極めて幸せになった日本

笹田 真

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量産され始めた死刑囚

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ある日、本を買いに本屋までボンヤリ歩いてたら、道路を挟んだ向こうのコンビニの前で不良が集まってるのを見たんだよ。

昼間っから制服でコンビニの前にいるなよ!
と思ったがそんなことをわざわざ言うほど正義感が強いわけでもないからそのまま通り過ぎようと思って歩いていたら、気づいたんだよ。不良のなかに一人真面目そう、大人しそうなやつがいることに。
明らかに不良って柄じゃなかった。学校も無理矢理さぼらされたのかよ。かわいそうに。。

案の定、不良がいきなりそいつの頭をひっぱたき、金がどうとか親の財布がどうとか喚き散らしていた。

一通り喚き散らしてから、道路の向こうから見ている俺に気づいた。制服姿で悪事を働いていたところ見られたのがばつが悪かったのかそそくさと真面目そうな少年を置いて歩いていった。

不良達が立ち去り、真面目そうな少年が地面に情けなく座り込んでいた。さすがに大丈夫なのか。声をかけない理由もないので、一度コンビニを通り越してから、横断歩道で向こう側の道路へと渡った。

コンビニをの前まで行くと少年がさっきと変わらぬぐったりとした正座のような姿勢で座り込んでいた。

震えていた。

声をかけようとした瞬間、少年がクスクス笑っている事に気づいた。
本当に大丈夫か心配になりさらに近づいて声をかけようとした瞬間。

少年が勢いよくこちらを振り返り、痛々しい顔に怖いくらいの笑顔でこういった。

「見てましたよね!見てましたよね!ついにあいつら公衆の面前で僕に暴力を振るったぞ!!!」

最初は何がそこまで嬉しいのかさっぱりわからなかったが、次の少年の動作ですべてを悟った。

少年はおもむろに鞄からスマートフォンを取り出すと素早い手つきで緊急通話を開いた。
1  1  0   
少年はそう打ったように見えた。
恐らくそう打ったのだろう。
俺は慌ててスマートフォンを取り上げて電話を切った。

少年が、血相を変えて
「なにすんだこの!!」
と怒鳴りながら掴みかかってきた。

俺は慌てて
「落ち着け!それをやってしまとあいつらが死刑になってしまうんだぞ!」
と言った。

「だから通報しようとしてんだろうが!
お前も窃盗罪で警察に通報するぞ!」
少年はすかさずそういった。

吐き気がした。
今、この十八にも満たないであろうこの少年が遠隔的に、しかし、はっきりと意思をもって身の回りの人間を死に追いやろうとしていることが。
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