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1章:仕置人たち
第3話 とある不良少年(2)
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切っ掛けは、そいつが毎日弁当を作ってもらってることだった。
俺は毎日200円程度のパンひとつなのに。
そいつは、毎日母親に弁当を作ってもらってる。
チビのくせに。
妬ましく感じて、そいつの仇名を「チビマザコン」にしてやったんだ。
そいつ、黙ってた。
怒らないのがムカついたから、軽くぶん殴ってやった。
それでも何もしない。
金を出せと言ってやった。
別に小遣いが足りてないわけじゃなかったが、ちょっと興味あったんだ。
こいつ、どこまで俺に従うのかな?と。
じゃあ有り金出してきやがったよ。
思わず笑ってしまった。どんだけヘタレなのよ。
毎日毎日有り金奪って、ある日、そいつの財布が空になった。
聞くと、もう貯金も何も無いんだ、とか。
俺は言ったね
「明日までに財布をいっぱいにして来い。そうしないと叩きのめすぞ」
そしたらさ
そいつ、ビルから飛び降りて、死にやがったのよ。
さすがに、問題になった。
俺は学校に居られなくなって、転校した。
そのときに、俺に興味がないと思ってた母ちゃんが、チビマザコンの母親から俺を守ってくれて。
嬉しくて、胸がいっぱいになった。
俺は愛されていたんだ、ってやっと分かったんだ。
「……心当たりがあったか? まぁ、どうでもいいけど」
目の前のヘルメットは、心底興味なさそうにそう言ってきた。
そして立ち上がり、スタスタと近くのフェンスに近寄って。
手に持ってた、俺のスマホを、ブン! と振るった。
すると。
俺のスマホが、日本刀に化けたんだ。
どうやったのか全く分からない。
俺のスマホを何かに捧げて、代わりに日本刀ひとつと瞬時に交換したみたいだった。
そして、ヘルメットはその刀を振るった。
フェンスが斬られ、大きな穴が開いた。
そして、言ってきた。
「さぁ、ここから飛び降りろ。それで僕の仕事は完遂する」
……冗談じゃない!嫌だ!!
俺は逃げようと身を起こした。
幸い、昇降口が今は無人だ!逃げられる!!
だけど。
ドスッ!!
俺のふくらはぎに、何かが突き刺さった。
「ぎゃあああああああ!!!」
痛みにのたうち回る。
のたうち回りながら、見た。
ふくらはぎに、忍者の投げる十字の手裏剣が刺さっていた。
「……手裏剣はまだあるぞ。今『創った』からな」
フェンスの穴の傍で立ったまま手裏剣でお手玉しながら、そいつは淡々と言った。
そいつはさらに続ける。
「お前が知らないだけで、この世にはこういう超能力を持ってるヤツがちょくちょく居る……僕はその1人なんだな」
そいつの意図は良く分からなかったけど……
おそらく……
弾切れを期待しても無駄だ。
これを俺にワカらせるためだったのだろうか?
極めて事務的な口調で、そいつは
「まだ立てるよな?さっさと飛び降りろ。ここは7階建てビルの屋上だが、絶対に死ぬと決まったわけじゃない」
何の感情も無い声で
「運が良ければ助かるよ。まぁ、一生車椅子は避けられんだろうけど」
……そいつの言い方に、俺は震えた。
脅しじゃなく、事実を言ってるだけだ。それが肌で分かってしまったから。
嫌だ……嫌だ……!
「……悪かったと思ってる……羨ましかったんだ……だから……許して!!」
「僕に言われても。お客さんが判断したことだしな。まぁ、諦めて飛び降りてくれ」
……話が通じない!
嫌だ……助けて……母ちゃん……!!
俺は泣いていた。恐怖で。
気が付いたら嗚咽を漏らして泣いていたんだ。
でも、あいつは何も感じないようだった。
「……まだ手裏剣が足りないのか?」
ドスッ!
「あぎいいい!!!」
手裏剣が、俺の頬に突き刺さった。
苦しむ俺に、そいつは続けた。
「……そこで失血死するまで、手裏剣を浴びたいのか? それならそれでもいいが、僕はできればお客さんの要望は叶えたいんだがな?」
フゥ、とため息をつきつつ
「……いいか? そこにいる限り、お前は死ぬまで手裏剣を身体に浴び続けることになるんだが、飛び降りればワンチャン、超低確率だが生き残る目があるんだぞ?」
やれやれ、といった感じで、そいつは言い放った。
「どっちの選択肢が賢いのか、そんなことも分からないくらい、頭悪いのかね? お前?」
ひゅうううううう、という音がやけに大きく聞き取れた。
風が吹いているんだ。
怖かった。
足を引きずりながら、ヘルメットが開けた穴から、フェンスの外に出て。
屋上の縁に立ち、下を見下ろす。
30~40メートルはあるのだろうか?
そんな気がした。足の震えが止まらない。
涙も止まらない。
ここから飛び降りて、生き残る未来が想像できない。
踏み出せば、確実に死ぬ。
でも。
そうしなかったら、もっと確実に、「殺される」
この、ヘルメットに。
だからもう、やるしかないんだ……
チビマザコンのやつが勝手に死んだせいで、こんな目に遭うなんて……!
なんで……なんでだよ……!!?
怖くてたまらなかった。だから、叫んで、自分を奮い立たせた。
「うおおおおおおおおおおお!!」
声が尽きるほど叫んで、身を投げ出した。
重力が、無くなる。
落ちながら、思い出した。
母ちゃんが、全く構ってくれなかった人生を。
ずっと愛されてないと思ってた。
でも、そうじゃなかったとやっとわかったのに。
「母ちゃん……」
これから、だったのに。
ぐんぐん、アスファルトが……迫って……
ドチャ!!!
