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本編
生い立ち
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日本が変わりつつある現在、その発端となる出来事を起こした現総理大臣 佐々木昌信。
彼の生い立ちは恵まれたものだった。
昌信は幼い頃から英才的な教育を受けていた。彼が小学校を卒業する頃には、当時の政治や世論について、それに精通する大人達と対等に語り合えるほどに、彼は、高度な教育受け続けた。
また、彼にはその教育を受け入れるだけの才能と器量があった。
彼が幼少から英才教育を受けていたのは彼の祖父である、佐々木昌二郎が昌信の幼い頃の総理大臣であり、孫にも自分と同じ世界に入って欲しいと思ってのことだ。
佐々木昌二郎は偉大な政治家だった。正義感溢れる指揮統括で、ほかの政治家や国民から多大な信頼を得ていた。
もう一つ、彼の偉大たる由縁を上げるとすれば。
彼は政治家としての非凡なカリスマ性を持っていると同時に、誰からも好印象を受けるような親しみやすさを持ち合わせていた事だ。
そんな偉大な祖父 佐々木昌二郎と、同じく政治家として名を馳せつつある父 佐々木昌太の背中を見て昌信は育った。
昌信が幼い頃のある日の午後、佐々木家は賑やかな雰囲気に包まれていた。
家族が集まる茶の間には、和風な家屋には似つかない装飾が至るところに施されていた。
そして、この茶の間の中心に位置するところにある、重厚感を漂わせる大きな長方形の机、その更に中心に丸型のケーキが置いてある。
そのケーキのデコレーションの白いチョコレートプレートには、これまた黒いチョコレートで文字が書かれていた。
《まさのぶくん おたんじょうびおめでとう!》
昌信は大きな机の、現代風にいうと、お誕生日席なるところに座りそのケーキの蝋燭に火が灯るのを、待ちきれぬ思いで長座で伸ばした足を小さくばたつかせていた。
「昌信、もう少し落ち着きなさいな‥‥あなた今日で五歳になるんでしょう? もう少し大人しくしてなさい」
母はケーキを取り分ける皿を家族の座るそれぞれの机の前に置きながら、そんな昌信を呆れた声で説教を垂れながらも、表情はしかめるどころか綻び、笑顔に近いものだった。
そんな母親の表情を知ってか知らずか昌信は落ち着くどころか手までバタバタと床を叩き出した。
「昌信!いい加減にしないか!母さんに落ち着けと言われたろう」
父の怒声である。
「はい‥‥ごめんなさい父さん」
昌信は手足をばたつかせるのを止め大人しく、皿や飲み物が配り終わるのを待っていた。
「どれ、そろそろわしが蝋燭に火を付けてやろうかの」
昌二郎はそういって、マッチに手を伸ばしながら、歳相応にシワが入ったーしかし、決して年老いた力ない老人のそれとは違うダンディズムを感じさせる顔を、にやつかせながら、昌信の反応を伺っていた。
昌信はすっかり暗くなっていた表情を途端に明るいものに変え、一瞬また落ち着きなく手をばたつかせかけたが、ついさきほど父に叱られたことを思い出し、喜びの表現をその表情に留めた。
祖父と父の性格は対照的だった。
優しく温厚だった祖父
厳しく、時には手を出して我が子をしかることもあった父。
当時の昌信には知る由もなかったが、彼らの同じくする政治家という立場からも、二人の考え方は正反対に近いものだった。
祖父による犠牲なく国民全て幸せに導かんとする政治に比べ、父のやり方は、多少の犠牲を払ってでも正しい方向へ国を導く、というようなものだった。
考え方は違えど、立場上祖父の傘下にいた父。祖父の周囲には無い新しい考え方として参考にされ、それによって成功した事もあったが、父の出す案の殆どについて祖父と父は衝突していた。
彼の生い立ちは恵まれたものだった。
昌信は幼い頃から英才的な教育を受けていた。彼が小学校を卒業する頃には、当時の政治や世論について、それに精通する大人達と対等に語り合えるほどに、彼は、高度な教育受け続けた。
また、彼にはその教育を受け入れるだけの才能と器量があった。
彼が幼少から英才教育を受けていたのは彼の祖父である、佐々木昌二郎が昌信の幼い頃の総理大臣であり、孫にも自分と同じ世界に入って欲しいと思ってのことだ。
佐々木昌二郎は偉大な政治家だった。正義感溢れる指揮統括で、ほかの政治家や国民から多大な信頼を得ていた。
もう一つ、彼の偉大たる由縁を上げるとすれば。
彼は政治家としての非凡なカリスマ性を持っていると同時に、誰からも好印象を受けるような親しみやすさを持ち合わせていた事だ。
そんな偉大な祖父 佐々木昌二郎と、同じく政治家として名を馳せつつある父 佐々木昌太の背中を見て昌信は育った。
昌信が幼い頃のある日の午後、佐々木家は賑やかな雰囲気に包まれていた。
家族が集まる茶の間には、和風な家屋には似つかない装飾が至るところに施されていた。
そして、この茶の間の中心に位置するところにある、重厚感を漂わせる大きな長方形の机、その更に中心に丸型のケーキが置いてある。
そのケーキのデコレーションの白いチョコレートプレートには、これまた黒いチョコレートで文字が書かれていた。
《まさのぶくん おたんじょうびおめでとう!》
昌信は大きな机の、現代風にいうと、お誕生日席なるところに座りそのケーキの蝋燭に火が灯るのを、待ちきれぬ思いで長座で伸ばした足を小さくばたつかせていた。
「昌信、もう少し落ち着きなさいな‥‥あなた今日で五歳になるんでしょう? もう少し大人しくしてなさい」
母はケーキを取り分ける皿を家族の座るそれぞれの机の前に置きながら、そんな昌信を呆れた声で説教を垂れながらも、表情はしかめるどころか綻び、笑顔に近いものだった。
そんな母親の表情を知ってか知らずか昌信は落ち着くどころか手までバタバタと床を叩き出した。
「昌信!いい加減にしないか!母さんに落ち着けと言われたろう」
父の怒声である。
「はい‥‥ごめんなさい父さん」
昌信は手足をばたつかせるのを止め大人しく、皿や飲み物が配り終わるのを待っていた。
「どれ、そろそろわしが蝋燭に火を付けてやろうかの」
昌二郎はそういって、マッチに手を伸ばしながら、歳相応にシワが入ったーしかし、決して年老いた力ない老人のそれとは違うダンディズムを感じさせる顔を、にやつかせながら、昌信の反応を伺っていた。
昌信はすっかり暗くなっていた表情を途端に明るいものに変え、一瞬また落ち着きなく手をばたつかせかけたが、ついさきほど父に叱られたことを思い出し、喜びの表現をその表情に留めた。
祖父と父の性格は対照的だった。
優しく温厚だった祖父
厳しく、時には手を出して我が子をしかることもあった父。
当時の昌信には知る由もなかったが、彼らの同じくする政治家という立場からも、二人の考え方は正反対に近いものだった。
祖父による犠牲なく国民全て幸せに導かんとする政治に比べ、父のやり方は、多少の犠牲を払ってでも正しい方向へ国を導く、というようなものだった。
考え方は違えど、立場上祖父の傘下にいた父。祖父の周囲には無い新しい考え方として参考にされ、それによって成功した事もあったが、父の出す案の殆どについて祖父と父は衝突していた。
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