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第4話 友達になって下さい
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「本日はお招き頂きありがとうございます」
舞踏会から一週間後、シルヴィアはフレシアム公爵邸に招待されていた。
「シルヴィア嬢、今日は来てくれてありがとう」
出迎えてくれたエドワルド様は、馬車から降りる私に手を差し出して、ニコリと微笑んだ。その手を取ると、エドワルド様は馬車を降りる私をエスコートしてくれる。
ああ、これはまるで、あなたの瞳に焦がれて第2巻で初めて訪れた王宮に緊張していたヒロインを王子が出迎えて馬車から下ろすシーンみたい……。
シルヴィアが小説のシーンと重ね合わせて、惚けているとエドワルドはそんなシルヴィアの様子にクスッと笑みを溢した。
それからエドワルドは公爵邸の大きな庭園にやってくると、花に囲まれた広場に用意されたソファまでシルヴィアをエスコートした。
テーブルの上には美味しそうなお菓子が用意されていて、侍女が淹れたての紅茶をテーブルに置くと、その場から離れて、私達を遠くから見守っている。
「遠くに侍女達が控えているが、話の内容は聞こえないから安心してくれ」
流石、女性の扱いに慣れているわ。今から私達が話すのは、貴族が読むには相応しくないとされる本の内容。それでも完全に人払いをしてしまうと結婚前の令嬢が男と二人きりになったとあらぬ噂を立てられかねない状況になるから配慮して下さったのね。女性に人気のエドワルド様だけれど、変な噂は一切聞かないし真面目で紳士的な方だわ。
「ご配慮、感謝致します」
シルヴィアがにこりと笑ってお礼を言えば、エドワルドも微笑み返してくれる。
シルヴィアは、それを見てここに来るに当たって考えていたある事の決意を固めた――
「んんっ、それで、さっそくなんだか……、あの小説の考察を」
少し照れたように話を切り出したエドワルドをシルヴィアは真っ直ぐと見つめた。
「あのエドワルド様、その前に一つお話したい事がございます」
「なんだ?」
「あの……私、実は恋愛小説を読む事が趣味なんです!特に好きなのがミリアーム先生のあなたの瞳に焦がれてのシリーズで、あの日、本屋に行ったのも実はミリアーム先生の新刊を買う為だったんです。今日だってエドワルド様は、勉強の為に私と意見交換されようと誘って下さいましたが、私はただただ、3巻の内容のキュンキュンしたシーンとか切なくて泣いちゃった所とかそんな所を語り尽くしたくて来たんです!!」
シルヴィアは頬を赤らめて一気にまくし立てた。
エドワルドはそんなシルヴィアを、目を丸くして見ていた。
「申し訳ございません。いきなりこんな事を言って驚かれましたよね。でも、小説についてお話出来る人なんて他にいないと思って……」
「あ、いや……その……」
エドワルド様は口籠ると視線を彷徨わせて逸らしてしまった。
ああ、やっぱり引かれたよね。
予想できた反応だが、シルヴィアは思っていたよりも気落ちしていた。それは、もしかしたらエドワルドなら、シルヴィアの趣味を聞き入れて、話を聞いてくれるかもしれないと期待していたからだった。
無言でエドワルドが下を向いたままなのを見て、シルヴィアは立ち上がった。
「エドワルド様、今日はせっかくお招き頂きましたが、今日は帰りま」「じ、実は俺も!」
シルヴィアの言葉を遮ったエドワルドは、赤い顔を上げると立ち上がった。
「実は俺もミリアーム先生の小説が好きなんだ!」
顔を赤らめて、必死な顔でそう言ってくれたエドワルド様の決意は、並のものではないだろう。貴族の男性が庶民の恋愛小説が好きだと言う事が、どれ程、勇気のいる事か――
シルヴィアは嬉しくて満面の笑みになる。
「エドワルド様!私と友達になって下さい!」
