後に悪の帝王となる王子の闇落ちを全力で回避します!

花見 有

文字の大きさ
15 / 17

第15話

しおりを挟む
 
 王宮の広々とした庭に巨大な竜巻が発生していた。
 その中心にいるのはレオン――

 それを離れた位置からリシェントが見守っていた。

「くっ……毎回思うがすっげぇ魔力……。こんなの王都の家の庭なんかで出されてたら、周りの家を巻き込んじまってた所だったな。王宮の庭で訓練出来るようになって助かったぜ」 

 17歳になったレオンは全ての力を放出するに耐えうる身体に成長し、10歳からリシェントに師事して魔力のコントロールを学んだお陰で今ではこの膨大な魔力をコントロール出来るようになってきていた。

 巨大な竜巻が段々と小さくなっていくと、レオンの姿が現れる。そのままレオンは全ての魔力を抑えると、リシェントの方を見た。

「どうだった?」

「ああ、なかなかいいぞ」

 レオンはリシェントの言葉に小さく拳を握って得意そうに笑うと言った。

「あと、一年でルイーザと結婚するから、それまでには完璧にコントロール出来るようになりたいんだ」

「ああ、このままいけば、大丈夫だろ。後は、どんな状況でも自分を見失わない事だな。特にお前はルイーザの事になると頭に血が登りやすいから気を付けろ」

「分かった」

 素直に頷くレオンに、リシェントわざとらしく咳払いすると言った。

「ところでレオン。お前、もうルイーザとはキスしたのか?」 

「え!?そ、そんなの、リシェントに関係ないだろ!?」

 するとガッチリとレオンの肩に手を回してリシェントは言った。

「お前、それは、ヤバいぞ?このままだと結婚しても今の関係のままだぞ」

「な!?何でだよ!?だって結婚したらその……色々と……」

 とゴニョゴニョと話し始めるレオンにリシェントは言った。

「お前、そんなんで、ルイーザがその気になると思ってんのか!?」

「え!?」

「ムードだよ!ムード!!もっとこう……色気を出してだな。せっかく、そんな顔面してんのにお前には色気が足りねぇんだよ!」

「い、色気!?」

「そうだ!女を口説くときは、先ずこう瞳を見つめてだな……」

「う、うん……」

 そして、レオンはリシェントから男としての極意も教わる事になったのだった――


 ◇


「ルイーザ……」

 最近、レオンの様子がおかしい。ため息混じりに遠くを眺めていたり、私の名を呼んだかと思えば顔を見て固まってしまったりする。

 レオンの闇落ち回避は順調だと思っていたけど、私が気が付かない内にレオンの中で何か不安な事でもあるのかしら?闇落ちしないようにしっかり見てなきゃ!

 ルイーザは、見つめてくるレオンの顔をジッと見つめ返した。すると、レオンは顔を赤くして、顔を逸らしてしまう。

 そんなやり取りをレオンと続けていたある日、ルイーザはレオンと共にリヴァイト国王に呼ばれた――

「ホステラーノ王国にですか?」

「ああ、舞踏会に招待されたんだ。レオンと共に行ってくれないか?」

 リヴァイト国王は、にこやかに言った。ゲームの中ではカルヴァ王国とホステラーノ王国の仲は最悪だけど、今は友好国であるから、こういった招待も普通の事なのだろう。

 ホステラーノ王国か……。って事はそこにはゲームの主人公ファニアちゃんもいるし、バシリオ王子に騎士のゴートンも……。もちろん、まだ会った事のないゲームのキャラに会いたい気持ちはあるけど……。

 ルイーザはレオンをチラリと見た。

 レオンがファニアちゃんに会って悪の帝王に覚醒するなんて事にならない?
 シーフスに会った時は大丈夫だったから問題ないのかなぁ……?

 しかし、最近のレオンのおかしな行動も気になるルイーザは、返事を出来ないでいた。すると

「ルイーザが行きたくないなら、僕一人で行くから大丈夫だよ」

 とレオンが言ったので、ルイーザは慌てた。

「それは、駄目よ!!」

 私がいない時に悪の帝王に目覚めたらどうするの!?

 ルイーザの慌てようにレオンが首を傾げる。

「どうしたの?ルイーザ、何をそんなに慌てているんだ?」

 うっ!それは、レオンが悪の帝王になったらって……、でも本当の事は言えないし……

「わ、私はレオンが他の女の子をエスコートするのが嫌なの!」

 あ、あれ?なんか私、恥ずかしい事言ってない?
 王子の婚約者なのに余裕ないって思われない?

 するとレオンはみるみる嬉しそうな顔になって、グッと拳を握って振っているのが、ガッツポーズのように見えた。

「じゃあ、ルイーザも一緒に行こう!」

「え?う、うん」

 ま、まあ、なんかレオンが嬉しそうだから良いか。

 こうして、私達はホステラーノ王国へ行く事になったのだった――
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

遊び人の侯爵嫡男がお茶会で婚約者に言われた意外なひと言

夢見楽土
恋愛
侯爵嫡男のエドワードは、何かと悪ぶる遊び人。勢いで、今後も女遊びをする旨を婚約者に言ってしまいます。それに対する婚約者の反応は意外なもので…… 短く拙いお話ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。 このお話は小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

冷徹公爵閣下は、書庫の片隅で私に求婚なさった ~理由不明の政略結婚のはずが、なぜか溺愛されています~

白桃
恋愛
「お前を私の妻にする」――王宮書庫で働く地味な子爵令嬢エレノアは、ある日突然、<氷龍公爵>と恐れられる冷徹なヴァレリウス公爵から理由も告げられず求婚された。政略結婚だと割り切り、孤独と不安を抱えて嫁いだ先は、まるで氷の城のような公爵邸。しかし、彼女が唯一安らぎを見出したのは、埃まみれの広大な書庫だった。ひたすら書物と向き合う彼女の姿が、感情がないはずの公爵の心を少しずつ溶かし始め…? 全7話です。

年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました

チカフジ ユキ
恋愛
ヴィクトリアには年下の婚約者がいる。すでにお互い成人しているのにも関わらず、結婚する気配もなくずるずると曖昧な関係が引き延ばされていた。 そんなある日、婚約者と出かける約束をしていたヴィクトリアは、待ち合わせの場所に向かう。しかし、相手は来ておらず、当日に約束を反故されてしまった。 そんなヴィクトリアを見ていたのは、ひとりの男性。 彼もまた、婚約者に約束を当日に反故されていたのだ。 ヴィクトリアはなんとなく親近感がわき、彼とともにカフェでお茶をすることになった。 それがまさかの事態になるとは思いもよらずに。

【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです

果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。 幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。 ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。 月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。 パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。 これでは、結婚した後は別居かしら。 お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。 だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...