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3.岩屋の死闘と、居ない人達。
3#7 発現
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痛い?
まだ、痛くないけど……きっとすごく痛いよなぁ……。
腕、飛んで行ったわ。
困ったな……利き腕を失っても冒険者続けられるかな……。
その前に死ぬわ。
死にたく、ないなぁ……。
死んだら、また転生するでしょう。
また転生するのかなぁ……やだなぁ。
嫌なの?
転生しても、良い事なんて何もなかった……折角、今の人生を気に入り始めてたのにな……。
そう、気に入ってるの。
気に入ってる……だから、死にたくない……。
わたしなら、あなたの願いを叶えられる。
俺の、願い……。
だけど、思い出して。
思い出す……。
この手を取って、後悔しない“アナタ”はいなかった。
ああ……そう……そうだ……。
何度もこの手を取って、何度も失敗した。
この手を取る直前はいつも思うんだ。
『今度こそ』って……。
だから……今も、そうなんだ。
どうしようもなく、渇望する……。
「今度こそ……」
「うん? 死を前にして気でも触れたか」
気が付けば、前のめりに項垂れた上半身に、使い物にならなくなった両腕をダラリと下げて立っていた。
痛かった。
痛いって感覚がわからなくなるくらい痛かった。
視界がボンヤリしているのは、血を失いすぎたからだろう。でも、石の床しか映っていないから焦点があってるのかあってないのかもよくわからない。
でもこの気が遠のくような、暗くて寒い感じは、死の前触れだ。
アマルのシューが最期に嫌ってほど味わったから覚えてる。
「このまま放置していても貴様は独りで死ぬであろうな」
どこか遠い所からそんな声が聞こえてくる。
かと思えば、まるで耳元で怒鳴られたかのようにワンワンと頭の中で反響する。
正面で、何かが動く気配がした。
何かを持ち上げたような動きだ。
重くて、危険な何かを、ゆっくりと、だが、軽々と。
「その様をゆっくり見物するのもまた一興だが……ここまで我を愉しませた褒美の慈悲だ、一思いに楽にしてやろう」
圧倒的な死の気配が、頭上から迫ってくる。
今度はちゃんと中身のある、鋼の長剣が無造作に振るわれたのだろう。
このままじゃ、死ぬなぁ。
死にたくないなぁ。
だから、防がなきゃいけない。
防ぐには、利き腕がいる。
あのバカでかいロングソードを受ける武器もいる。
そうだ、まず必要なのはその二つだ。
腕と、剣が欲しい。
腕と、剣がここにある今が欲しい。
俺は、願う。
右肩が上がる。
先のない肘も上がる。
雪崩落ちてくる長剣を支えるように、背筋が伸びて腰が据わる。
無い腕で長剣を受け止めようと、姿勢だけは出来た。
ああ、あと、これで腕と武器があれば。
顔を上げると、キングの煮えたぎる双眸があった。
これまでの憤怒と、勝利の法悦に沸いた瞳が。
その瞳がカッと見開かる。
勢い込んだキングの巨体が急にその動きを止める。
衝撃が、右肩から腰を伝って下半身に抜ける。
「タッフゥッ!?」
驚愕の声に聞こえたそれは、まあ驚愕の声なんだろうけど共用語じゃなかった。
気息奄々、瀕死の中にあったはずの俺が背筋を正してしっかりと足を踏みしめ、渾身の据え物斬りを受け止めたのだから無理もない。
無いはずの――無くなったはずの小剣とそれを握った右腕で。
斬り飛ばされたはずの俺の腕は、小剣と共に消えていた。まるで、最初からそんな事実はなかったかのように血の跡すら消え失せている。
「何故だ!」
