15 / 39
1章:仕置人たち
第15話 佛野徹子(5)
しおりを挟む
……だけど……。
ある日、香澄さん一家が住んでる部屋のドアに、忌中札が貼られていた。
この家で、死人が出た。その証だ。
アタシの中の時間が一瞬停止した。
気が付いたら、インターホンを押しまくってた。
ドアを叩きながら。
「山本さん!! 山本さん!!」
しばらくすると、香澄さんが出てきた。
真っ黒い洋服を……喪服を着た。
「あ……徹子ちゃん……」
アタシの顔を見ると、香澄さんは泣きだした。
「……ごめんね。ちょっとオバサン、今余裕が無いんだ……」
「……上がっていいですか?」
何があった、とは聞かなかった。
最悪の予想が出来ていたし、それを口にして、香澄さんをさらに苦しめるのは嫌だったから。
うん。と言ってくれたので、アタシは香澄さんの家に上がり込んだ。
はじめて入る他人の家。
奥の座敷に、祭壇が設けてあり。
遺影がふたつと、骨壺がふたつ。
遺影の片方は、澄子ちゃんの写真だった。そしてもう片方は、会ったことはなかったけど、多分香澄さんの旦那さんの写真。優しそうな、穏やかな男性だったよ。
澄子ちゃんの遺影と骨壺に。赤いランドセルが供えられていた。
……そういえば一週間前、もうすぐ小学校に上がるって話、してたっけ……
それが、なんでこうなるの?
固まっていたアタシの背中に、香澄さんが話し出した。
「……駅前の横断歩道でね。いきなり、暴走したトラックが突っ込んできて……」
「保育園に澄子を迎えに行ってきた旦那と、澄子が巻き込まれて、二人とも死んじゃった……」
「即死で、死体の状況があまりにも酷かったから、直葬してもらって、今ここに居るの……」
「どうしようオバサン……ひとりになっちゃったよぉ……!」
慟哭する香澄さん。
……酷い。酷すぎる。
こんなのってあるの?
何で、こんな幸せな一家が、こんな目に遭わなきゃいけないの?
そのとき。
『恨んでやる! 呪ってやる! 地獄に堕ちろ!』
この前の仕事。
あのとき、仕置にかけたマトのオバサンの最期の言葉が脳裏に蘇った。
アタシ……のせい?
アタシが呪われたから、この人たちに、呪いが飛んだの?
何故か、そう思えてならなかった。
……なんでよ。
……ストレートに、この牝豚の子の汚れた命を取りなよ。
なんで、この人たちの命を取るわけ?
関係ないじゃんか。
呪いにしたって……やり方が酷すぎるよ……!!
気が付くと、アタシも畳に手をついて、涙をポロポロと流していた。
『お姉ちゃん、お姉ちゃん』
『澄子ね、もうすぐ6歳になるんだよ』
頭の中で、澄子ちゃんの言葉が駆け巡っていた……。
ある日、香澄さん一家が住んでる部屋のドアに、忌中札が貼られていた。
この家で、死人が出た。その証だ。
アタシの中の時間が一瞬停止した。
気が付いたら、インターホンを押しまくってた。
ドアを叩きながら。
「山本さん!! 山本さん!!」
しばらくすると、香澄さんが出てきた。
真っ黒い洋服を……喪服を着た。
「あ……徹子ちゃん……」
アタシの顔を見ると、香澄さんは泣きだした。
「……ごめんね。ちょっとオバサン、今余裕が無いんだ……」
「……上がっていいですか?」
何があった、とは聞かなかった。
最悪の予想が出来ていたし、それを口にして、香澄さんをさらに苦しめるのは嫌だったから。
うん。と言ってくれたので、アタシは香澄さんの家に上がり込んだ。
はじめて入る他人の家。
奥の座敷に、祭壇が設けてあり。
遺影がふたつと、骨壺がふたつ。
遺影の片方は、澄子ちゃんの写真だった。そしてもう片方は、会ったことはなかったけど、多分香澄さんの旦那さんの写真。優しそうな、穏やかな男性だったよ。
澄子ちゃんの遺影と骨壺に。赤いランドセルが供えられていた。
……そういえば一週間前、もうすぐ小学校に上がるって話、してたっけ……
それが、なんでこうなるの?
固まっていたアタシの背中に、香澄さんが話し出した。
「……駅前の横断歩道でね。いきなり、暴走したトラックが突っ込んできて……」
「保育園に澄子を迎えに行ってきた旦那と、澄子が巻き込まれて、二人とも死んじゃった……」
「即死で、死体の状況があまりにも酷かったから、直葬してもらって、今ここに居るの……」
「どうしようオバサン……ひとりになっちゃったよぉ……!」
慟哭する香澄さん。
……酷い。酷すぎる。
こんなのってあるの?
何で、こんな幸せな一家が、こんな目に遭わなきゃいけないの?
そのとき。
『恨んでやる! 呪ってやる! 地獄に堕ちろ!』
この前の仕事。
あのとき、仕置にかけたマトのオバサンの最期の言葉が脳裏に蘇った。
アタシ……のせい?
アタシが呪われたから、この人たちに、呪いが飛んだの?
何故か、そう思えてならなかった。
……なんでよ。
……ストレートに、この牝豚の子の汚れた命を取りなよ。
なんで、この人たちの命を取るわけ?
関係ないじゃんか。
呪いにしたって……やり方が酷すぎるよ……!!
気が付くと、アタシも畳に手をついて、涙をポロポロと流していた。
『お姉ちゃん、お姉ちゃん』
『澄子ね、もうすぐ6歳になるんだよ』
頭の中で、澄子ちゃんの言葉が駆け巡っていた……。
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
M性に目覚めた若かりしころの思い出
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる