婚約破棄ですって?私がどうして婚約者になったのか知らないのかしら?

花見 有

文字の大きさ
2 / 5

2

しおりを挟む
 ディデス侯爵邸に着くと、目眩がしそうな程に悪趣味な金ピカの装飾品が至る所に飾られていた。

 そして、私達を大慌てで出迎えたのは、ディデス侯爵と侯爵夫人であった。

「婚約破棄すると言ったのは、愚息の戯言だ。どうか考え直してくれないか!?」

 そう言ったディデス侯爵の横には、私に婚約破棄を宣言した時とは打って変わって、ゲッソリとやつれたアーモスが座っていた。

 おそらく、婚約破棄の事を家族に伝えて、こってり絞られたのだろう。

「頼むから、考え直してくれ!ダーシャ嬢も婚約破棄された傷物にはなりたくないだろう?」

 とディデス侯爵に言われるが、ダーシャは侯爵がたくさん身に着けているギラギラとした装飾品が気になって聞いていなかった。

 あんな、悪趣味な指輪や腕輪、何処で見つけてくるのかしら?

 と神妙な顔付きで考えていたものだから、それを婚約破棄すると言われた事がショックなのだと受け取ったお父様は鬼の形相になってしまった。

「いいや、そちらの息子が先に婚約破棄をすると言ってきたんだ!それで、ダーシャは傷心の中、自分で書類まで用意したんですよ!今更、撤回など虫が良すぎる!!」

 侯爵家と伯爵家の間にあるテーブルに置かれた書類には、ダーシャが用意した婚約破棄の書類と秘密保持の書類が並んでいた。

「だから!こうして、息子共々、謝っているじゃないか!それに、あの事を広めても良いのか!?」

 ディデス侯爵は、金ピカの装飾にとても良く似合うな悪巧みしている顔をした。

「そ、それは……」

 その言葉にパレデス伯爵が言い淀む。
 すると、今まで静かに聞いていたダーシャが口を開いた。

「ディデス侯爵様は勿論、聖女の伝説については、ご存知ですよね?」

「当たり前だ。その為に聖女の末裔であるダーシャ嬢を婚約者にしたのだからな」

「そうでしたわね。でしたら、かつて聖女がある荒れ果てた町をその加護の力で再建させ、再建された町は聖女が去った後も民の努力により発展していった……というのはご存知ですか?私が見た所、ディデス侯爵家ももう私の力など必要がないように見受けられますわ」

 そう言うと、ダーシャは豪華な装飾品が飾られた部屋の中をぐるりと見渡した。それに合わせて、ディデス侯爵も部屋の中を見てニンマリとすると言った。

「それもそうだな!だったら、下手にでる必要などないじゃないか。婚約破棄で構わんぞ」

「そうですか。では、こちらの婚約破棄の書類に署名を。それから、私が聖女の末裔である事を口外しないという秘密保持の契約にも署名をお願いしますね」


 そして、ディデス侯爵と侯爵夫人、そしてアーモスの署名が書かれた書類を纏めると、ダーシャはパレデス伯爵と共にディデス侯爵邸を後にした。


 帰りの馬車でパレデス伯爵は心配そうにダーシャを覗き見た。

「ダーシャ、良かったのか?ディデス侯爵家はダーシャの加護を受けるだけ受けて、婚約破棄をしたんだぞ」

「もういいのよ。私が聖女の末裔だって事を口外しないと約束してくれたから、それで十分よ」

 とダーシャは晴れ晴れとした笑顔を浮かべた。


 元々、この婚約は何故か、私が聖女の末裔である事を知っていたディデス侯爵が、その事を広められたくなかったら息子と婚約しろと半ば脅しのように結ばれたもの。
 元々、数百年前に存在したという聖女には加護の力があり、貧しい町に加護を授けて栄える手助けをしたとされている。だから、ディデス侯爵も自分の息子と聖女の末裔である私が結婚すれば、傾いた侯爵家を立て直せると考えたようだ。

 私と婚約する前のディデス侯爵家は、長年の悪質な統制により、領民からの信頼もなく、新しい事業に手を出せば、センスがなくて莫大な負債を抱え、その上お金もないのに散財しまくって、没落寸前だったものね。私と婚約した直後から、新規事業の話が舞い込み、それがすぐに軌道に乗って、同時に領地改革も成功して領民からの支持も鰻登りになり、侯爵家は持ち直した。
 だから、私が居なくなっても真面目に事業に取り組み、領民を大切にしていたらいいだけなのよ?ディデス侯爵様。

 それにしても、私がお母様の血筋で聖女の末裔だという事は、お父様と王家の一部の人間しか知らないはずなんだけど、どうして知られてしまったのかしら?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄ですか? 無理ですよ?

星宮歌
恋愛
「ユミル・マーシャル! お前の悪行にはほとほと愛想が尽きた! ゆえに、お前との婚約を破棄するっ!!」 そう、告げた第二王子へと、ユミルは返す。 「はい? 婚約破棄ですか? 無理ですわね」 それはそれは、美しい笑顔で。 この作品は、『前編、中編、後編』にプラスして『裏前編、裏後編、ユミル・マーシャルというご令嬢』の六話で構成しております。 そして……多分、最終話『ユミル・マーシャルというご令嬢』まで読んだら、ガッツリざまぁ状態として認識できるはずっ(割と怖いですけど(笑))。 そして、続編を書きました! タイトルは何の捻りもなく『婚約破棄? 無理ですよ?2』です! もしよかったら読んでみてください。 それでは、どうぞ!