長剣が引かれ、力任せに叩きつけられる。
雑な攻撃だがしっかりと俺を芯で捉えた必殺の一撃。さっきと同じく真正面から受ければ、小剣ごと叩き切られる。
だから、願う。この攻撃は嫌だと。
再び、キングの顔に驚愕の色が走った。
間違いなく俺の頭を割り砕くはずだった一撃が、わずかな軸のブレを利用されて受け流された。
ノミで削った床に長剣の切っ先がめり込み、細かい破片を飛散させる。
その破片も当たったら痛そうだった。だから嫌だと願った。
すぐ足元で起こった破裂だが、その一粒とて俺の身体に触れるものはなかった。
「何故だっ! 何故だっ? 何故だっ!?」
技も工夫もない。腕力に任せて鋼の塊を叩きつけるだけの攻撃。それだけに軸を見切り、力を完全に逸らすのは難しい。
でも、俺には関係なかった。
願えばいいのだ。当たるな、と。
それだけで唸りを上げる長剣の方から俺を避け、僅かな力で保持した小剣の表面を撫でて流れる。また、石の床が弾けた。
当たらない運命を引き出す。
俺が害されない世界を引き寄せる。
「馬鹿、な、こんな……こんな馬鹿なことが……」
何十とがむしゃらに長剣を叩きつけていたキングの腕が下がる。一歩、二歩とうなされたように退がる。
俺は結局、一歩も動くことなくキングの攻撃をいなしきった。そうなるように願うだけだったから、呼吸も感情も落ち着いている。
「なんなのだ、貴様は……さっきまでの雌猿ではないのかっ……なんなのだ、その眼はぁっ!?」
「……眼?」
跳ぶ。次の瞬間にはキングの内懐にいた。
「なっ!? どうやって近付いたっ」
「どうもこうも、最初からこの距離だった。そんなことより――」
そういう世界に跳んだのだ。そうとしか返せない。
脂肪を重ねたような顔が俺の鼻先にある。醜い造作も、醜悪な臭気も気にならない。
その言葉だけが俺の興味を引いた。
「あたしの眼が、どうかしたの」
遥か昔、前世でも同じことを聞かれた。
その時は逆に飛び切りの美女だったけど。
「おのれ、化け物が!」
長剣を持たないキングの拳が突き出される。その時には既にその背後に跳んでいる。
同時に、なんだかこいつと会話するのが面倒になってきた。
戦々恐々と俺の姿を探すキングの、ガラ空きの背中に小剣を突き出す。
「ぐっ!?」
だが、刃先すら潰れた小剣はその肉を貫くに能わず、力一杯キングのたるんだ脇腹を突いただけに終わった。
振り返り様の薙ぎ払いを跳んで避け、今度はその正面に十歩ほどの距離を開けて差し向かいで佇む。
やはり、何もかも思い通りになるわけじゃない、か。
もし俺の願いがなんでも敵うのであれば、ずっと『あんたは死ね』と願っているのだ、キングはとっくに死んでいるはずだった。
それにどれだけ願っても、潰れた刃は元に戻らない。
この力が目覚めて以降の世界しか、選べないみたいだな。
キングの死を願っても、この場には俺とキングしかいない。キングが死ぬ可能性は俺が働かない限り生まれようがないのも道理か。
じゃあ、一働きしようかな。
「もう、もう容赦はせん! 瞬きする間に消し炭の肉塊に変えてくれるっ!」
恐怖にひきつったキングの絶叫がこだまする。
キングの内に燃えるようなエーテルが集まる。
目には映らないそれらを掻い潜るように一歩踏み出し、二歩目には手を伸ばせば触れられる位置に跳んだ。
ゆっくりと、引き攣ったキングの顔が俺を見下ろすように動く。
それを上目に見ながら、剣帯の背中に当たるところから一本のダガーを引き抜いた。
無骨でなんの変哲もない、キャリンのダガー。
「エゼェルフ」
小さな声で唱えると、ダガーに白い煌きが生まれた。
霜だ。ダガーそのものが極低温になって生み出した霜だった。
