極めて幸せになった日本

笹田 真

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堂々と脱獄する囚人達

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最近の看守どもの動きと、一部の囚人達の落ち着きようから、あの若造看守が俺に何を伝えようとしているかは薄々勘づいていた。

案の定。その夜の点呼で看守長から告げられた。

「ここにいる囚人全員を死刑にするなんて間違っている、
お前達には明日、我々の誘導のもと脱獄してもらう」
それ脱獄って言わねぇだろ。
俺はそんなことを思いながらボーッと話を聞いていた。
囚人の中には喜びのあまり泣き出すものまでいた。
それが普通の反応か。

翌朝  

俺たちはいつもの起床時間より大分早い時間に起こされた。
俺も寝ぼけ眼であまりはっきり覚えていないが、まだ辺りは薄暗かった気がする。

そのまま最低限の荷物だけ持って、看守どもに案内されるがまま正門から外に出た。

俺は驚いたよ。てっきり俺達の脱獄を見て見ぬふりしてくれるものだと思っていたが、
これでは看守も、共犯そのものじゃねーか。

それくらいの覚悟だったのか。
それに、どうやら看守は全員揃っているらしい。

これは用意された大型トラックの中で、早い段階から看守達とコンタクトをとっていた囚人から聞いたのだが、どうやら今回の脱獄案に反対した看守はいなかったらしい。
たいしたものだ。心からそう思った。

むしろ囚人の中にはついて来なかった者もいた。
現代社会に絶望したもの。
刑務所の中でもクスリをやり続けていたようなやつ。
そしてあの若造総理を崇拝していた一部の連中。
要するにどいつもこいつも自殺志願者ってことだ。

トラックは8台用意されていた。
大型トラックが3台と、小型トラックが5台だ。
どうやら外部にも協力者がいたらしい。

俺が乗った大型トラックまるでバスのように囚人の告げる行き先に向かってはその近辺の囚人を数人ずつ下ろしていった。

おいおいそんなやり方じゃすぐ警察につかまっちまうだろうが!
そう思ったが、どうやら世間の警察というものはもはや機能していないらしい。

皆、自分が捕まえた、或いは検挙した人間がこの先死刑になる事が耐えられなかったそうだ。

それを聞いて安心した。
俺は当たり前のように、息子が住む我が家に堂々と帰宅することにした。
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