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第3話 お誘いは突然
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「シルヴィア様、今日もとてもお綺麗です」「プレーヘム伯爵はお元気ですか?」「シルヴィア様、私とダンスは如何ですか?」「いいえ、僕と踊って下さい!」
今日も舞踏会に参加したシルヴィアは男達が囲まれていた。
「シルヴィア様と一番最初に踊る栄誉をどうか私に」「いや、私と踊って下さい」「いや、僕と」
シルヴィアは自身を囲む男達を見渡す。
ミラヴェル侯爵令息、オリビアン伯爵令息にシスタリー男爵、その他の貴族男性方も……、何度も私に声をかけて下さっている方々。お手紙やプレゼントを受け取ったり、時にはダンスの誘いを受ける事も個別にお話をした事もあったけれど、どれも貴族令嬢としての義務感からだった。
きっとお父様はいずれこの中の誰かと私を婚約させるつもりでしょうから……。
はあ。どうしようもない事と分かっていても、私は一生、恋愛小説のような気持ちは知る事は出来ないのよね……。
シルヴィアは力のない笑みを浮かべると、気を引き締めプレーヘム伯爵家の名に恥じぬようにと、何とかよそ行き用の笑みを引き出した。そして、一番早くシルヴィアに声を掛けた男性の手を取ろうとした――が、視線を感じたシルヴィアはその手を止めた。
シルヴィアが視線を感じた方を見ると、エドワルドがこちらを見ていたのだ。
あら、エドワルド様もいらしていたのね。
するとシルヴィアは考えるよりも先に伸ばしかけていた手を引っ込めると、囲んでいる男達に微笑んだ。
「申し訳ございません。ご挨拶しなければならない方がいらっしゃるので、失礼いたします」
シルヴィアは、軽くカーテシーをするとエドワルドの方へと歩き出した。
案の定、エドワルドも令嬢達に囲まれていたが、シルヴィアが近付いてくるのが分かると、令嬢達を断ってシルヴィアの方へとやって来た。
シルヴィアは挨拶をしようとカーテシーの姿勢を取ろうとしたが、エドワルドは挨拶もそこそこにシルヴィアの耳元で囁いてきたのだ。
「シルヴィア嬢、少し話せるか?」「え?ええ」
突然の事に驚いたのも束の間、シルヴィアの返事を聞いたエドワルドは、シルヴィアの手を取ってバルコニーへとエスコートして行く。
その様は何ともスマートで、きっと彼は毎回こんな感じで女性を口説いているんだろうと、シルヴィアは一人納得していた。
バルコニーへ出ると少し肌寒くて、シルヴィアは肩をすくめた。すると、エドワルドが自身のジャケットを脱いでシルヴィアにの肩に掛けてくれる。
「寒いのに、外に連れ出してすまない」
「いいえ。こちらこそ、上着を貸して頂きありがとうございます。それで……お話とはなんでしょうか?」
シルヴィアがエドワルドを見上げると「ああ、その……」とエドワルドは、頬を少し赤らめて口籠るので、シルヴィアはエドワルドが言わんとしている事にピンときた。
本屋で会った事を秘密にするって再度の確認ね。
「この間、あそこで会った事でしたら、誰にも言っておりませんし、今後も言うつもりはありませんわ」
「え?ああ……。それも、そうなんだが……。その……」とエドワルドは、さらに言いにくそうに顔をしかめた後、意を決したようにシルヴィアを見た。
「シルヴィア嬢は、他にもああいう本を読んだ事はある……のか?」
「え……?」
シルヴィアは思ってもいなかった事を聞かれて、頬が熱くなり、目が泳いだ。
も、もしかして、恋愛小説を読むのが趣味だってバレてしまった?ど、どうしよう。軽蔑されてしまうわ……
「あ、あのそれは……」
早く否定しなければと思うのに、上手く言葉が出て来なくて、今度はシルヴィアが口籠ってしまう。すると、エドワルドが言いにくそうに話し始めた。
「も、もし良ければ、今度うちで一緒にお茶などどうだろうか?その……この間の本を読んでの考察などを話し合えれば、庶民の生活についての知識をより深められるのではないかと思ったのだ!」
「ええ!?」
思いもよらない突然の誘いに、シルヴィアは驚きを隠せない。
「もちろん、シルヴィア嬢が嫌でなければなんだが……」
とエドワルドは照れくさそうに髪をかくと、シルヴィアを見た。
こ、これは新刊の感動を分かち合えるって事!?い、いいえ、エドワルド様が仰っているのは、あくまで内容の考察をして、庶民の生活をより深く知る……、そうあの話をより深く分かち合えるチャンスという事よ!!