キングの炎の鎧も、火炎の剣も健在。この冷たい刃をキングの懐に突き込んでも、そんなささやかな冷気は灼熱が起こす巻き風で消し飛んでしまうだろう。
長剣の間合いを外されたとみるや、左手に剣の形をした炎を纏わりつかせたまま、キングはその拳で俺を殴り下ろしてきた。炎の剣が尾のようにゴウッと唸って落ちてくる。
「エゼェルフ」
もう一度唱えると、キャリンのダガーの刀身がうっすらと鈍い光を湛えた。
同時に、火の玉と化したキングの拳が眼前に迫る。
身体をわずかに捻るだけで紙一重に躱す。防護フィールドが耐えかねて、白金色の髪がチリチリと燃えるが、それも次の瞬間には元に戻っていた。何事もなかったかのように赤光に明々と輝く。
その赤光に身体を縁取らせて、もう一度おなじ論理を口にする。
「エゼェルフ」
短剣が伸びた。
刀身そのものが伸びたのではない。刀身に生み出した氷の刃が成長してそう見えた。
その変化に気付かなかったキングの顔にはさっきまでの俺の表情を引き写したかのような焦りが浮いていた。端正な俺と比べてずっと醜怪で陰惨な焦りが。
それもそうだろう。俺が門晶術を構築しているのは、エーテルの流れで手に取るようにわかっているはずだ。それも二つ合わせれば常人の倍に匹敵する熱と水の門晶を全開で使っているのだ、エーテルの流れる量も半端ない。
なまじ、隠蔽性能が無いだけにそれをはっきりと見せつけられているのだから脅威と焦りは当然だった。
「エゼェルフ」
刀身が成長する。パキンと硬い音を立てて、小剣と同じくらいの刃渡りになった。
キングが珍しく自分から身を引いて距離を取る。視界を広くとったことで気付いたのだろう、分厚いまぶたの下で木の実みたいな黒い眼が見開かれて、元に戻ると怪しい光を湛えて俺を見た。
「何を企んでいるかと思えば、氷の剣だと? 水の鎧と言い文字通りの猿真似だな」
俺の門晶術の正体を察して余裕を取り戻したのだろう、もう聞き飽きた嘲弄の声が臭い息と共に滑り出してくる。
「小細工諸共に吹き飛べっ!」
キングの構築していた門晶術が爆ぜた。
そう思わせるほどに、限界まで圧縮したエーテルの解放だった。
エーテルの爆発がそのまま具象化したような衝撃が、岩盤層に刳り貫かれた岩屋全体を揺るがし、軋ませる。
言葉通り、一瞬の間に炎の熱量を発散する爆発の門晶術だった。
オークの門晶術は自爆を恐れなくていい分、ほとんどが自分中心の広範囲攻撃術ばかりだ。威力の高さ故に防ぐのに苦労するが、防ぐ手立てさえあれば単純な攻撃術はそれほど脅威にならない。
「な、なんだと……」
岩盤に亀裂を入れるほどの衝撃を一跳びの間合いで受けても、平然と立つ俺の姿にオークキングが恐れ慄く。胸の空く光景だった。
爆風も熱も、幾重にも重ねた氷の壁があれば恐れる必要もない。
術を解除すると、俺を守り切った氷の壁が、熱を冷ます氷の砕片となってあたりに舞い散った。
その煌きを見透かして、狼狽えるオークキングを睨み据える。
「もっと恐れればいい。もっと絶望すればいい。キャリン達が味わった恐怖を僅かでも味わって、地獄に落ちろ」
「小癪なっ!」
キングが長剣を振りかぶって踏み込んでくる。
俺は相手の到達を待たず、その背後に跳んでいた。瞬歩ではなく、その位置にいる自分を選んで跳んだ。ほとんど瞬間移動だ。
だけど瞬間移動と違って“いきなりその地点に現れた”のではなく、“移動”という経過を省いて“到着した”結果だけをこの俺に適用したのだ。
だから、瞬歩みたいに移動の間の周囲の変化がすっぽ抜けていたりしない。眼前の光景は全て成るようにして成った蓋然。キングからすればすべての迎撃を掻い潜られたこの結果だ。為す術など無い。
