の常識やニュースを把握しておくためである。
「店に連れて来るよう仕向ければ事足りるじゃん」
「そんなのは、ただ来店してもらうだけに過ぎません。むしろ元も子もなくなります」
「確かに。人のおすすめなんて端から信じないしね」
「ええ。自分の意思で来ていただかないと……どうぞ」
カクテルを注ぎ入れ、グラスを八乙女の前に置く。
ありがと、と言って一口すすった八乙女の表情は変わらない。不味いとまで言わないのは友情からだろう。
「……そうだね。自分で抱いた期待じゃなきゃ、火がつくのは遅くなるからね」
投げやりに答えた八乙女は、マティーニに口をつけたあと、またも大きくため息をついた。
ここ一ヶ月の間、王は常にご機嫌ななめなのである。余裕のある態度は変わらないものの、元気がなく、ちょっと素っ気ない。
「……失敗すると思いますか?」
カクテルを不味いと言わないように、この計画が失敗するであろうことを言わないようにしているのかもしれない。
先手を読まねば生き抜いていけないというだけあり、八乙女の目には先行きが見えているはずだと思えてならないのである。
「そんなのぼくがわかるわけないよ」
「志信さんならわかるはずです」
「わかんないって。何なんだよ」
ご機嫌ななめどころか、苛立ってもいる。どうしたんだろう。
「じゃあ、何が気に入らないんですか?」
「え?」
「付き合うのに疲れたんですか? それならはっきり断ってください」
「違うよ。雅紀くんと過ごせて疲れるわけないだろ」
「じゃあ、何が気に入らないんですか?」
不安なあまり、少々強めの声を出してしまった。
すると八乙女は驚いた顔をして、珍しくも悲しげに目を逸らした。
「どうしたんですか?」
聞くと、八乙女は声を震わせながらぽつりと答えた。
「……雅紀くんが遠い存在になっちゃうじゃん」
王の苛立ちの原因は、心配からのものではなく、成功を予感したがゆえのものだったらしい。
ということは、計画は順調に、いや、バー「Solaris」の先行きは明るいほうへと進んでいるようだ。
情報を揃えることは『いろはの、い』であるのに、完全に自分の落ち度である。
久世の父と対面するに、納得のいく説明文句をひねり出す時間がなかったため、その場は逃げ出すことになった。
ギリギリではあったものの、久世母の計らいで隣室にてしばらく潜んだあと、彼のプレジデントを借用して西園寺宅へと向かうことができた。
遅かったな、と出迎えてくれた西園寺に事の次第を詰め寄ると、当然のごとく久世の父母の立場関係や兄妹については知っているようだった。
「確かに、あいつには腹違いの兄がいる。父親はフランスだったかヨーロッパのどこかの富豪だったはずだ」
「ご存知でしたら教えてくださいよ」
「おまえが知らないなんて思わないだろ」
それは確かに。恋人なのに今さら知るなんて、自分でも驚いているほどだ。
「なぜ子供もいるのに結婚しなかったのでしょう。身分違いというわけでもないですよね?」
「いや、富豪の息子だが妾の子だったはずだ。詳しいことは知らないが、久世の祖父さんが難色を示したか、もしくは国境なき医師団に入ったという話だから、立派な志とやらで結婚しなかったんじゃないか?」
「……できなかった、ではなく、しなかった可能性もあるってことですか?」