満面の笑みでシルヴィアがそう言うと、風が吹いてシルヴィア達を囲っていた庭園の花びらが舞ったのだった――
舞踏会から一週間後、シルヴィアはフレシアム公爵邸に招待されていた。
「シルヴィア嬢、今日は来てくれてありがとう」
出迎えてくれたエドワルド様は、馬車から降りる私に手を差し出して、ニコリと微笑んだ。その手を取ると、エドワルド様は馬車を降りる私をエスコートしてくれる。
ああ、これはまるで、あなたの瞳に焦がれて第2巻で初めて訪れた王宮に緊張していたヒロインを王子が出迎えて馬車から下ろすシーンみたい……。
シルヴィアが小説のシーンと重ね合わせて、惚けているとエドワルドはそんなシルヴィアの様子にクスッと笑みを溢した。
それからエドワルドは公爵邸の大きな庭園にやってくると、花に囲まれた広場に用意されたソファまでシルヴィアをエスコートした。
テーブルの上には美味しそうなお菓子が用意されていて、侍女が淹れたての紅茶をテーブルに置くと、その場から離れて、私達を遠くから見守っている。
「遠くに侍女達が控えているが、話の内容は聞こえないから安心してくれ」
流石、女性の扱いに慣れているわ。今から私達が話すのは、貴族が読むには相応しくないとされる本の内容。それでも完全に人払いをしてしまうと結婚前の令嬢が男と二人きりになったとあらぬ噂を立てられかねない状況になるから配慮して下さったのね。女性に人気のエドワルド様だけれど、変な噂は一切聞かないし真面目で紳士的な方だわ。
「ご配慮、感謝致します」
シルヴィアがにこりと笑ってお礼を言えば、エドワルドも微笑み返してくれる。
シルヴィアは、それを見てここに来るに当たって考えていたある事の決意を固めた――
「んんっ、それで、さっそくなんだか……、あの小説の考察を」
少し照れたように話を切り出したエドワルドをシルヴィアは真っ直ぐと見つめた。
「あのエドワルド様、その前に一つお話したい事がございます」
「なんだ?」
「あの……私、実は恋愛小説を読む事が趣味なんです!特に好きなのがミリアーム先生のあなたの瞳に焦がれてのシリーズで、あの日、本屋に行ったのも実はミリアーム先生の新刊を買う為だったんです。今日だってエドワルド様は、勉強の為に私と意見交換されようと誘って下さいましたが、私はただただ、3巻の内容のキュンキュンしたシーンとか切なくて泣いちゃった所とかそんな所を語り尽くしたくて来たんです!!」
シルヴィアは頬を赤らめて一気にまくし立てた。
エドワルドはそんなシルヴィアを、目を丸くして見ていた。
「申し訳ございません。いきなりこんな事を言って驚かれましたよね。でも、小説についてお話出来る人なんて他にいないと思って……」
「あ、いや……その……」
エドワルド様は口籠ると視線を彷徨わせて逸らしてしまった。
ああ、やっぱり引かれたよね。
予想できた反応だが、シルヴィアは思っていたよりも気落ちしていた。それは、もしかしたらエドワルドなら、シルヴィアの趣味を聞き入れて、話を聞いてくれるかもしれないと期待していたからだった。
無言でエドワルドが下を向いたままなのを見て、シルヴィアは立ち上がった。
「エドワルド様、今日はせっかくお招き頂きましたが、今日は帰りま」「じ、実は俺も!」
シルヴィアの言葉を遮ったエドワルドは、赤い顔を上げると立ち上がった。
「実は俺もミリアーム先生の小説が好きなんだ!」
顔を赤らめて、必死な顔でそう言ってくれたエドワルド様の決意は、並のものではないだろう。貴族の男性が庶民の恋愛小説が好きだと言う事が、どれ程、勇気のいる事か――
シルヴィアは嬉しくて満面の笑みになる。
「エドワルド様!私と友達になって下さい!」
満面の笑みでシルヴィアがそう言うと、風が吹いてシルヴィア達を囲っていた庭園の花びらが舞ったのだった――
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