状況を確認する暇も必要とせず、手にした長刀を斬り上げる。
俺の右手にあったダガーは、すでに短剣とは呼べない代物に変貌していた。
それは、薄く細い刀身を緩やかに湾曲させた、氷の太刀とでも呼ぶべき一刀だった。
冷たすぎて霜すら凍り付いた燐光を引き、氷の刃がキングの左の脇から肩へと走る。
キングはその瞬間まで、俺がどこへ移動したのか気付いていないようだった。
たっぷり一拍おいて、思い出したかのようにキングの左肩がポトリとその場に落ち、肩から滝のような血飛沫が流れ落ちた。
それを唖然と見下ろすキングの横顔が、膨れ、歪み、朱に染まる。
「ォゴガァァァッ!?」
訳が分からないといった様子で、綺麗に切り落とされた肩口を残った右手で抑え、そこでようやく背後に立つ俺に気付いたようだった。
睨みつけた眼光が激昂と怯懦(きょうだ)を入り混ぜて俺を射抜く直前に、跳ぶ。
今度は正面に現れて、その右腕を斬り飛ばす。
「グギィィッ!」
聞くに堪えない絶叫が岩屋にこだまする。
「もうこれで、あんたは武器を取る事も出来ないでしょ」
「み、見くびるな、雌猿がぁぁぁっ!」
咆哮が詠唱となって、一瞬理に構築された門晶術が具象化する。
それは炎の腕と称するような火炎の触手だった。それが、オークキングの失われた腕の代わりに、肩口から生えて卑しく揺らめいている。
「この獄炎の腕(かいな)で貴様を――」
全てを聞く必要なんてなかった。
俺はその口上を無視してキングの右横手に跳び、その短い足に刃を走らせる。苦もなくキングの太腿が両断され、支えを失った巨体がみっともなく後ろに倒れた。
石の床と金属の鎧が、硬い音を悲鳴がわりに響かせる。
「何っ故だぁ……貴様はぁ……なんなのだっ……」
さっきまでの威勢も消え失せ、喘息の合間に虚ろな言葉が牙の生えた口から転がり出る。
この期に及んで、キングは俺に斬り飛ばされた腕と足の傷口を自分の炎で焼いて止血していた。まだ、生き残る希望を失っていない。
その執着が、この上なく見苦しい。
「貴様がどんな化け物であれ……たった一人で何が出来る……我らオークは一騎で百人の猿を殺せる……貴様は、死なぬだろう……だが、我が軍勢は貴様以外の猿を――」
「あんたを殺せば終わりでしょ」
そこまで聞いて、聞き飽きた。
無造作に振るった長刀が床の石ごとキングの太く短い首を通り抜け、汚い声が途切れる。
遅れて、噴出した血に押し出されるようにキングの首が転がっていった。
何の話をしているのか見当もつかなかったが、死の間際の戯言だ。こいつを殺せば全部に意味がなくなると思ったら腕が勝手に動いていた。
あっけない終わりだった。
キングの身体を彩っていた炎も、キャリンのダガーに生えていた氷も、幻のように消失する。論理の軛から解き放たれて、エーテルが四散したのだ。
「終わったよ、キャリン……あたし、ちゃんと仇を取ったよ……」
キンッと澄んだ音が、圧倒的な静寂の中に響いた。
キャリンのダガーが……刀身から柄まで一つの金属から鋳造されたダガーの刀身が、ありえないことに柄元から折れて落ちたのだ。
それはキャリンの別れの言葉のようだった。
「ぅ……ふぇぇぇぇっ……あああぁぁっ――!」
そう思った途端、堪え切れなくなった嗚咽が喉と瞼を割って溢れ出した。
まだ、痛くないけど……きっとすごく痛いよなぁ……。
腕、飛んで行ったわ。
困ったな……利き腕を失っても冒険者続けられるかな……。
その前に死ぬわ。
死にたく、ないなぁ……。
死んだら、また転生するでしょう。
また転生するのかなぁ……やだなぁ。
嫌なの?