「だから、おそらくだ。知りたかったらあいつの母親に直接聞けよ。ガキの頃から何度か会ったことはあるが、口を効いたところなんてほとんど見たことない。そんな相槌を打つ暇もないほど喋るなんて信じられないくらいだ。あいつが言っていたように、雅紀のことを気に入っているってのはマジだったのか?」
息子の彼氏をお気に召す名家のご令嬢なんて、確かに信じがたい話だが、久世に話した家族のことや職場の愚痴がすべて筒抜けだったことからも、気に入ってくれているのかもしれない。
「演技でないのであれば、好意を持ってくださっているご様子でした」
「ふん。演技かどうか見分けられるだろ? それよりも、あいつが家名を捨てるって話は本気だったのか?」
「ええ。ですが、お母さんのほうも反対する様子はなく、むしろ応援していらっしゃいました」
「働いたこともないご令嬢様だから、先行きなんて考えていないんだろ」
西園寺はそう言って、久世たちの家出計画に関しては非現実的だとして一蹴したものの、驚くことに、だとしたら晶と結婚したほうが早いなどと、手のひらを返すようなことを言い始めた。
家名を捨てて転職することを、自分の父──西園寺議員に訴えれば、それは好都合だとして、手元に置いておくべく手回しをするはずだと言う。
「家名を捨てると言っても、久世首相の孫であることには変わりないんだから、愛人のことは許容するから籍だけでも山科家へ入るよう説得にかかるだろう」
「それは、あの写真を使って拒否すればよいのでは……」
「可能だが、家を出る前提であれば無理に恫喝する必要はない。久世の孫を婿に迎えるなんてお釣りがくるほどだ。おまえらの関係くらい保証してくれる」
「それを承知できるなら、最初からしています」
保証と言っても愛人としてであるはずだし、結婚することになれば結局跡継ぎをつくることになるのだから、久世は潔癖で、って元の木阿弥である。堂々巡りで、何の解決にもなっていない。
「あのな、ここまで付き合ってきて、おまえの嫉妬深さを忘れるわけないだろ。保証ってのは、晶との関係は名目だけで、おまえが立場上本妻でも口を出さないという意味だ。晶に他の種で子供をつくってもらって、今の仕事を続けながら山科の姓を名乗っていればいい」
「そんなの、上手くいくんですか?」
「親父たちに話をつけることはできる。問題はあいつの親父と祖父さんだけだ」
「そこが難題なんじゃないんですか?」
「難題なんてものじゃない。婚姻届を書いて出してしまえば、それで終わりだ」
誰一人当事者のいない場で、西園寺は簡単に言った。
確かにシンプルかつ単純な話ではある。面倒なこともなく、押し切ってしまえばなんとでもなりそうに見える。
しかし、結婚とは一生を縛るものだ。政略結婚となれば簡単に離婚もできないだろう。
山科側と久世を納得させたとしても、単なる口約束でしかないのだから、いつ気が変わってもおかしくない。
久世を信じてはいるものの、晶との仲の良さには不安が拭えない。晶のほうは久世と結婚したい様子なのだし、情に流されて関係を持つ可能性は否定しきれない。
「いえ、それは解決になりません」
「おいおい、そんなに愛人の立場が嫌なのか?」
聞かれて、ようやく気がついた。
愛人の立場なんて御免だ。いくら体面上の婚姻関係だとしても、許容したくない。
妻がいるのに、そばにいさせてもらっている立場なんて嫌だ。
御曹司が結婚するのは当然のことかもしれない。しないなら家名を捨てるのは道理かもしれない。
だとしても、それがなんだ?
自分は一般人で、久世は違う世界の住人かもしれない。だとしてなぜ歩み寄る必要がある?