婚約破棄されたので、あなたの国に関税50%かけます~最終的には9割越えの悪魔~

常野夏子
恋愛
隣国カリオストの第一王子であり婚約者であったアルヴェルトに、突如国益を理由に婚約破棄されるリュシエンナ。 彼女は怒り狂い、国をも揺るがす復讐の一手を打った。 『本日より、カリオスト王国の全ての輸入品に対し、関税を現行の5倍とする』

婚約破棄ですか? 無理ですよ?2

星宮歌
恋愛
『リィナ・マーシャル! 今度こそ、婚約破棄だ!』 今日も懲りずに、第二王子殿下のその言葉が響き渡り、誰も、それに見向きすることはなかった……。 前作『婚約破棄ですか? 無理ですよ?』の続編です。 前作を読んでいなくとも楽しめるように書いています。 わりと人気なので、前作を長編にしたものを書くか、続編を書くかで悩みましたが、続編を書くことに。 息抜き投稿で、7話完結です。 さぁ、それでは、お楽しみください。

綿菓子令嬢は、この度婚約破棄された模様です

星宮歌
恋愛
とあるパーティー会場にて、綿菓子令嬢と呼ばれる私、フリア・フワーライトは、婚約者である第二王子殿下に婚約破棄されてしまいました。 「あらあら、そうですか。うふふ」 これは、普段からほわわんとした様子の令嬢が、とんでもない裏の顔をさらすお話(わりとホラー風味?) 全二話で、二日連続で、23時の更新です。

婚約破棄されたから政府閉鎖します

常野夏子
恋愛
王族も無視できない影響力を持つ名門貴族ラーヴェル侯爵に婚約破棄された王女リシェル。 彼女は王国の政務をすべて停止することにした。

殿下はご存じないのでしょうか?

7
恋愛
「お前との婚約を破棄する!」 学園の卒業パーティーに、突如婚約破棄を言い渡されてしまった公爵令嬢、イディア・ディエンバラ。 婚約破棄の理由を聞くと、他に愛する女性ができたという。 その女性がどなたか尋ねると、第二殿下はある女性に愛の告白をする。 殿下はご存じないのでしょうか? その方は――。

“妖精なんていない”と笑った王子を捨てた令嬢、幼馴染と婚約する件

大井町 鶴(おおいまち つる)
恋愛
伯爵令嬢アデリナを誕生日嫌いにしたのは、当時恋していたレアンドロ王子。 彼がくれた“妖精のプレゼント”は、少女の心に深い傷を残した。 (ひどいわ……!) それ以来、誕生日は、苦い記憶がよみがえる日となった。 幼馴染のマテオは、そんな彼女を放っておけず、毎年ささやかな贈り物を届け続けている。 心の中ではずっと、アデリナが誕生日を笑って迎えられる日を願って。 そして今、アデリナが見つけたのは──幼い頃に書いた日記。 そこには、祖母から聞いた“妖精の森”の話と、秘密の地図が残されていた。 かつての記憶と、埋もれていた小さな願い。 2人は、妖精の秘密を確かめるため、もう一度“あの場所”へ向かう。 切なさと幸せ、そして、王子へのささやかな反撃も絡めた、癒しのハッピーエンド・ストーリー。

【短編】将来の王太子妃が婚約破棄をされました。宣言した相手は聖女と王太子。あれ何やら二人の様子がおかしい……

しろねこ。
恋愛
「婚約破棄させてもらうわね!」 そう言われたのは銀髪青眼のすらりとした美女だ。 魔法が使えないものの、王太子妃教育も受けている彼女だが、その言葉をうけて見に見えて顔色が悪くなった。 「アリス様、冗談は止してください」 震える声でそう言うも、アリスの呼びかけで場が一変する。 「冗談ではありません、エリック様ぁ」 甘えた声を出し呼んだのは、この国の王太子だ。 彼もまた同様に婚約破棄を謳い、皆の前で発表する。 「王太子と聖女が結婚するのは当然だろ?」 この国の伝承で、建国の際に王太子の手助けをした聖女は平民の出でありながら王太子と結婚をし、後の王妃となっている。 聖女は治癒と癒やしの魔法を持ち、他にも魔物を退けられる力があるという。 魔法を使えないレナンとは大違いだ。 それ故に聖女と認められたアリスは、王太子であるエリックの妻になる! というのだが…… 「これは何の余興でしょう? エリック様に似ている方まで用意して」 そう言うレナンの顔色はかなり悪い。 この状況をまともに受け止めたくないようだ。 そんな彼女を支えるようにして控えていた護衛騎士は寄り添った。 彼女の気持ちまでも守るかのように。 ハピエン、ご都合主義、両思いが大好きです。 同名キャラで様々な話を書いています。 話により立場や家名が変わりますが、基本の性格は変わりません。 お気に入りのキャラ達の、色々なシチュエーションの話がみたくてこのような形式で書いています。 中編くらいで前後の模様を書けたら書きたいです(^^) カクヨムさんでも掲載中。

処理中です...