転生しても、良い事なんて何もなかった……折角、今の人生を気に入り始めてたのにな……。
そう、気に入ってるの。
気に入ってる……だから、死にたくない……。
わたしなら、あなたの願いを叶えられる。
俺の、願い……。
だけど、思い出して。
思い出す……。
この手を取って、後悔しない“アナタ”はいなかった。
ああ……そう……そうだ……。
何度もこの手を取って、何度も失敗した。
この手を取る直前はいつも思うんだ。
『今度こそ』って……。
だから……今も、そうなんだ。
どうしようもなく、渇望する……。
「今度こそ……」
「うん? 死を前にして気でも触れたか」
気が付けば、前のめりに項垂れた上半身に、使い物にならなくなった両腕をダラリと下げて立っていた。
痛かった。
痛いって感覚がわからなくなるくらい痛かった。
視界がボンヤリしているのは、血を失いすぎたからだろう。でも、石の床しか映っていないから焦点があってるのかあってないのかもよくわからない。
でもこの気が遠のくような、暗くて寒い感じは、死の前触れだ。
アマルのシューが最期に嫌ってほど味わったから覚えてる。
「このまま放置していても貴様は独りで死ぬであろうな」
どこか遠い所からそんな声が聞こえてくる。
かと思えば、まるで耳元で怒鳴られたかのようにワンワンと頭の中で反響する。
正面で、何かが動く気配がした。
何かを持ち上げたような動きだ。
重くて、危険な何かを、ゆっくりと、だが、軽々と。
「その様をゆっくり見物するのもまた一興だが……ここまで我を愉しませた褒美の慈悲だ、一思いに楽にしてやろう」
圧倒的な死の気配が、頭上から迫ってくる。
今度はちゃんと中身のある、鋼の長剣が無造作に振るわれたのだろう。
このままじゃ、死ぬなぁ。
死にたくないなぁ。
だから、防がなきゃいけない。
防ぐには、利き腕がいる。
あのバカでかいロングソードを受ける武器もいる。
そうだ、まず必要なのはその二つだ。
腕と、剣が欲しい。
腕と、剣がここにある今が欲しい。
俺は、願う。
右肩が上がる。
先のない肘も上がる。
雪崩落ちてくる長剣を支えるように、背筋が伸びて腰が据わる。
無い腕で長剣を受け止めようと、姿勢だけは出来た。
ああ、あと、これで腕と武器があれば。
顔を上げると、キングの煮えたぎる双眸があった。
これまでの憤怒と、勝利の法悦に沸いた瞳が。
その瞳がカッと見開かる。
勢い込んだキングの巨体が急にその動きを止める。
衝撃が、右肩から腰を伝って下半身に抜ける。
「タッフゥッ!?」
驚愕の声に聞こえたそれは、まあ驚愕の声なんだろうけど共用語じゃなかった。
気息奄々、瀕死の中にあったはずの俺が背筋を正してしっかりと足を踏みしめ、渾身の据え物斬りを受け止めたのだから無理もない。
無いはずの――無くなったはずの小剣とそれを握った右腕で。
斬り飛ばされたはずの俺の腕は、小剣と共に消えていた。まるで、最初からそんな事実はなかったかのように血の跡すら消え失せている。
「何故だ!」
長剣が引かれ、力任せに叩きつけられる。
雑な攻撃だがしっかりと俺を芯で捉えた必殺の一撃。さっきと同じく真正面から受ければ、小剣ごと叩き切られる。
だから、願う。この攻撃は嫌だと。
再び、キングの顔に驚愕の色が走った。
間違いなく俺の頭を割り砕くはずだった一撃が、わずかな軸のブレを利用されて受け流された。
ノミで削った床に長剣の切っ先がめり込み、細かい破片を飛散させる。
