聖女と王子は離縁を前提とした契約結婚をする事にした

花見 有

文字の大きさ
24 / 27

第24話 目覚めた王子

しおりを挟む
 すすり泣くカレンはエリックの手を握り縋るように言う。

「エリック、お願いよ。目を覚まして……。お願い……」

 残った力で僅かばかりの加護を授けるすると、ピクリとエリックの手が僅かに動いた。

「――エリック!?」

 カレンは急いでエリックの顔を覗き込むと、エリックの瞳がゆっくりと開く。

「エリック!エリック……」

 カレンは涙で顔をグチャグチャにしながら、エリックの布団に顔を埋めてエリックの名を呼び続けた。

 エリックはゆっくりと手を動かすと、カレンの頭に手を置いた――




 しばらくして、落ち着いたカレンが顔を上げる。

「エリック、本当に良かった……」

「ああ、なんか、ゴチャゴチャあの女と話してる声が聞こえてたぞ」

 エリックは弱々しく笑う。

「カレン、俺と離縁してヴァーンと結婚するように言われたんだろ?」

 カレンは口を結んで答えはしなかった。するとエリックは続ける。

「……離縁しよう。元々魔王を倒したら離縁するって契約だったんだ……」

 エリックの言葉にカレンは衝撃を受けた。確かにあの契約を交わした時はお互い信頼関係もなかったかもしれないけれど、今はお互いの事を信頼して夫婦としてではなくても、仲間として大切な存在だと思ってくれていると思っていたからだ。

「……え?だ、だってヴァーン王子には魔王は倒せないって……、俺じゃなきゃ無理だってエリックが言ったんじゃない!!それなのに、どうしてそんな事言うのよ!?」

 止まった涙が再びカレンの頬を濡らす。

「ヴァーンとだったら、王国の騎士隊もいるだろうし、魔王に致命傷も与えたし、弱点も分かってる。だから、今の弱っている魔王なら、ヴァーンでも倒せると思う。だから……」

 エリックが言葉を続けようとしたが、それはカレンの声が遮った。

「離縁しないわよ」

 そして、ゆらりと立ち上がって、エリックを強い視線で見つめた。

「何、弱気な事言ってるのよ!魔王を倒すのは自分だって豪語してた時のエリック王子はどこにいったの!?契約は魔王を倒した後で離縁をするんでしょ!?だったら、ちゃんと契約内容守りなさいよ!!」

 言いたい事を言って、カレンがハァハァと肩で息をしているとシーンとした部屋に

「アハハハハハ」

 とエリックの笑い声が響いた。そして、吹っ切れた顔をして笑う。

「わかったよ。俺が悪かった。契約した事はちゃんと最後まで守るよ!」

 二人の様子を陰から伺っていたデヴォンとヘイリーは涙目で頷き合った。


しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

短編)どうぞ、勝手に滅んでください。

黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。 あらすじ) 大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。 政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。 けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。 やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。 ーーー ※カクヨム、なろうにも掲載しています

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです

果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。 幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。 ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。 月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。 パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。 これでは、結婚した後は別居かしら。 お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。 だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...