「は、はい!ぜひお伺いさせて下さい!!」
シルヴィアの答えにエドワルドが照れたような笑みを溢すとシルヴィアも釣られて照れくさそうに笑ったのだった――
今日も舞踏会に参加したシルヴィアは男達が囲まれていた。
「シルヴィア様と一番最初に踊る栄誉をどうか私に」「いや、私と踊って下さい」「いや、僕と」
シルヴィアは自身を囲む男達を見渡す。
ミラヴェル侯爵令息、オリビアン伯爵令息にシスタリー男爵、その他の貴族男性方も……、何度も私に声をかけて下さっている方々。お手紙やプレゼントを受け取ったり、時にはダンスの誘いを受ける事も個別にお話をした事もあったけれど、どれも貴族令嬢としての義務感からだった。
きっとお父様はいずれこの中の誰かと私を婚約させるつもりでしょうから……。
はあ。どうしようもない事と分かっていても、私は一生、恋愛小説のような気持ちは知る事は出来ないのよね……。
シルヴィアは力のない笑みを浮かべると、気を引き締めプレーヘム伯爵家の名に恥じぬようにと、何とかよそ行き用の笑みを引き出した。そして、一番早くシルヴィアに声を掛けた男性の手を取ろうとした――が、視線を感じたシルヴィアはその手を止めた。
シルヴィアが視線を感じた方を見ると、エドワルドがこちらを見ていたのだ。
あら、エドワルド様もいらしていたのね。
するとシルヴィアは考えるよりも先に伸ばしかけていた手を引っ込めると、囲んでいる男達に微笑んだ。
「申し訳ございません。ご挨拶しなければならない方がいらっしゃるので、失礼いたします」
シルヴィアは、軽くカーテシーをするとエドワルドの方へと歩き出した。
案の定、エドワルドも令嬢達に囲まれていたが、シルヴィアが近付いてくるのが分かると、令嬢達を断ってシルヴィアの方へとやって来た。
シルヴィアは挨拶をしようとカーテシーの姿勢を取ろうとしたが、エドワルドは挨拶もそこそこにシルヴィアの耳元で囁いてきたのだ。
「シルヴィア嬢、少し話せるか?」「え?ええ」
突然の事に驚いたのも束の間、シルヴィアの返事を聞いたエドワルドは、シルヴィアの手を取ってバルコニーへとエスコートして行く。
その様は何ともスマートで、きっと彼は毎回こんな感じで女性を口説いているんだろうと、シルヴィアは一人納得していた。
バルコニーへ出ると少し肌寒くて、シルヴィアは肩をすくめた。すると、エドワルドが自身のジャケットを脱いでシルヴィアにの肩に掛けてくれる。
「寒いのに、外に連れ出してすまない」
「いいえ。こちらこそ、上着を貸して頂きありがとうございます。それで……お話とはなんでしょうか?」
シルヴィアがエドワルドを見上げると「ああ、その……」とエドワルドは、頬を少し赤らめて口籠るので、シルヴィアはエドワルドが言わんとしている事にピンときた。
本屋で会った事を秘密にするって再度の確認ね。
「この間、あそこで会った事でしたら、誰にも言っておりませんし、今後も言うつもりはありませんわ」
「え?ああ……。それも、そうなんだが……。その……」とエドワルドは、さらに言いにくそうに顔をしかめた後、意を決したようにシルヴィアを見た。
「シルヴィア嬢は、他にもああいう本を読んだ事はある……のか?」
「え……?」
シルヴィアは思ってもいなかった事を聞かれて、頬が熱くなり、目が泳いだ。
も、もしかして、恋愛小説を読むのが趣味だってバレてしまった?ど、どうしよう。軽蔑されてしまうわ……
「あ、あのそれは……」
早く否定しなければと思うのに、上手く言葉が出て来なくて、今度はシルヴィアが口籠ってしまう。すると、エドワルドが言いにくそうに話し始めた。
「も、もし良ければ、今度うちで一緒にお茶などどうだろうか?その……この間の本を読んでの考察などを話し合えれば、庶民の生活についての知識をより深められるのではないかと思ったのだ!」
「ええ!?」
思いもよらない突然の誘いに、シルヴィアは驚きを隠せない。
「もちろん、シルヴィア嬢が嫌でなければなんだが……」
とエドワルドは照れくさそうに髪をかくと、シルヴィアを見た。
こ、これは新刊の感動を分かち合えるって事!?い、いいえ、エドワルド様が仰っているのは、あくまで内容の考察をして、庶民の生活をより深く知る……、そうあの話をより深く分かち合えるチャンスという事よ!!
「は、はい!ぜひお伺いさせて下さい!!」
シルヴィアの答えにエドワルドが照れたような笑みを溢すとシルヴィアも釣られて照れくさそうに笑ったのだった――
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