その破片も当たったら痛そうだった。だから嫌だと願った。
すぐ足元で起こった破裂だが、その一粒とて俺の身体に触れるものはなかった。
「何故だっ! 何故だっ? 何故だっ!?」
技も工夫もない。腕力に任せて鋼の塊を叩きつけるだけの攻撃。それだけに軸を見切り、力を完全に逸らすのは難しい。
でも、俺には関係なかった。
願えばいいのだ。当たるな、と。
それだけで唸りを上げる長剣の方から俺を避け、僅かな力で保持した小剣の表面を撫でて流れる。また、石の床が弾けた。
当たらない運命を引き出す。
俺が害されない世界を引き寄せる。
「馬鹿、な、こんな……こんな馬鹿なことが……」
何十とがむしゃらに長剣を叩きつけていたキングの腕が下がる。一歩、二歩とうなされたように退がる。
俺は結局、一歩も動くことなくキングの攻撃をいなしきった。そうなるように願うだけだったから、呼吸も感情も落ち着いている。
「なんなのだ、貴様は……さっきまでの雌猿ではないのかっ……なんなのだ、その眼はぁっ!?」
「……眼?」
跳ぶ。次の瞬間にはキングの内懐にいた。
「なっ!? どうやって近付いたっ」
「どうもこうも、最初からこの距離だった。そんなことより――」
そういう世界に跳んだのだ。そうとしか返せない。
脂肪を重ねたような顔が俺の鼻先にある。醜い造作も、醜悪な臭気も気にならない。
その言葉だけが俺の興味を引いた。
「あたしの眼が、どうかしたの」
遥か昔、前世でも同じことを聞かれた。
その時は逆に飛び切りの美女だったけど。
「おのれ、化け物が!」
長剣を持たないキングの拳が突き出される。その時には既にその背後に跳んでいる。
同時に、なんだかこいつと会話するのが面倒になってきた。
戦々恐々と俺の姿を探すキングの、ガラ空きの背中に小剣を突き出す。
「ぐっ!?」
だが、刃先すら潰れた小剣はその肉を貫くに能わず、力一杯キングのたるんだ脇腹を突いただけに終わった。
振り返り様の薙ぎ払いを跳んで避け、今度はその正面に十歩ほどの距離を開けて差し向かいで佇む。
やはり、何もかも思い通りになるわけじゃない、か。
もし俺の願いがなんでも敵うのであれば、ずっと『あんたは死ね』と願っているのだ、キングはとっくに死んでいるはずだった。
それにどれだけ願っても、潰れた刃は元に戻らない。
この力が目覚めて以降の世界しか、選べないみたいだな。
キングの死を願っても、この場には俺とキングしかいない。キングが死ぬ可能性は俺が働かない限り生まれようがないのも道理か。
じゃあ、一働きしようかな。
「もう、もう容赦はせん! 瞬きする間に消し炭の肉塊に変えてくれるっ!」
恐怖にひきつったキングの絶叫がこだまする。
キングの内に燃えるようなエーテルが集まる。
目には映らないそれらを掻い潜るように一歩踏み出し、二歩目には手を伸ばせば触れられる位置に跳んだ。
ゆっくりと、引き攣ったキングの顔が俺を見下ろすように動く。
それを上目に見ながら、剣帯の背中に当たるところから一本のダガーを引き抜いた。
無骨でなんの変哲もない、キャリンのダガー。
「エゼェルフ」
小さな声で唱えると、ダガーに白い煌きが生まれた。
霜だ。ダガーそのものが極低温になって生み出した霜だった。
キングの炎の鎧も、火炎の剣も健在。この冷たい刃をキングの懐に突き込んでも、そんなささやかな冷気は灼熱が起こす巻き風で消し飛んでしまうだろう。
