真田幸子を攻めとりたい。〜僕たちの恋愛攻城戦〜

末渡士旻

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第三話 仮入部という名の昼寝番

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 放課後、僕は真田に連れられて江戸川の河川敷までやってきていた。

 無論、僕だって抵抗を試みたが学校一の問題児兼、美少女と謳われる彼女の誘いを断れば、男子カーストの中で僕は二度と人として生存することが不可能になるだろう。

 だから仕方なく真田の部活動についてきたのだが、河川敷に到着してから30分、部長は一枚も写真を撮っていない。

 かといって極上の一枚を取るためにカメラをセッティングしているとか言うわけでもない。真田はスマホで時間を潰す僕の横、青々とした芝のある土手にゴロンと寝転んで昼寝をしているのである。

 いわば僕は真田の昼寝の見張り番をしているようなもので、つまりは僕は都合よく使われてしまったと言うことだ。

 だからといって、気持ち良さそうに昼寝をかます美少女をこのまま一人放って行くわけにもいかない。

 松西高校に通う生徒だったら、この女の悪行の数々を知っているから関わろうともしないだろうが、何も知らない男が真田を襲うなんて事が絶対にないとは言い切れない。

 ぼーっとしていたらなんとなく真田の寝顔を見てしまった。やはりこうして静かに寝ていればこの上ない美少女であることに変わりはない。「静かに」していれば。

 そんなことを思いながらしばらく真田の寝顔を眺めていると、少し強い風が吹いて真田の眠りを覚ました。

 まだ半目の状態の真田と目があって僕はとっさにスマホをポケットに忍ばせた。

「い、いまなんじぃ?」

 寝ぼけた声で聞いてくる真田。僕がここで昼寝番をしていることについては何も触れていない。

「もうすぐ17時。真田が寝てから30分くらいしか経ってないよ」

 そっかそっかと言いながら寝返りをうつ真田。どうやらまだまだ昼寝を敢行するつもりらしい。

「というか、よくこんなところで昼寝ができるな」

「えぇ、とっても気持ちがいいんだよぉ?おひさまの下でお昼寝するのは」

「僕が言ってんのはそう言うんじゃなくって…」

「分かってるよ。危ないってことを言いたいんでしょ?」

「そうだよ」

 真田はまだ目を開かない。顔は僕とは反対側を向いているから正確には分からないけど。

「でも、武田くんがいるじゃない。」

 そう言うと真田は僕側に寝返りを打って笑顔を見せた。

「お昼寝の見張り役ありがとうね」

 えへへと笑う彼女はまさに彩やかな花そのもののようで、僕は何だか照れくさい気持ちを覚えた。

「あ、あとさ」

 真田は何かを思い出した様に起き上がると、僕の耳元でささやいた。

「写真代は正式入部で許してあげる。」

「な、何を言ってんだよ!」

 僕は慌てて立ち上がり、そのまま勢いでその場から歩き始めた。

「武田くん!」

 昨日も聞いた声で引き止められた僕は、無意識のうちに振り返っていた。

「これからよろしくね!武田くん!」

 悔しいが、写真部に入部する他手立てはなくなってしまった。


* * *

 翌朝、投稿中に遠野とゆかいな仲間たちに遭遇して今朝と同じように入部の誘いを受けたのだが、写真部に入部することになったと言うと、4人ともなにかを察したように静かになって、それ以降サッカー部への勧誘はめっきり減ることになった。
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