契約交際

未音

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第3章

プレゼン

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 その後は、金曜日のプレゼンへ向けての準備が始まった。

 一度、部内会議が行われ、大倉さんが作成した企画書以外にもいくつか企画書が提案された。ただ、圧倒的に大倉さんが作成した企画書の完成度が高く、今回の部外へ向けたプレゼンは大倉さんの企画発表がメインになることが正式に決定した。

 そのためにも、プレゼンのためのパワポ作成、企画書の最終修正、発表のための練習などで目まぐるしい毎日を送っていた。

 大倉さんが俺に唯一任せてくれたのは、企画書の中の1ページ。過去5年間で、新商品を販売した時の店舗ごとの売上実績を比較し、今回の新商品をどの店舗で販売するのがいいのかを、特に営業部へ向けてプレゼンする部分だ。

 その他にも資料を配ったり、パワポのスライドを大倉さんの説明に合わせて進めたりと、細々とした仕事は任せられていたが、実際に企画の説明自体に関わるのは初めてだったので、数日前から緊張していた。

 勿論、大倉さんと何度も打ち合わせや練習を行ったけど…それでも不安なものは不安だった。


 そして、いよいよ迎えた金曜日…。

「おはようございます。」

「木田。10時から会議だから先に準備しとくぞ。」

「は、はい!わかりました!」

 俺は、今日会議に参加する人数分の資料を机の上に並べていく。大倉さんはパワポの画面がスクリーンに映るか確認したり、部長と最終確認をしたりと忙しそうにしていた。

 プレゼン開始時刻10分前には、会議室にぞろぞろと人が集まってきた。……さっきまでは大丈夫だって自分に言い聞かせていたけど、いよいよ大丈夫じゃなくなってきたな…。


「それでは皆さんお集まりいただいたようなので、始めさせていただきます。今日、新商品のプレゼンを担当させていただく大倉と助手の木田です。よろしくお願いします。」

「よっ、よろしくお願いいたします。」

「…では、まず1ページ目をお開き下さい。」

 ペラペラと新商品について話していく大倉さん。その話に合わせて、パワポのスライドを進めていく。今のところは順調。
 チラッと周りを見渡すと、大倉さんの話を頷きながら聞く営業部や開発部の人たち。見た感じは良さそうな反応に見える。

「…では、こちらをご覧下さい。木田、よろしく。」

「はい!」

 そして俺は、自分が説明するところのスライドをスクリーンに映し、大倉さんと何度も練習をした説明をし始めようと口を開いた。

「えっと、…ここにあるように……」

 ヤバい……思いっきり、セリフ飛んだ。あんなに練習したのに、頭が真っ白で…


「……私たちの方で、過去5年間の売上実績を比較したところ、A社での売上がどの新商品でも安定して良いのがわかるかと思います。」

 プチパニックを起こしていた俺のフォローをすかさずしてくれた大倉さん。そして、俺の耳元で囁く。


『お前は大丈夫だ。』

 その声で、俺の緊張も解れたみたいで…その後は自分の任された部分の説明をスムーズにすることができた。

 プレゼンが終わると質疑応答があったが、大倉さんは常に淡々としていた。そして、無事プレゼンが終了した。


「お疲れ、木田。」

「お疲れ様でした…。すみません、俺…」

「バカ野郎。」

 そう言われて、頭をクシャっとされる。

 「えっ!?な、何ですかっ!?」

「あれだけ最初に出来たら上出来だ。…自信持てよ、木田。」

「えっ!?あっ…、ありがとうございます!」

 まさか褒められるとは思ってもみなかったので、驚きの方が勝ったけど…初めて大倉さんに褒められたからか嬉し…


「…まぁ、最初から緊張しなきゃ良かったんだけどな。」

「うっ…、すみません…。」

「まぁ、いいだろ。……じゃあ、お前が頑張ったご褒美に好きなもの作ってやるよ。何が食いたい?」

 フッと微笑みながら、小声で俺にそんな事を聞いてくる大倉さん。……さっきの追い打ちの言葉は聞かなかったことにしておこう。

「えっと…じゃあ、オムライスで。」

「わかった。じゃあ、俺は材料買って帰るから先に帰って待っとけよ。」

「わかりました。…じゃあ、大倉さん特製のオムライス楽しみに午後の仕事も頑張ります!」

「…っ、ミスはするなよ。」

「わかってますって!」

 そう言いながら、俺は会議室を後にした。
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