長剣の間合いを外されたとみるや、左手に剣の形をした炎を纏わりつかせたまま、キングはその拳で俺を殴り下ろしてきた。炎の剣が尾のようにゴウッと唸って落ちてくる。
「エゼェルフ」
もう一度唱えると、キャリンのダガーの刀身がうっすらと鈍い光を湛えた。
同時に、火の玉と化したキングの拳が眼前に迫る。
身体をわずかに捻るだけで紙一重に躱す。防護フィールドが耐えかねて、白金色の髪がチリチリと燃えるが、それも次の瞬間には元に戻っていた。何事もなかったかのように赤光に明々と輝く。
その赤光に身体を縁取らせて、もう一度おなじ論理を口にする。
「エゼェルフ」
短剣が伸びた。
刀身そのものが伸びたのではない。刀身に生み出した氷の刃が成長してそう見えた。
その変化に気付かなかったキングの顔にはさっきまでの俺の表情を引き写したかのような焦りが浮いていた。端正な俺と比べてずっと醜怪で陰惨な焦りが。
それもそうだろう。俺が門晶術を構築しているのは、エーテルの流れで手に取るようにわかっているはずだ。それも二つ合わせれば常人の倍に匹敵する熱と水の門晶を全開で使っているのだ、エーテルの流れる量も半端ない。
なまじ、隠蔽性能が無いだけにそれをはっきりと見せつけられているのだから脅威と焦りは当然だった。
「エゼェルフ」
刀身が成長する。パキンと硬い音を立てて、小剣と同じくらいの刃渡りになった。
キングが珍しく自分から身を引いて距離を取る。視界を広くとったことで気付いたのだろう、分厚いまぶたの下で木の実みたいな黒い眼が見開かれて、元に戻ると怪しい光を湛えて俺を見た。
「何を企んでいるかと思えば、氷の剣だと? 水の鎧と言い文字通りの猿真似だな」
俺の門晶術の正体を察して余裕を取り戻したのだろう、もう聞き飽きた嘲弄の声が臭い息と共に滑り出してくる。
「小細工諸共に吹き飛べっ!」
キングの構築していた門晶術が爆ぜた。
そう思わせるほどに、限界まで圧縮したエーテルの解放だった。
エーテルの爆発がそのまま具象化したような衝撃が、岩盤層に刳り貫かれた岩屋全体を揺るがし、軋ませる。
言葉通り、一瞬の間に炎の熱量を発散する爆発の門晶術だった。
オークの門晶術は自爆を恐れなくていい分、ほとんどが自分中心の広範囲攻撃術ばかりだ。威力の高さ故に防ぐのに苦労するが、防ぐ手立てさえあれば単純な攻撃術はそれほど脅威にならない。
「な、なんだと……」
岩盤に亀裂を入れるほどの衝撃を一跳びの間合いで受けても、平然と立つ俺の姿にオークキングが恐れ慄く。胸の空く光景だった。
爆風も熱も、幾重にも重ねた氷の壁があれば恐れる必要もない。
術を解除すると、俺を守り切った氷の壁が、熱を冷ます氷の砕片となってあたりに舞い散った。
その煌きを見透かして、狼狽えるオークキングを睨み据える。
「もっと恐れればいい。もっと絶望すればいい。キャリン達が味わった恐怖を僅かでも味わって、地獄に落ちろ」
「小癪なっ!」
キングが長剣を振りかぶって踏み込んでくる。
俺は相手の到達を待たず、その背後に跳んでいた。瞬歩ではなく、その位置にいる自分を選んで跳んだ。ほとんど瞬間移動だ。
だけど瞬間移動と違って“いきなりその地点に現れた”のではなく、“移動”という経過を省いて“到着した”結果だけをこの俺に適用したのだ。
だから、瞬歩みたいに移動の間の周囲の変化がすっぽ抜けていたりしない。眼前の光景は全て成るようにして成った蓋然。キングからすればすべての迎撃を掻い潜られたこの結果だ。為す術など無い。
