極めて幸せになった日本

笹田 真

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国民の動き

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まぁ、実際のところ、あの政策が発表されてから3年間、万引きで死刑になったようなやつはいなかったよ。

ちょっと考えれば当たり前のことだが、自分がコンビニの店員だったとしてだ、
ある日、中学生位の少年が万引きをしている現場を見つけたとする。
もちろん声かけて、
「きみきみ~今ポケットに入れたもの出してごらん?」
とか言うよな。
そしたら、その少年が半べそかきながら
「ごめんなさいもうしませぇん!」
って言うやん。
そこで俺が、
「とりあえず、ご両親の連絡先わかる?」
ってな感じでその少年の親を呼ぶとする。
少ししたら大慌てで親が駆けつけて来るはずだ。それはもう青ざめた顔で。
だって、自分の息子の命がかかっているんだから。
「うちの子がとんでもないことをしてしまいました。お金でもなんでも払いますからどうか見逃してください!」

この時店長には警察に通報する権利があるよな。
というか通報するのが義務だ。
しかし、実際とところどうだろう。自分が警察に電話を一本入れるだけでこの少年は確実にこれから数ヵ月以内に国に処刑されるとなったときに果たして、警察に通報するだろうか。出来るだろうか。
そんなことを出来るわけがない。それが答えだ

それが日本全体の答えだった。
悪策が成立してから数ヵ月 犯罪は起きなかった。
警察や、検察が認知しなければ犯罪は立証されない。
互いに互いを許しあい、誰かが死刑になるのをみんな一丸となって避けてきた。

そんななか、その平和な体制が崩れることがいくつか続いて起きてしまった。

それは交通事故だ。
最悪の場合、人の命を一瞬で奪ってしまうそれは、被害者側の人間からすると、加害者の死刑望んでしまう、じゅうぶんな理由になってしまった。

そういうことが立て続けに起きた。
俺は、着々と警察に通報するハードルが下がっていくのを感じた。
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