私はただ、憧れのテントでゴロゴロしたいだけ。

もりのたぬき

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【1部】第三章.自分のスキルを確認するまでが長い

036

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ナビのソウルメイト発言は横に置いておくとして、色々な疑問に答えてくれる存在が居るのはとても心強い事は確かだった。

城から放り出された後、一人でどうにかするつもりではいたけど、誰かと気楽に会話が出来るという事がここまで心に余裕が出るとは思わなかった。

「じゃあ質問その2、任意魔法の作り方が知りたいです」
『任意魔法については、マスターが頭に思い浮かべれば簡単に作れます。ただし条件が存在します』

「作るときに条件があったんだ」

実は先ほど苦いシチューを食べた時、とっさに解毒の魔法を思いついて使おうとしたのだけど、うんともすんとも無かったのだ。

『はい。その条件は、絶対安全空間の中で作りたい魔法を思い浮かべる事と、必ず絶対安全空間の出入口を完全に閉じた状態で行う事の2つです』

「ほぉ…?その心は?」
『あぶねー魔法が出来上がった場合の安全対策です』
「あ、はい」

ごもっとも。

「なんというか、隠し要素が多くありませんかね?」
『そのためのナビです。裏事情を全部説明していたら神様たちの所に何日も居る羽目になりますし、神様たちもそこまで暇ではないです。多分、私自身が神様たちからマスターに対しての最大の贈り物です。という事ですので、魔法を作りたい時は絶対安全空間を使用してください』

「わかったよ、しかし、なんで私だけこんなに神様から優遇されたのかな…」
『多分、他の人がフォンティーで英雄になりたいみたいな願望ばかりだったのに対して、マスターがひたすら引きこもりたい願望だったからじゃないですかね』

「英雄になったら責任重大じゃん…好き勝手出来ないし。人と関わりたくないというわけじゃないけど、引きこもりたいです。私は良い人間じゃないから、自分の為だけに生きたいです」

『それで良いんじゃないでしょうか?人様に迷惑をかけて…殆ど迷惑はかけていないですし』
「何で言いなおした?」

『兵士のグラハムさんとか、奥様である服屋のエルザさんとかに迷惑かけてないって言えます?』
「…言えませんね…めっちゃお世話になりました」


そんなこんな、結構長い間話していたようで夜も更けてきたように思う。

「ナビさん、今って何時ですかね?」
『今は夜の10時半と言ったところでしょうか』

「ありがとう。あとこの部屋の照明ってどこでしょうか。部屋が暗いです」
『ベットの横に魔法石のランプがかけてありますよ』

たしかに、ベットの横にランプがひっかけてあった。
手に取ってみたがスイッチらしきものは無く、つけ方が分からない。

「…使い方が分かりません」
『ランプの下の方に光量を調節するつまみがあるので、それをひねってみてください』

私は言われた通りにランプをいじると、ふわっと橙色の光がついた。
暖かそうな色合いなのに、熱を感じない。

「おお…オイルランプっぽいのに熱くない…」
『良かったですね。ちなみにマスターの持っているライトというスキルでも同じような灯りをともせますよ』

「その手が有った!!」
『直前まで魔法スキルの話してましたよね?』

「えへへ…沢山スキルがあると忘れちゃうよね」
『……』

「さて!そろそろ寝ようかな。パジャマとかあるかな…」
『あからさまな話題逸らしですね。しかし、残念ながらパジャマは無いと思います』
「いやいや、入ってるよー」

私はアイテムボックスを見てみるが、ナビの言う通りパジャマは無かった。

『明日、服屋で買えばいいのでは?』
「んー、追手を撒いたとはいえ、昨日の今日でエルザさんのお店に行くのはちょっとリスクが有りそう」
『じゃあ、他の店を回るかしばらくは服にも体にもクリーンをかけて我慢するしかありませんね』

「そっか、お風呂も無いんだっけ…」
『体を拭くためのお湯なら頼めば用意してくれるとは思いますが、もう夜も遅いですから今日は諦めましょう』
「だよねぇ…」

私はナビの言う通り、身体と服にクリーンをかけた。
すると、何という事でしょう!

してるかしてないか分からないくらい薄く施していた化粧もさっぱり取れたではありませんか!

「おおお…化粧落としが要らない…だと?」

と言うか、化粧って汚れ扱いなのか?

『マスターの魔法が特殊なだけです。普通は化粧は専用のオイルで落とさないと無理です』
「あ、やっぱりそうなのか…」

とりあえず化粧がさっぱり取れたので、旅行用の小さな容器に入れてあった化粧水をぺちぺちと顔に叩き込んだ。

「ナビって、私のアイテムボックスの中身把握してるの?あとこの部屋の様子見えてるよね?」
『アイテムボックスは全て把握していますし、イヤーカフを通じてそちらの空間把握もしていますので、マスターを俯瞰で眺めている感じで見ています』

「本当、万能さんだねナビさんは…」
『マスターが絶対安全空間のレベルを上げてくれたら、もっと有能になれます』

「あはは、それは頑張ってお金稼がないとだ」
『明日は金策を考えましょう』

「そうだね、じゃあおやすみなさいナビさん…」
『おやすみなさいませマスター』

ベットに潜り込むと、あっという間に瞼が下りてきた。
こうして異世界生活1日目の夜が更けていった。

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