おまえらの世界の常識なんて知ったことか。
「おっしゃるとおりです」
答えると、西園寺ははっとした顔をして、やれやれと肩をすくめた。
「じゃあ、例の計画を進めるのか?」
「……西園寺さんは手を引いてくださっても結構です」
「引くわけないだろ。おまえがやるならとことん付き合ってやるよ」
「西園寺さんの利益になるものは何もありませんが」
ああ、と答えて西園寺は表情を変えた。
「俺は一度惚れたらしつこい性質でな……それに、ゲームを始めるまえの下準備を手間とも思わない」
どういう意味だろうと背筋を凍らせつつ、一転して真剣な眼差しを向けてきた西園寺は「やるからにはマジでやる」と、意欲を燃やし始めたため、結局のところ協力関係は継続することになった。
※※※
計画を話し合った翌日、会社へ辞表を提出した。
片手間でできることではないし、やるからには保険なんてものも不要だ。
もし失敗に終わったとしたら、久世は結婚することになる。そうなれば、東京に居続けることなどできないし、どちらにせよ仕事は辞めることになるのだからと、躊躇はいっさいしなかった。
西園寺のほうはというと、やるからには本気でと宣言してくれたとおり、驚くほどの行動力を見せてくれた。
数日という早さでアクセスのよい築浅の店舗を探し出してくれたばかりか、家名と資金力に物を言わせて業者に口を効き、あっという間に内装も整えてくれて、わずか一月で形にしてくれのである。
クラブBootlegで10年修行したというバーテンダーを引き抜き、元バーテンダーで情報屋という、うさんくさい中年男性も連れてきた。一人目は納得だとして、情報屋のほうはなぜなのかと問うと、彼の存在はそこらのバーじゃ比較にならないほどの価値があるのだと言う。
オーナー兼店長の座に座った西園寺は、目的を抜きにしても、これで一商売するのだと意気込んだ様子を見せているので、それならばと彼を信じて、自分もこの仕事で骨をうずめるべく覚悟を決めた。
「最短でどれくらいかかると思いますか? あ……おかわり要ります?」
開店前日の今夜、いまだ新しい木材の匂い漂う店内で、この一月毎日のように付き合ってくれている八乙女に、二つの質問を投げかけた。
「今度は別のがいい。なんでぼくに聞くんだよ」
八乙女はポテトサラダに箸をつけつつ、はあと頬杖をついて答えた。これも試行錯誤をして試食してもらっているものだ。
「志信さんの感覚が一番近いと思いまして……じゃあ、マティーニを試してみますね」
シェイカーを持って、カクテルレシピに目を通す。
バーテンダーになるには数年ほど修行が必要なため、即戦力にはなれない。自分は今のところ、例の二人の弟子として日々練習に励む立場だ。
自分が主にすべきことは料理と客の相手であり、仕上げなければならないのは話術。つまり、話題に精通することである。
カクテルや料理の味見をしてもらいつつ、八乙女に付き合ってもらっているのは、未知の世界の常識やニュースを把握しておくためである。
「店に連れて来るよう仕向ければ事足りるじゃん」
「そんなのは、ただ来店してもらうだけに過ぎません。むしろ元も子もなくなります」
「確かに。人のおすすめなんて端から信じないしね」
「ええ。自分の意思で来ていただかないと……どうぞ」
カクテルを注ぎ入れ、グラスを八乙女の前に置く。
ありがと、と言って一口すすった八乙女の表情は変わらない。不味いとまで言わないのは友情からだろう。
「……そうだね。自分で抱いた期待じゃなきゃ、火がつくのは遅くなるからね」
投げやりに答えた八乙女は、マティーニに口をつけたあと、またも大きくため息をついた。
ここ一ヶ月の間、王は常にご機嫌ななめなのである。余裕のある態度は変わらないものの、元気がなく、ちょっと素っ気ない。
「……失敗すると思いますか?」
カクテルを不味いと言わないように、この計画が失敗するであろうことを言わないようにしているのかもしれない。
先手を読まねば生き抜いていけないというだけあり、八乙女の目には先行きが見えているはずだと思えてならないのである。
「そんなのぼくがわかるわけないよ」
「志信さんならわかるはずです」
「わかんないって。何なんだよ」
ご機嫌ななめどころか、苛立ってもいる。どうしたんだろう。
「じゃあ、何が気に入らないんですか?」
「え?」
「付き合うのに疲れたんですか? それならはっきり断ってください」
「違うよ。雅紀くんと過ごせて疲れるわけないだろ」
「じゃあ、何が気に入らないんですか?」
不安なあまり、少々強めの声を出してしまった。
すると八乙女は驚いた顔をして、珍しくも悲しげに目を逸らした。
「どうしたんですか?」
聞くと、八乙女は声を震わせながらぽつりと答えた。
「……雅紀くんが遠い存在になっちゃうじゃん」
王の苛立ちの原因は、心配からのものではなく、成功を予感したがゆえのものだったらしい。
ということは、計画は順調に、いや、バー「Solaris」の先行きは明るいほうへと進んでいるようだ。
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