俺は毎日200円程度のパンひとつなのに。
そいつは、毎日母親に弁当を作ってもらってる。
チビのくせに。
妬ましく感じて、そいつの仇名を「チビマザコン」にしてやったんだ。
そいつ、黙ってた。
怒らないのがムカついたから、軽くぶん殴ってやった。
それでも何もしない。
金を出せと言ってやった。
別に小遣いが足りてないわけじゃなかったが、ちょっと興味あったんだ。
こいつ、どこまで俺に従うのかな?と。
じゃあ有り金出してきやがったよ。
思わず笑ってしまった。どんだけヘタレなのよ。
毎日毎日有り金奪って、ある日、そいつの財布が空になった。
聞くと、もう貯金も何も無いんだ、とか。
俺は言ったね
「明日までに財布をいっぱいにして来い。そうしないと叩きのめすぞ」
そしたらさ
そいつ、ビルから飛び降りて、死にやがったのよ。
さすがに、問題になった。
俺は学校に居られなくなって、転校した。
そのときに、俺に興味がないと思ってた母ちゃんが、チビマザコンの母親から俺を守ってくれて。
嬉しくて、胸がいっぱいになった。
俺は愛されていたんだ、ってやっと分かったんだ。
「……心当たりがあったか? まぁ、どうでもいいけど」
目の前のヘルメットは、心底興味なさそうにそう言ってきた。
そして立ち上がり、スタスタと近くのフェンスに近寄って。
手に持ってた、俺のスマホを、ブン! と振るった。
すると。
俺のスマホが、日本刀に化けたんだ。
どうやったのか全く分からない。
俺のスマホを何かに捧げて、代わりに日本刀ひとつと瞬時に交換したみたいだった。
そして、ヘルメットはその刀を振るった。
フェンスが斬られ、大きな穴が開いた。
そして、言ってきた。
「さぁ、ここから飛び降りろ。それで僕の仕事は完遂する」
……冗談じゃない!嫌だ!!
俺は逃げようと身を起こした。
幸い、昇降口が今は無人だ!逃げられる!!
だけど。
ドスッ!!
俺のふくらはぎに、何かが突き刺さった。
「ぎゃあああああああ!!!」
痛みにのたうち回る。
のたうち回りながら、見た。
ふくらはぎに、忍者の投げる十字の手裏剣が刺さっていた。
「……手裏剣はまだあるぞ。今『創った』からな」
フェンスの穴の傍で立ったまま手裏剣でお手玉しながら、そいつは淡々と言った。
そいつはさらに続ける。
「お前が知らないだけで、この世にはこういう超能力を持ってるヤツがちょくちょく居る……僕はその1人なんだな」
そいつの意図は良く分からなかったけど……
おそらく……
弾切れを期待しても無駄だ。
これを俺にワカらせるためだったのだろうか?
極めて事務的な口調で、そいつは
「まだ立てるよな?さっさと飛び降りろ。ここは7階建てビルの屋上だが、絶対に死ぬと決まったわけじゃない」
何の感情も無い声で
「運が良ければ助かるよ。まぁ、一生車椅子は避けられんだろうけど」
……そいつの言い方に、俺は震えた。
脅しじゃなく、事実を言ってるだけだ。それが肌で分かってしまったから。
嫌だ……嫌だ……!
「……悪かったと思ってる……羨ましかったんだ……だから……許して!!」
「僕に言われても。お客さんが判断したことだしな。まぁ、諦めて飛び降りてくれ」
……話が通じない!
嫌だ……助けて……母ちゃん……!!
俺は泣いていた。恐怖で。
気が付いたら嗚咽を漏らして泣いていたんだ。
でも、あいつは何も感じないようだった。
「……まだ手裏剣が足りないのか?」
ドスッ!
「あぎいいい!!!」
手裏剣が、俺の頬に突き刺さった。
苦しむ俺に、そいつは続けた。
「……そこで失血死するまで、手裏剣を浴びたいのか? それならそれでもいいが、僕はできればお客さんの要望は叶えたいんだがな?」
フゥ、とため息をつきつつ
「……いいか? そこにいる限り、お前は死ぬまで手裏剣を身体に浴び続けることになるんだが、飛び降りればワンチャン、超低確率だが生き残る目があるんだぞ?」
やれやれ、といった感じで、そいつは言い放った。
「どっちの選択肢が賢いのか、そんなことも分からないくらい、頭悪いのかね? お前?」
ひゅうううううう、という音がやけに大きく聞き取れた。
風が吹いているんだ。
怖かった。
足を引きずりながら、ヘルメットが開けた穴から、フェンスの外に出て。
屋上の縁に立ち、下を見下ろす。
30~40メートルはあるのだろうか?
そんな気がした。足の震えが止まらない。
涙も止まらない。
ここから飛び降りて、生き残る未来が想像できない。
踏み出せば、確実に死ぬ。
でも。
そうしなかったら、もっと確実に、「殺される」
この、ヘルメットに。
だからもう、やるしかないんだ……
チビマザコンのやつが勝手に死んだせいで、こんな目に遭うなんて……!
なんで……なんでだよ……!!?
怖くてたまらなかった。だから、叫んで、自分を奮い立たせた。
「うおおおおおおおおおおお!!」
声が尽きるほど叫んで、身を投げ出した。
重力が、無くなる。
落ちながら、思い出した。
母ちゃんが、全く構ってくれなかった人生を。
ずっと愛されてないと思ってた。
でも、そうじゃなかったとやっとわかったのに。
「母ちゃん……」
これから、だったのに。
ぐんぐん、アスファルトが……迫って……
ドチャ!!!
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