状況を確認する暇も必要とせず、手にした長刀を斬り上げる。
俺の右手にあったダガーは、すでに短剣とは呼べない代物に変貌していた。
それは、薄く細い刀身を緩やかに湾曲させた、氷の太刀とでも呼ぶべき一刀だった。
冷たすぎて霜すら凍り付いた燐光を引き、氷の刃がキングの左の脇から肩へと走る。
キングはその瞬間まで、俺がどこへ移動したのか気付いていないようだった。
たっぷり一拍おいて、思い出したかのようにキングの左肩がポトリとその場に落ち、肩から滝のような血飛沫が流れ落ちた。
それを唖然と見下ろすキングの横顔が、膨れ、歪み、朱に染まる。
「ォゴガァァァッ!?」
訳が分からないといった様子で、綺麗に切り落とされた肩口を残った右手で抑え、そこでようやく背後に立つ俺に気付いたようだった。
睨みつけた眼光が激昂と怯懦(きょうだ)を入り混ぜて俺を射抜く直前に、跳ぶ。
今度は正面に現れて、その右腕を斬り飛ばす。
「グギィィッ!」
聞くに堪えない絶叫が岩屋にこだまする。
「もうこれで、あんたは武器を取る事も出来ないでしょ」
「み、見くびるな、雌猿がぁぁぁっ!」
咆哮が詠唱となって、一瞬理に構築された門晶術が具象化する。
それは炎の腕と称するような火炎の触手だった。それが、オークキングの失われた腕の代わりに、肩口から生えて卑しく揺らめいている。
「この獄炎の腕(かいな)で貴様を――」
全てを聞く必要なんてなかった。
俺はその口上を無視してキングの右横手に跳び、その短い足に刃を走らせる。苦もなくキングの太腿が両断され、支えを失った巨体がみっともなく後ろに倒れた。
石の床と金属の鎧が、硬い音を悲鳴がわりに響かせる。
「何っ故だぁ……貴様はぁ……なんなのだっ……」
さっきまでの威勢も消え失せ、喘息の合間に虚ろな言葉が牙の生えた口から転がり出る。
この期に及んで、キングは俺に斬り飛ばされた腕と足の傷口を自分の炎で焼いて止血していた。まだ、生き残る希望を失っていない。
その執着が、この上なく見苦しい。
「貴様がどんな化け物であれ……たった一人で何が出来る……我らオークは一騎で百人の猿を殺せる……貴様は、死なぬだろう……だが、我が軍勢は貴様以外の猿を――」
「あんたを殺せば終わりでしょ」
そこまで聞いて、聞き飽きた。
無造作に振るった長刀が床の石ごとキングの太く短い首を通り抜け、汚い声が途切れる。
遅れて、噴出した血に押し出されるようにキングの首が転がっていった。
何の話をしているのか見当もつかなかったが、死の間際の戯言だ。こいつを殺せば全部に意味がなくなると思ったら腕が勝手に動いていた。
あっけない終わりだった。
キングの身体を彩っていた炎も、キャリンのダガーに生えていた氷も、幻のように消失する。論理の軛から解き放たれて、エーテルが四散したのだ。
「終わったよ、キャリン……あたし、ちゃんと仇を取ったよ……」
キンッと澄んだ音が、圧倒的な静寂の中に響いた。
キャリンのダガーが……刀身から柄まで一つの金属から鋳造されたダガーの刀身が、ありえないことに柄元から折れて落ちたのだ。
それはキャリンの別れの言葉のようだった。
「ぅ……ふぇぇぇぇっ……あああぁぁっ――!」
そう思った途端、堪え切れなくなった嗚咽が喉と瞼を割って溢れ出した。
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